第9回 
「知っておきたい高年齢者と公的保険等」

 平成19年秋、再び社会保険庁への信頼が年金問題等により大きく揺らいでいます。
 こうした中、年金のみならず医療保険や雇用保険の公的保険等について社員自らが、退職、定年後に備え知識を高めることが必要になってきています。 
 例えば、年金は、定年以降進路が決まっている人も、そうでない人も、昭和28年4月1日以前生まれの会社員で受給資格のある男性(女性は昭和33年4月1日以前生まれ)は、原則として60歳到達時には、厚生年金の裁定請求の手続きが必要となってきます。いくら受給資格期間を満たし、支給開始年齢に達したとしても自動的には支給されるものではないのです。
 また健康保険や雇用保険についても退職した場合はもちもんですが、60歳以降に継続雇用規程等に基づき新たな再雇用契約を交わした場合などは、その旨諸手続きが必要となってくることもあります。
 これらの公的保険等は、会社担当者にアドバイス等をしていただきながら、社員自らが確認、検討し適切に対応することが望まれます。複雑と思われがちな社会保険ですが高年齢者の実生活に大きく関わってきます。そのため今回は公的保険等のポイントを再確認してみることにしましょう。
☆★☆〜高年齢者の公的保険等ワンポイント確認〜★☆★
医療保険
 被保険者やその家族である被扶養者が、業務外の原因で病気やケガをしたとき、被保険者証を提示し医療費の1〜3割を病院等に支払います。この自己負担の割合は、定年後69歳までは健康保険も国民健康保険も同じ3割です。一方、保険料の負担では、健康保険と国民健康保険に違いが出てきます。
 健康保険は標準報酬月額表を基に算出し事業主と被保険者が折半します。また被扶養者は保険料を徴収されません。しかし国民健康保険は、当年度住民税額に使う所得割や家族に対する均等割等により決定しますが市区町村によって異なります。会社を辞める前に市区町村に問い合わせるとよいでしょう。
 この他、退職後の選択肢である健康保険の任意継続被保険者(健康保険の被保険者の資格喪失後20日以内に手続きをしなければなりません)や健康保険の被扶養者となる要件も必ずチェックしましょう。

厚生年金
 厚生年金は、「月を単位」として計算し、入社日の属する月から資格喪失日(退職日の翌日)の前月までが被保険者期間として計算されます。
 例えば1月20日で退職し、翌2月1日に再就職すると1月分は被保険者期間にはなりません。このとき夫が退職時60〜65歳未満であっても、妻が60歳未満の場合、1月分は被扶養配偶者としての第3号被保険者とならないことになり、国民年金に加入する手続きをしなければなりませんので注意が必要です。

雇用保険
 20年以上雇用保険に加入していた定年退職者が、引き続き再雇用され63歳で自己都合による理由で退職した場合は、条件を満たせば求職者給付の基本手当150日分を受けられます。
 ただし、65歳前の老齢厚生年金は支給停止となります。しかしこの人が65歳になる3ヵ月前に退職し基本手当を貰いながら65歳に達した場合は、老齢厚生年金も併給されます。
 また65歳以降に退職した場合は基本手当ではなく高年齢求職者給付金として「一時金」の支給となります。この点も押さえておきましょう。
小松社会保険労務士事務所 社会保険労務士 小松勢津子

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