「我社の抱える課題〜原点回帰から新創業へ〜」
平成19年度第2回全道委員長会議
下期北海道地区印刷協議会・第3回経営者研修会
 平成19年度第2回全道委員長会議、同下期北海道地区印刷協議会が3月7日午後1時から札幌市中央区の札幌パークホテルで全道から委員50人が出席して開催された。
 また、全体会議の中で、全日本印刷工業組合連合会会長の浅野健氏を講師に迎え、「全印工連会長として学んだこと」をテーマに平成19年度第3回経営者研修会が開催され、委員と組合員80人が聴講した。

〔全体会議・北海道地区印刷協議会・経営者研修会〕
 冒頭、岡部理事長から、「昨年度、私たち役員が12支部を殆ど回り、皆さん方と膝を交えて経営者懇談会を開催させていただいた。その中からヒント得て、第1回のグループディスカッションでは『設備の共有化は可能か〜真のコラボレーションとは〜』をテーマに皆さん方と意見交換をした。今回はいろいろ話をした中に出た題材を取り上げて『我社の抱える問題』は何かを皆さん方の意見を頂戴して、最後に皆さんで話し合ってもらいたいという企画を考えた」とあいさつが述べられた。
 次に、全印工連からの3人の来賓紹介が行われた後、経営者研修会に入った。
 経営者研修会は、全日本印刷工業組合連合会の浅野健会長を講師として、「全印工連会長として学んだこと」をテーマに行われた。(講演内容は次号に掲載予定)
 つづいて、全印工連事業報告として、武石専務理事から次のとおり説明が行われた。
全印工連は、今、業態変革推進プランを提唱している。1月の札幌での新春経営者研修会でその話をさせてもらった。結びの言葉が業態変革はエンドレスということであった。魔法の杖もないということも言っていた。時代が変わり環境がどんどん変わっていくので絶えず業態変革に取り組んでいくことが必要である。そのために全印工連では第1ステージから第3ステージまで提唱した。昨年9月の全国理事長会の会合の中で業態変革のアンケートを行った。概念は分かるが実際に取り組むのはなかなか難しいという声がたくさん寄せられた。全印工連では組合員の皆さんが一歩あるいは半歩でも足を踏み出す、その背中を押す役目を果たしたいという思いで皆さんに具体的な取り組みについての提案をできるものを提示しようと全印工連ではプロジェクトを立ち上げ、毎月1回会合を開き、業態変革の取り組みについて事例を含めて検討をしている。10月の鹿児島大会で皆さんの前に業態変革推進プランの具体的提案ができると思っている。組合員の皆さんが実践できるような業態変革の3つのステージに落とし込みをして業態変革の取り組みに少しでも役に立つようなものを提供していきたいということで今その作業を進めている。
メディアユニバーサルデザインは、印刷だけでなく、むしろ印刷以外に公共施設、道路等でいろいろなところでユニバーサルデザインが広く取り上げられて対応が行われている。なぜか印刷物だけはそこにあまり関心がなかったということだったと思う。全青協のメンバーがこれについて取り組みを始めた。全印工連では全青協の取り組んだユニバーサルデザインを平成20年度も全国展開をしていきたいと考えている。昨年暮にはMUDのカレンダーを作り、各県工組を通じて官公庁に配布した。その時にこの印刷物はどこに頼めば出来るかという質問がおそらくあったと思う。印刷組合加入の印刷会社ならどこでも出来ると胸を張って言いたいと思う。しかし、メディアユニバーサルデザインは、色やフォント、デザイン、色彩の使い方の工夫が必要である。そのためにNPO法人を立ち上げて認証および認証マークを用意していく。全印工連ではそのためのいろいろなセミナー等引き続き開催していく。全印工連からいろいろ情報を発信する。メディアユニバーサルデザインは、ちょっとした工夫が差別化に繋がる。印刷会社の社会貢献にも繋がっていくので取り組んでいってほしい。
再生紙の古紙配合率問題とインキの成分表示問題については、既にいろいろな報道で承知のとおりであるので、各県工組にはFAX情報で知らせている。2月20日に製紙メーカー各社から経産省、環境省に過去の実態調査の結果が報告された。ホームページでもオープンになっている。王子製紙は1980年代からコピー用紙について配合率が違っていたことが判明した。製紙各社は配合率の問題は話し合えば談合になるが、隣を見てやれば談合にはならないが、揃って配合率の偽装が行われていた。問題は、再生紙の定義が曖昧であったこと、品質を検証する手段がなかったということ、自己申告だったということと思っている。今、製紙連合会では、この問題を解決するために委員会を作って定義の問題、品質保証の問題、検証の方法等を議論しているが、直近の方向性では品質保証制度を導入する、再生紙の表示は実数表示で行うという方針が打ち出されている。もう少し検討が進むと思うが、これを受けて国のグリーン調達基準も3月中にはなんとか結論を出したいということが言われているので、再生紙問題は定義を含めてなんらの方向性が出てくると思っている。私ども印刷業界にとってお客様から印刷会社も一緒の仲間ではないかと見られるのを一番恐れている。事実そういった声が寄せられたという報告を貰っている。製造責任は製紙メーカーであり、販売責任は紙流通である。印刷会社の責任はお客様に正しく説明することだと思っている。北海道の組合では既に道・市に説明に行き要望をされていると聞いている。是非、お客様に再生紙の問題について十分説明をしてほしい。コスト負担の問題は、お客様によってはR100の表示を消してほしいとか、場合によっては刷り直しをしてほしいという方もいるかもしれない。この問題は製造責任は製紙メーカーにあるので印刷会社には法的な責任は一切ないという見解が弁護士等から示されている。そうは言っても印刷会社とお客様との関係であるので法律論を盾にとって商売をするわけにもいかないので、実際に刷り直し、シール、ラベルで訂正するような要望があったら場合によっては応じざるを得ない。費用はお客様は印刷会社の方で対応してくださいということになると思う。全印工連ではこの問題について日印産連で対応してもらっているが、製紙メーカー17社に対して、費用問題、補償問題を2月29日まで回答を求めていた。製紙メーカーからほぼ回答を貰っている。各製紙メーカーが大体同じような回答内容であった。用紙の返品、刷り直し等の損害費用発生の場合はお客様との協議のうえ誠意を持って対応するが製紙メーカーから寄せられた回答である。印刷会社の直接の窓口は紙代理店、卸商であるので、お客様からこういった理由で刷り直し、返品等が要請されていると紙代理店、卸商に話をして、そこを通じて製紙メーカーに話を上げていくことでお願いしたい。トラブルがあったら組合、全印工連の方に情報を上げてほしい。日印産連を通して製紙メーカー、製紙連合会の方にその話を出して対応を求めていきたい。インキの問題は新聞報道で偽装というよりは基準未達という表現が多い。大日本印刷の子会社のザ・インクテックが経産省と新聞社に実は我社もエコマーク、ソイシール等の基準に満たないものがあったと自主申告をした。親会社の大日本印刷から古紙配合率偽装問題が出て、インキは大丈夫かということで調べたそうである。これが発端で経産省、環境省から調査要請があり結果的に基準未達のインキメーカーがたくさん出たということである。いずれにしても印刷会社に責任はない問題であるが、お客様にとっては製紙メーカー、インキメーカーはあまり関係ない話である。窓口は印刷会社であるので十分説明をして正しい対応をしてほしい。
生命共済は、4月1日から掛け金が引下げになる。生命保険会社に掛け金を決める指標があり、その指標が下がったというのが実態である。今まで生命保険会社は掛け金を高く取り過ぎていたともいえるとも思うが、掛け金が下がったので加入しやすくなった。加入促進の力添えをいただきたい。工組の交付金、配当を含めて平成18年度は約2億2千万円還付している。胸を張って加入してもらえる制度である。外資系の保険会社が新聞・テレビで大々的な宣伝をしているが、私どもはそれだけの費用も力もないので、役員の皆様の口コミで輪を広げていってほしい。昨年DVDを制作し支部の役員の皆様にも理解いただきとお願いしている。支援をお願いしたい。
印刷図書館は、北海道ではあまり馴染みがないと思う。全印工連の事務所が入っている新富町の日本印刷会館の3階にある。東京の印刷会社の有志が集まって資金を出して図書館を設立した。60年くらい経つが財政的に厳しい状況にある。年会費20,000円で皆さんに会員になってほしい。図書館はその場所から移動することができないのでインターネットで検索するシステムも立ち上げている。
〔グループディスカッション〕
 グループディスカッションは、開会にあたり、伊藤専務理事から開催主旨について、「全道委員長会議は、昨年から開催方法を変更した。その開催方法は、上期に開催する委員会はその年の事業実施計画や運営方法を審議するこれまでの委員会形式で開催し、下期に開催する委員会はテーマを絞り、業界の抱える課題や各社の課題解決の契機になるよう参加者全員で共通のテーマをもって討議をすることにした。この共通テーマ方式の委員会は北海道のオリジナルである。昨年度から新たな取り組みとして、組合員の生の声や悩み・思いを聞くということで各支部にお邪魔して開催している経営者懇談会の席上、よく話題になるのがコラボレーションの問題であった。組合員同士の信頼関係の構築が最大の課題と提起されているような気がする。その意味でも、このグループディスカションは本音で語り合ってもらうので、仲間を知る絶好の機会であると思うし、テーブル以外の仲間とはこの後の交流会でお酒でも飲みながら親交を深め信頼関係を築いていただければと思う。今回は新方式での2回目の委員会になる。テーマは、『我社の抱える課題〜原点回帰から新創業へ〜』と題し、サブタイトルとして〜後継者、価格転嫁、技術対応、設備投資、人材育成、etc〜とさせてもらった。これらは、今、皆さんが多かれ少なかれ抱えている共通の課題ではないかと思う。皆さんに忌憚なく発言をいただき、共通の問題として再認識するのも結構だし、隣の方にアドバイスを受け問題解決の糸口が見つかればこれに勝ることはない。一方では多少地域性が違ったり、多少の人数の違いや設備の違いはあっても、それぞれが独自の得意先を持ち、その得意先から信頼を受け、商売をしていることに違いはない。その基本にあるものは印刷という共通言語だと思う。胸襟を開いて語り合うときっと解決策はあると確信している。仲間だからこそ、そこに成功事例や先進事例があると思う。また、反面教師として、決して失敗事例ではないが、残念ながら思い描いたような結論が導き出せなかった不成功事例があると思う。それらを足がかりとして課題解決の糸口が見い出されることに繋がればと思う。1時間30分程度の討議時間では結論の出るテーマではないと思うが、忌憚のない意見交換をいただきたいと思う。これが次回の委員会のステップアップになれば幸いだし、各支部で同じような意見交換が出来る契機になればと思っているのでよろしくお願したい」と説明が行われた。
 次に、A・B・C・D・Eの5グループに分かれて「我社の抱える課題〜原点回帰から新創業へ〜」をテーマに1時間30分にわたりグループディスカッションが行われ、討議内容について各グループから発表が行われた。
Aグループ
 発表者 田 中 準 一 氏(十勝支部)
後継者の問題については、Aテーブル7人のメンバーのうちいないのが4人である。いるのが3人である。後継者には皆さん苦労をしている。
価格転嫁については、できないが5社、部分的ではあるができたが2社。価格転嫁は今後はどうなるかは難しい問題である。紙が上がっている、材料が上がっている、それでも価格転嫁できない。できないというのはおそらくしていないと思う。経営者であれば何らかの形でしていかなければどうしようもない状況に今なっていると思う。基本的には皆さんの考え方一つで変わってくる。社長が仕事ないから何でもいいから取って来いでは、営業はそうなるとなんでもいいになる。工場が遊んでいるから何でもとって来い。この言葉は経営者として一番まずいと思う。
技術対応と設備投資は、中小零細企業は難しい。設備をするにしても資金の問題がある。人も少ないので技術を教えるにしてもなかなかそうはいかない。勉強してもらうにしてもなかなかそうはいかない。そこで印刷営業士の研修を大いにやるべきだという人がいる。工場に関しては技能検定を活用しながらやっていく形がいいのではないか。技術対応、設備投資は各社ができない部分は仲間の方にお手伝いをしていただく。あるいはそこの会社の設備を使わせていただく。そういう形で対応していけばいい。
再生紙、インキの偽装問題については、お客さんからの問い合わせのあった会社は1件あった。
全国的な問題として長い間、価格問題では悩んでいる。これは永遠の問題である。その一つの原因はアウトサイダーである。
今年8月に北海道情報・印刷文化典を帯広で開催する。皆さんの絶大なるご支援をいただき是非参加を頂いて大いに盛り上げた大会にしたいと思っているのでよろしくお願いしたい。
Bグループ
発表者 星   祐 一 氏(北見支部)
人材育成の問題で、古くからいる社員との反発がある。それを乗り越えていくのが大変であった。後継者は社長と同じことをしないで新たなことをしたがるということで問題が起きているところもある。昔、近江商人は婿を取って商売を続けていく。これはいい人材を選べる。これも後継者問題を解決する一つの方法ではないか。後継者がいても赤字体質では奥さん等が反対する。小樽では年金が貰えるようになったらやめるところが多い。年金も運転資金に回ることがある。親子でやっているところで、父親のみが仕事をして息子は働きに出ているところもある。身内にこだわらないで後継者を選びたい。若い人に意欲がなく、親から貰っても得意先がどんどん減っている。
技術対応として、オンデマンド、カラープリンターの対応が増えている。旭川では印刷機を使わないで24時間対応の営業をしているところが6社ある。企業を充実させるため印刷機を使わない印刷会社を目ざしている。両極端になり8色機などのフル装備の会社と、騙し騙し印刷機を動かしているところの2極化になっている。設備投資をしないでネットで印刷物を頼む。中古機械の活用の情報を業界で考えていく必要があるのではないか。
価格転嫁は難しいができるところからしなければならない。札幌では材料は上がっているが定期物を上げているところはない。小樽では価格転嫁の広告を配ったら仕事が減った。安く請け負う業者がたくさんいる。役所は認めてくれたが上げ幅を下げるように要請された。納期を守り、より良い製品を作りだして、信用を築くことが一番大事ではないか。
Cグループ
 発表者 青 柳 暁 寛 氏(室蘭支部)
後継者の問題についてはマイナーな話ばかりであった。全ての業種で後継者が不足している。特に印刷業の場合は後継者不足である。室蘭でいうと12年前に印刷組合に顔を出すようになってから7社減っている。今現在14社の中で後継者が決まっているのは6社。あとは難しい。全道でも同じである。ただグループで経営されているところはグループ会社の中に人材がいるので、今は考えていないが次は大体決まっているのではないかということであった。子供が継ぐ必要もないしそういう時代でもないが、結果とそしては自分の息子が来てくれたと喜んでいた人もいた。殆どの場合、半数は決まっていない。
価格転嫁についてはもっとマイナーになり価格転嫁はできないというのが殆どである。浅野会長の話にあった利益のでない会社は会社でないではないが、利益で食べていかなければならないし、共益、公益にいたるまではきちんと利益を出していかなければならない。まだまだ努力をしていないのではないか。北海道の生産高は毎年下降している。原材料や油、電気すべて上がっている。全体で上げていかなければならない。そういった努力を経営者、営業も含めてしているのか。何処かが安くしたら迎合して安くする。組合等でいろいろ話したことを行動に繋げていくという根気強い値上げに対する努力がまだまだ我々は必要ではないか。制作料が最近はデータ支給が多いので取れなくなっているが、お客さんとしっかり話をして理解をいただけば取れるものもあるのではないか。全てデータ支給なので、皆がやっているから取れないというような考えではなく、自分達の仕事に責任と誇りを持っていくことで価格に転嫁できるものも出てくる。
技術対応と設備投資では、ある会社では付加価値の高い製品を作るための設備投資をしている。常に計画性をもって設備投資を行っている。中小零細企業では例えばCTPがなくても信頼関係のもてる会社と設備の共有までいかなくても設備を使わせてもらったりして、コストを下げていくような人間関係を作っていくことも必要である。コンピュータ技術は印刷会社より一般の会社の方がすぐれている場合がある。コンピュータの技術はすぐれていてもそれを製品にするのは印刷会社であるので、製品にする段階でいろいろなノウハウを持ちながら進めていくことが必要である。
人材育成はコンサルタントに依頼している会社があった。これは中小企業では実際は難しい。技術は社内で習得し、営業マンの育成については顔の見える営業マン、技術の知識をもってお客様を説得できる人材を組合も含めて本格的に育てていくべきではないか。印刷の場合は多くの企業と関わっていくことが多いので一般的な情報は他の営業マンより多くなる。そういった情報も含めて自分達の仕事に対して誇りを持っていくことで価格に対してもきちんと取り組んでいける営業マンを育てていくことが今は必須ではないか。
設備にしても人材にしても常に計画的経営をしている会社がある。小さい企業でも大きい企業でも基本的計画を作るべきである。ただ営業して売上げを上げるということだけではなく目的意識をもった中で経営をしていく。経営者がそういった取り組みをしていくことで一変に改善されたり、劇的な飛躍をすることはないが、ただ日常に追われるだけでなく夢と目的を持つことは必要という感じがしている。
Dグループ
 発表者 岸   昌 洋氏(札幌支部)
ネガティブな話とポジティブな話があった。近年後継者がいなくて廃業しているところがある。設備投資ができるところは後継者の育成ができるが、自分の息子に限らず譲っていくのが難しい。仕事が激減している。官公需が減少している。後継者問題はこれらが要因になっている。
人口が減っていて、住んでいる人達が不安になっている。若者を採用しても若者は10年先を見るので給料を2〜3万円上げてみても10年先のことを考えていなくなってしまう。
観光資源を目的としたフリーペパーを発行したり、データ放送が始まるがこれは地域に特化したことになるので実証実験をしている。総務省はデータ方法のコンテンツ作りは印刷業の仕事と考えている。なぜかというと動画ではなく静止した状態のものを作り上げていくのは印刷業の仕事である。例えばこれにQRコードつければQRコードの普及にもなるし、そこから紐付きで仕事が派生していく。
企業が合併を進めて行く中で、お年寄りのオーナーがまだ良くなるという幻想を持っていて話が立ち消えになるケースがある。バブルを経験している人達がまだ良くなるという幻想を抱いていて印刷業に限らず、こういう時代背景を背負っている人達が認識が思いっきりずれているので上手く行かないケースがある。
中小企業は印刷業界に限らずネットワークがポイントになっていく。これからは2つしかない。一つは、どこよりも安く売るかである。これは帆風とかプリントBIZのようなインターネットプリンターといわれている通販サイトだと思う。24時間、365日のアスクルもそうである。もう一つは、何処に価値を付けて高く売るかである。この2つしかない。どうやって高く売るかは、需要創造型の営業力が必要になる。そのためにはパッケージ化をすることが必要である。農業ならこう売る、観光ならこう売るなど業種別のパッケージが必要である。そうすれば御用聞き営業で済むので、給料の高い営業マンでなくてもホームページが営業マン代わりになったり、女性職員でも営業マンに成り得る。
これからは銀行主導の合併だけでなくてメーカー主導の合併も増える。今後、設備投資をできる会社は印刷業では全国で1,000社くらいしかない。メーカーは売らなければならないのでメーカー主導で合併が進んでいく。今までは買ってやるようなイメージであったが、今後は売ってくださいのようなイメージになるかと思う。
営業マン教育を重視しなければならない。今までの印刷営業士の資格のようなものだと物が売れない。管理職自体が部下の管理ができない。
地方は過去20年あまり安閑とし過ぎていて、その時期であれば合併もできたし、いろいろアライアンスを組めたし、いろいろな方法があったが、今はその体力もない。設備投資もできない。社員教育もできない。そういう状況下にあって突破口を模索しているが、そもそも地域自体がもつのか。北海道自体が夕張になってしまうのではないか。札幌は地方の人達に食わしてもらっている地域だと思う。札幌自体で何かの事業を創出して札幌自体でまかなっているという地域ではない。オール北海道という視点で物事を考えなければ北海道自体が破綻する。そういうことができるのが組合ではないかと思っている。1社単体でどうのこうのという問題でないので、そのための北海道印刷工業組合になってほしい。
Eグループ 
発表者 高 原   淳 氏(十勝支部)
浅野会長の話の中でグーテンベルグの話がでてきたが、グーテンベルグは聖書を作ろうとして印刷を発明した。聖書というのは一つの情報である。情報を発信するために技術を作り出した。今、我々の業界の現状はどうかというとそうはなっていない。他の業界が作り上げた情報を印刷会社が受け取って印刷機にかけて製造して納める。そこのところになっているのが業界の大きなジレンマではないかと思っている。ただし、印刷業は非常に恵まれている面もあり、今までは受注していれば何とかなった面はあった。印刷物はあらゆる会社で発生するものであるからどこにでも営業に行くことができる。強みでもあり、恵まれているという点で弱みにもなっているのではないか。長年、景気の良いときにはぬるま湯体質になって、そこから脱却できなくて今現在苦しんでいる。印刷業の目指す一つの方法というものは情報を自分達、印刷業界の手に取り込んでいく必要があると思う。Eグループの中の半分くらいの会社が情報誌を発行している。それが良いのか悪いのかはわからないが、そういった動きだとか、デザイン、企画に力を入れていってソフト力を伸ばすような方向性は欠かせないのではないか。印刷に特化するのも一つの方法であるが、特化するのであれば特化する方向で集中してやっていく方向があるし、そうでなければ情報をキーワードにしていく必要がある。現状としてはそこのところが中途半端になっている会社が苦しいのではないか。印刷業は受注体質で製造業という発想でやってきたので、長年業界にいるとどうしても固定観念がしみついてしまう。そこのところをどうやって柔らかくしていくかが大切で、そうなると若い人達に期待するしかない。若い人に期待するということはトップダウンのマネジメントではこれからは厳しいのではないか。若い人達に自由に好き勝手にやらせるみたいなところがあってもいいのではないか。当社では、私はまるで権限のない社長なので殆ど自由にやらせている。最後は自分が責任をとる。失敗しても成功してもいい。自由にやらせている。それがいいのか悪いのかはわからない。当社はそれが上手く行っていない部分もあるがそれが一つのあり方かとも思う。設備で特化してやっていけるという会社は、中小企業が多いこの業界の中ではほんの一握りの企業だけだと思う。そう考えると情報は大事である。8月には情報・印刷文化典が帯広で開催されるが、タイトルの頭にきている情報は印刷業界は案外弱いという現状を捉え直して、印刷に力をいれるだけでなく、これからは情報に力を入れて経営をするのがいいのかと思っている。
各グループの発表に対して、岡部理事長、浅野全印工連会長から感想所見が述べられた。
理事長集約
岡部理事長
印刷業は恵まれている。どんな企業にも営業できるだけ幸せでないかという明るい発言があった。本当にそう思う。我々印刷業はどこの企業に行っても取り敢えずは会ってくれるでしょうし話もできるということを考えると、もっともっといろいろなところに行って自分の企業を売り込んで来てもいいのではないか。あそこにはあの印刷会社が行っていると遠慮することはない。生き残りをかけているという言葉もあるが是非、特化した自分のところの企業を宣伝するなり、印刷だけやっている企業は印刷だけでの素晴らしい技術をもって見てもらう。お客様となんとしても親密になっていくのが一番ではないか。ワンストップサービスという言葉で業態変革の本にも載っている。あの会社にものを頼めば全てやってくれる。安心して任せられるというようになる。頼まれた企業は全て自分のところで出来なくてもいい。出来ないところはコラボレーションして企業間同士での助け合いをしていけばいい。少なくても組合に入っている者同士、仲良くやっていかないと大変なことになっていくのではないかと思っている。
後継者問題は大変な問題である。後継者がいないが企業を続けたいというところは合併等を考えていけばよい。自分のところの話で恐縮だが、6年前に取引先の関係の会社が後継者がいないので買ってほしいということで引き受け漸く支払いが終った。別に社名を変えなくてもいい。名前を残してほしいということであれば残せばいいし、合併して新しく名前をつけてもいい。北海道でも2〜3年前に大手が一緒になったこともあるし、廃業したいというのなら別だが、この企業として伸ばして行きたいというのであれば、そういう考え方をしなければならない。今はそれが恥かしいということはない。伊勢丹と三越が業務提携をする時代である。グローバル社会といわれている中にあって何も恥かしいことはない。腹を割って仲間同士でのコミュニケーションをもってやっていければよいと思う。
人材育成、後継者の問題についての勉強会を組合としてはやっているつもりでいるが、札幌で開催するので地方の方は来られないということもあるので、内容を「北海道の印刷」になるべく載せるようにして、皆さん方にお知らせしたい。これからもセミナーの形での勉強会を開催していく。
価格の問題で、値上げしてほしいと言うことは大変なことである。全印工連からの文書や北海道印刷工業組合として文書を作り、そこに自社の名前を入れて持っていってくださいというお願いはしたが動きは悪いみたいである。北電や北ガスという大きな企業は理解をいただき新年度から値上げに応じてくれるところもある。苦しいが根気よく少しでも値上げできるように動いていくよりない。アウトサイダーで安い価格を出しているところも聞いている。そんなところを相手にしていたら自分の首を絞めるだけである。どこかの会社が値上げ要請に行ったら当社は値上げしなくてもいいから仕事をくれというような仲間であったらどうにもならない。そういう事だけは仲間同士ではしないということを原則として、当社も上げたいので今度文書を持って来ますというような動きをしてほしい。そうするとお客さんも分かってくれる。今はトイレットペーパーもティッシュペーパーも上がっているし、何でも上がっているのにどうして印刷料金だけが上げられないのか不思議な現象である。根気よく頑張っていきたいと思っている。
先般、ある講演会で、北海道はこれからどうすればいいのかというと観光しかないということであった。北海道は観光でカジノを作ったらもっと北海道は良くなるという話があった。そうなれば印刷物もたくさん出るかも知れない。道庁に洞爺湖サミットの印刷物についてのお願いに行き、道内の印刷業者に発注してほしいという要望書を提出してきた。
全印工連集約
浅野会長
今、発表されたことは切実な問題である。北海道だけではない。東京でも同じような問題がある。
先日、中国地区協で鳥取県に行ってきた。鳥取県印刷工業組合の組合員数は今28社である。松下理事長に他県との競争はどうかと聞いたら、隣の島根県とは昔から行ったり来たりしている。中国山脈があるので瀬戸内海の広島や岡山からは殆ど来ない。東京からの大手もあまり来ない。それは良かったと言ったら、お客さんが出ていってしまうということであった。鳥取のスーパーが岡山のスーパーと経営統合して、今まで鳥取で発注のあったチラシ等が岡山での発注になってしまったということである。所用時間が私は羽田から1時間、他の方は速い人で3時間であった。金沢で前理事長が藍綬褒章を受け祝賀会があり新潟の理事長が出席されたが金沢でも新潟から来るよりも私のほうが速い。費用はかかるとしても東京へ行く時間は全国どこからでもそれほどかからない。そういうこともあって東京には1,200社を越える他県の印刷会社が営業活動をしている。そのきっかけは殆どがお客様である。地元のお客様が東京で発注するようになったとか、何らかの形でお客様がきっかけで東京に出てくるようになる。そうするとその方たちは、東京は沸いて出るように仕事があると言う。東京にいる我々は仕事がないと言っている。このギャップは何なのだろうと思う。事実、東京から発信される情報は日本一だと思う。その中に身を置いているとあたかも受信できているような錯覚をしてしまう。実は受信していない。皆さんの方がいろいろな情報を集めているかも知れない。あるいはアンテナを高く張っているのかも知れない。何処が良くて何処が悪いかと考えてしまうとどうしても辛い方に目が行ってしまう。
しかし、私たちの印刷産業は今までのところは国際競争はなかった。まさに国内産業であった。ですから競争といってもお互いに手の内は分かった人である。アウトサイダーといっても大体そうである。しかし、他の産業に中小企業はありませんか。そんなことはない。多くの中小企業は国際競争の中で努力をしてきている。これからは日本の印刷産業も一部国際競争を避けるわけには行かなくなってきている。事実、東アジアの台湾、韓国、中国は印刷を輸出産業と考えている。今までは回避できたがこれからは一部回避できないこともある。他産業に比較すれば恵まれていることもある。正月の経営者の挨拶で今年は先も良く見えるし、非常にいいので、どんどん行くという挨拶を私はこれまで一度も聞いたことがない。大体先行き不透明で厳しいとどんな年でも経営者は言う。アメリカでは経営者がそんなことを言ったら、この人の後に着いて行ったらろくなことにならないので他を探そうということになるらしい。先行き厳しいという記事を載せた経済紙は売れるそうである。どうも私たちの心の中に自虐意識があるのかと思う。過大評価する必要もないが過少評価する必要もない。客観的に冷静に自社のありようを見つめるべきだと思う。鳥取の方も皆さんもそうであるが真剣である。今の環境を考えたら真剣にならざるを得ない。大変失礼で僭越なことを前提に言うと、漸く我々は真剣になったと思う。今までふしだらだったとも思わないし、不真面目であったとも思わないが、国際競争に直面してきた他の中小企業の人たちと比べて真剣さがあったのかと思う。私は東京の大田区なので電気パーツとか弱電パーツとか自動車パーツの業者さんが多い。あるとき地元のそういった方たちと話をする機会があって、業態変革の話をしたら、私の小学校の10歳位年下の後輩が、印刷は遅れているという。自分達はそんなこととっくにやってきた。ある日突然注文が来なくなる。昨日まであった注文が突然来ない。お客さんのところに行ってどうしたと言ったら、それは海外で作ることにしたということである。それはないだろうと言ってもしょうがない。価格の問題でも値引き合戦をやっているのは我々だけではない。現実に避けたいと思うような厳しさ、それも直視しなければいけないが、他産業に比較してまだまだ恵まれているところがあるように思う。
中小企業団体中央会の方から印刷は流石ですと褒められる。何が流石ですか。少し前までは1日3社無くなっていた。今は1日5社のペースで印刷業者が減っている。それでも倒産が少ないという。清算が多い。その差である。例えば後継者がいなかったら営業権譲渡はどうか。実際、印刷会社の売りものが結構出ている。例えば東京で商印で30億の年商があるが興味はないかとか、出版で50億だけどどうかとの話がある。自分のところで精一杯なので興味ないと答える。そうすると最後にM&Aの業者が金羊社を買いたいという会社あるといって帰った。同業かと尋ねたら異業種だという。興味をもたれないよりはもたれた方が幸せかと思ったが、今のところ売る気がないと答えた。我々の業界の中にもグローバライゼーションというか現象が他産業と同じように少しずつ現れてきたという感じがする。
しかし、綺麗ごとは言っていられない。今日をどうするかである。事務所の中も工場の中も5Sは徹底できているだろうか。要らないものと必要なものが混在しているような状況を放置しているのではないか。もしそうだとすると利益はでないのではなく捨てていることになる。日本の平均的な印刷会社の営業マンは出社してから退社するまで営業マンとしての工務、生産管理で、問い合わせという探しものを含めて1日の60%を探しもので費やしているという。これは利益がでないではない。捨てている。モラル、モチベーションが下がっていれば1人で出来る仕事が3人係り、1時間でできる仕事が3時間かかる。これで利益がでないといっているが、それは利益がでないではなく、捨てているのではないか。例えば用紙が上がった。先ず私が営業マンに言ったのは、全印工連がそのキットを作ったが、お客様に現状説明に行ってきなさい。このような状況になっている。私どもも今、紙の商社さんと価格の交渉をしているところであるが、またこの件でご理解をいただくために社長が伺うことがあるかも知れませんのでその時はよろしくと言うようにさせた。発注先の調達担当者は全部見ていて知らない顔をしているだけである。それで私たちが何のアプローチもしないとすれば、紙は上がっているがうちに来ている印刷会社は大丈夫だと勝手に自分に都合のいいように解釈して上司に報告を上げる。私だったらそうする。再生紙の偽装の問題もそうである。先ずお客様に情報をお届けしているかどうかである。そういったことが日頃の信頼関係になってくるように思う。私は自社を念頭において言うが、私の会社は印刷会社の平均より下だとも思わない。ですから皆さんに聞いてほしい。まだまだやらなければならないことはたくさんあるし、できることもたくさんある。「日本の印刷」の今年の正月号に拙文を載せさせていただいた。ハチドリの一雫という話を披露した。南アメリカの原住民に伝わっている話であるが、森が山火事になる。そうなるとそこに生息していた動物たちが逃げ惑う。その中に小さいハチドリ飛んできて自分の口ばしから燃え盛る森に水滴を1滴落としていく。逃げ惑う動物たちはお前何やっているの、そんなことして何の役に立つとあざ笑う。そうするとそのハチドリは今自分ができることをやっているだけだと言い残して、また口ばしに水を蓄えるために飛んでいく。誰の心にも逃げ惑う動物たちと同じように、そんなこと自分一人でやったって、自分だけいい格好したってと思う自分がいる。私も今年の9月に還暦を迎える。私もハチドリになろうと思っている。今自分ができることをしないでどうしたらいいか悩んでも誰も助けてはくれないと思う。特に私たち経営に携わっているものはそうだと思う。社長、何しているのですか。またその話ですかと言われても繰り返しそれをするしかないと思う。今の日本の印刷産業のレベルは世界最高水準である。今、我々は印刷というものに対して溜息がでる状態にあるが、国際的にはどうか。昨日、小森コーポレーションの小森社長さんと会う機会があり、1週間前にブラジルから帰ってきたという。ブラジルに印刷のための学校があるそうである。4コースあるそうである。各印刷会社がその学校の会員になる。そのためには勿論費用が係るのであるが、その会費を払って従業員、学生がそこに入っている。中国でもロシアでもそうだという。ブラジルはアメリカが近いからアメリカ人が多いかと思ったらドイツ、イタリアというヨーロッパの人が多いそうである。世界で印刷がおもしろくなってきた国である。インドもそうである。BRICsの次にVISTAが控えている。我々が溜息をついているのに俄然おもしろくなってきたというところがそんなにある。特に人口の多いところである。そういうように国際的な視野で見たときに私たちは何ができるのだろうか。どうするべきなのかというのもおもしろい。確かに足元は大変であるが、どうして大変になったかもう一度考えればいい。素人がカラーの印刷物を簡単にできるようになった。素人ができるということはそこをカバーしていたプロの領域はそれだけ減るということである。日本のオフセット印刷は成熟期に入っているが、何処の会社でも刷り直しをやっているでしょう。なぜそうなるのか。未成熟だからである。まだまだ収益率は上げられると固く信じている。もう一度、足元を良く見ていきましょう。こんなことではトヨタの足元にも追いつかない。スケールも作っているものも違うかも知れないが、トヨタを宇宙人がやっているわけでもない。私もそんなことを思いながら自分に鞭を打って、痩せ我慢半分であるが、こんなおもしろい時代はないと考える。私も皆さんと同じ思いを日々している。決して恵まれた状況で仕事をしているわけではないが、もっと大変な人がいると思う。先輩たちがもっと大変な思いをしてきた。日曜日だって、子供の運動会に行ってやりたいという思いをかみ殺しながら裸電球の下でランニングシャツで工場へ行って機械を回していた。そんな時代があったからこそ今我々がいるのではないかと思う。弱音を吐いても仕方ないし先輩たちにも失礼だ。後継者がいないということは親父の後姿を見て魅力がないということである。もっとオーラを出しましょうよ。

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