「自社の業態変革への取り組みと課題」
平成20年度第2回全道委員長会議グループディスカッション
 平成20年度第2回全道委員長会議が、3月6日午後1時から札幌市中央区の札幌パークホテルで全道から委員40人が出席して開催された。
 第1部の全体会議では、「私が実践した業態変革・ワンストップサービス」をテーマにパネルディスカッションが行われた。(本誌635号既報)
 第2部として、パネルディスカッションを受けて「自社の業態変革への取り組みと課題」をテーマにグループディスカッションが行われた。

 グループディスカッションは、全道各地から参加の委員の方々ほかに来賓として参加いただいた全印工連業態変革推進企画室委員、全青協正・副議長の方々が加わり、A・B・C・Dの4つのグループに分かれて「自社の業態変革の取り組みと課題」をテーマ1時間20分にわたり討議が行われ、討議内容について各グループから発表が行われた。
Aグループ
発表者 杉川 毅氏(稚内支部)



 7名で話し合いをした。不況の中、大変盛り上がり、ワンストップサービスについて話し合った。地方のワンストップサービスは、地方スタイルがあるのではないかということで、印刷物だけでなく印鑑を頼まれたり、車まで売っても良いのではないかなど、いろいろな話が出て来た。地方の難しさとしては名刺から製本まで一貫して行っているが、さらにそれに何をプラスすれば良いのかということは非常に難しい。その中で、会社の1階を開放して地域のコミュニティーを集めて情報の入口をハードとして提供しながら広げて行くという話になった。その後、地方の疲弊の話になり、官公庁が厳しい、仕事がない、人口が減って来た、企業力・市場力が下がって厳しいというような話をしていた中で、地方の印刷会社のスタイルとしては身近な地域の印刷会社になるべきである。お客さんの困っていることを聞いてそれを解決してあげることが仕事に繋がって行く。それが業態変革の1つのヒントではないかという話で明るくなった。また、他の関連するような業界との情報やノウハウの交換も必要ではないかということから、もっとお客様の方に近づいて行くことが大事である。業界全体としては業界自体が消滅しそうな危機感を迎えているので、印刷業として頑張って活性化をして行くことが必要ではないか。

Bグループ
発表者 伊貝正志氏(釧根支部)



 6名で討論した。パネラーの高原社長と臼田社長が居たので2人の話が中心になった。結論めいたことはなかったが、北海道は道東縦貫高速道路が今建設中で2年程経つと開通する。そうなった時に地域間競争が激化するのではないか。各地方の印刷会社は今から自己防衛というか他地区からの進入を防ぐようなことも必要ではないか。同業の方が攻めて来るのでここでこういう話をすれば、そのようなことをしないで仁義を守ってもらえるのではないかと思って発表させてもらっている。印刷業は速い、安い、綺麗を我々のポリシーとして業界全体で取り組んで来ているが、これは当たり前の話で、これだけでは生き残って行けないということを認識しなければならない。言われると尤もであるが、そこから抜け出すのはなかなか難しいことである。業態変革をして行く考えの中で、簡単なもの、優しいものに飛び付くのではなく、難しそうな儲からなそうというようなものが実は儲けを生んで行く。これは資本力が必要になってくると思う。我慢していく時期があれば、その先に綺麗な花が咲くということだと思う。ワンストップサービスという業態変革の中に、看板からすべて請け負っている事例が何点かあるが、フルサービスプロバイダーとしてすべてをプロデュースする。アメリカでは我々の業界がそういう動きをしているようである。印刷業というのは、そういう業態にオーバーラップしているところが多いので、考え方次第では足を踏み込むのも容易だと思うが、なかなかそれが出来ないのが現状だと思っている。まとめとしては顧客の目線に立った感動、サービス、価値を充足して提供する業者に育つことである。我々が業態変革を行う意味でも感動、サービス、価値の3つの柱を設けて考えて行くことが成功に繋がる。その過程の中でストーリー性を持った顧客アピール力が必要ではないか。

Cグループ
発表者 花井秀勝氏(札幌支部・全印工連業態変革推進企画室)



 各社とも、業態変革はガイドブックをみると、何処かは今自社で行っているというとが確認できた。1つは得意先の変化による業態変革ではないか。業態変革という名の下ではないがよく読むと何処かで業態変革をしている。地方支部で衰退して倒産、廃業が相次いでいる。そこで働いていた営業の方が独立したり、ブローカーをして違うかたちで動いている。そのためにそれまでの印刷物が何処に行っているのか分からない。キーワードとしては、印刷物の1つの事例であるが、リーフレット、パンフレットの印刷だけをしていたら、お客さんは封筒を自分のところのプリンターで印刷をして印字していた。自社で封入封緘して投函できると言ったら翌年からその仕事が来た。そんなことを印刷会社がやってくれるのかという得意先の話があった。自治体のペーパーレス化ということで、十勝のある町村では例年800〜900万円位の印刷物があったが、この4月以降ペーパーレス化で印刷費を100万円に減らす話が出ている。デジタル化とペーパーレス化は地方においても顕著に現れて来ている。札幌、旭川という北海道の拠点都市以外の地方都市においては、各社が印刷のフル装備を持っている。名刺からオフ輪まで持っているような形なので、なかなかコラボレーション、共創ネットワークがしづらい。ここが一番大きな問題である。設備を持っていてあまり稼動していないが自社の中で作って行く、そのために稼働率が悪くなって行く傾向がある。経営者の思考回路がもう一歩先に進まないと出来ないのではないか。ワンストップサービスにおいてはいろいろな形の受注をしている。タクシーの中のカットシートを印刷して貼るところまで請け負って行っている会社もある。これからどういった仕事が北海道で必要かということで、どういう営業展開をして行ったら良いかと言うと、北海道は観光が多い。観光で5カ国や8カ国の多言語印刷が出来る会社は今限られていて数社に独占されている。そういうものを組合員全体で出来る仕組みが必要ではないか。紙の出荷額で、唯一北海道で伸びているのはパッケージ系である。特に札幌圏、地方の水産が増えている。この印刷が我々組合員のところに出て来なくて、違うところや大手に流れている。しかし大手ではロット的には合わないのでそういった仕事をどうやって獲得して行くか。我々の出来るものと少し隔離しているので、もう少しマーケットを見て行く必要があるのではないか。最終的にはワンストップサービスは、自社の営業マンが得意先に如何に可愛がられるかである。何でも頼まれる営業マンになってほしい。

Dグループ
発表者 岸 昌洋氏(札幌支部)



 東京から六三印刷(株)の島村会長に参加してもらい盛り上がった。自社の強みということで、ニーズに応えることが利益になるということを強みにしている。クライアントとの人間関係を重視している。少ロット等のニッチを強みにしている。自社の弱みとは、官依存である、専門性を持っていない、業態変革とは何かを今模索していること自体が弱みである。業態変革で計画していることや実践していることでは、バリアブルがある。宛名の印字などを行うと付帯してDMの印刷物や封筒の印刷物が付いて来る。パネルディスカッションの4人の話を聞いてユーザーの立場に立つということが業態変革ではないか。業態変革は何かをまとめると、培ったスキル(文字の処理、画像の処理、色の処理等)を活かして業態の枠を超えることである。設備共有の話になり、設備共有は地方では無理である。なぜかというと外注に出すと外注に出した先がクライアントに行ってしまう。設備のあるところに集約化されてしまうと空洞化を招いてしまう。雇用が無くなってしまう。寡占化してしまう。製紙メーカーが寡占化されているが寡占化された業界はろくなことにならない。設備の共有は仁義上無理である。

 各グループの発表に対して、岡部理事長、山岡全印工連副会長から感想所見が述べられた。

理事長集約   北印工組理事長 岡部康彦氏
・先ほど旭川支部の人から聞いたが、旭川市では定額給付金に関する印刷物を旭川支部にお願いしたいという話があったとのことである。これは今まで一生懸命、旭川支部として旭川市役所と交渉をしていた結果である。まだ決まったわけではないが9分どおり決まったということである。
・1月9日に札幌で業態変革実践プランについて私が説明した。2月には旭川支部で開催してほしいという要請があり夕方6時から8時まで50人位の経営者・営業の方々が参加して行った。
・各テーブルからいろいろな意見があった。地方スタイルがあるのではないかという話であった。結構である。それぞれの企業で自分にあったやり方、これが得意だ、これなら何とか出来るというものを積極的に進めて行っていたければそれも1つの業態変革である。優先的に自分の強みを出すのか、それとも弱みを何とかカバーして行くのかは、それぞれの企業の考え方である。
・他の会社に攻められるという話があったが、これはそんなことは決してない。コラボレーションで何処かに出したらそこが来て、注文を取って行くのではないか。そこまで商道徳の無い企業は印刷組合員には居ないと思いたいし、是非そういうことだけはしないでやって行かないと共存共栄の世の中、大変なことになる。それをやっていたら印刷物が減って行く中で、叩き合いをするようなことになって来るのではないか。北印工組の理事長として今後地方に行った時はそういう話をして行かないとならないと痛感している。
・DMの仕事で、宛名を印字して、郵便局まで持って行ってあげる。それも1つのワンストップサービスの大事な要素ではないかと思う。東京では文京区の利根川印刷というところが町おこしで湯島本郷百景というポストカードを作って売ったところ評判が良かった。利根川印刷はここにあったのかと自分の会社の宣伝になり、町おこしも成功したと聞いた。自社を大いにアピールする。お客様を取られない。自分の大事なお客様を何処かの印刷業者に取られないようにする。そのためにもお客様を離さないような人間関係を作って行かないと駄目である。そうしておけばこんなものが出来ないかと言われた時に任してくださいと言って、自分のところで出来なければ外注に出す。そうするためにはそれぞれの企業が自社ではこれが出来るというようにオープンにしないと駄目である。特に組合に入っている者同士だけでも仲良くやって行きたいと思っている。地方支部で業態変革実践プランの説明に来いということであれば喜んで伺う。今後とも仲良く印刷業界が良くなるように、またそれぞれの企業が活性化できるように頑張って行きたいと思う。

全印工連集約  全印工連副会長 山岡景仁氏
・全部のグループがワンストップサービスについて話をされていた。Cグループで封筒の話が出たが東京でもあった。年賀はがきに宛名まで入れてあげると言ったら仕事が来たということである。小さな機械でカラー印刷が出来る。そこに名前を預かっておけば追加は簡単に入れることが出来るので、全部そこでやっているという話があった。これが1つの商売になって来たという話も聞いている。
・北海道に高速道路が繋がると他所から取られる。これはしょうがない。何処へ行って、取っては駄目だという法律はない。ただ、そこで自社の強みを出して置かないと駄目である。お客さんのニーズに合った対応をすればお客さんは逃げない。
・環境問題が厳しくなって来た。未だ公には出ていないがカーボンフットが印刷業界にも入ってくる。印刷業は機械を使い、パソコンを使い、明るくないと色が分からないということで相当電気を使う。電気を使うのでカーボンフットが多い。だからCO2排出権を買えという話が出て来る。ドイツでは太陽光パネルを国で張り始めたという。京都議定書は国と国との約束であって1企業にやれというものでないはずであるが、そこまで言っても国は分かったとは言ってくれない。
・ある人は、北海道はこれから伸びると言っていた。少し危険なところもあるが、ロシアの資本が入って来るのではないかという話を聞いた。今は世界恐慌になりロシアも駄目であるが、資源があるのである程度お金も貯まって来る。そうなると北海道に入って来るのではないか。これはある役所の方が話をしていた。
・私も昔、札幌オリンピックの仕事をしていてトラブルを起こし、オリンピックの選手村まで来て間違った印刷物を引き上げて刷り直して納めた経験がある。お客さんとトラブった時の誠意が次の仕事に繋がる。誠意があればあるほどお客さんは繋がって行くと思っている。こういう業界なのでトラブルが多い。今はISOなども出てきて一生懸命やっているが、トラブルの時にお客さんへの対応をきちんとすれば、次からは同じトラブルは起こさないと思うし、お客さんから信頼を得るのではないかと思っている。それを実践して行くことである。
・人材育成をどのようにするか。これがこれからの一番のキーポイントになるのではないかと思っている。人を集めれば人材が集まったとは言えないが、先ず人が来ないと駄目である。そこから人材を教育して行くのがこれからの時代である。

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