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郵政関連4法案の悲しい結末
常任理事・経営革新委員長
川越  仁
川越製袋株式会社代表取締役社長

 ワールドカップも個人技のブラジルが組織のドイツを破り閉幕した。一ヵ月にわたる祭りの終焉は寂しいものだが、国と国が競う事でそれぞれのナショナリズムが垣間見えた事も興味深かったし、一流の選手が名誉をかけ競う真剣勝負に心が打たれた。
 さて、小泉改革の錦の御旗であった郵政関連4法案の自民党案を読むと、骨抜きでクロネコヤマトが歯牙にもかけない内容になってしまった。経済の原則にのっとれば、郵便料金はその配信先の距離でコストが違い、価格が変わってあたりまえ。情報メディアがインターネットに取って代わられる状況下で郵便事業そのものの将来像が変わろうとしている時に、民間の参入に歯止めをかけるべく、信書法案の定義(DMが信書とは笑止)、料金の一律化、ポスト設置の義務付けを求める法案など誰のための法律なのかと言いたい。
 少なからずこの法案に期待を寄せていた一人としては落胆を隠せない。ほぼ東京一極集中で全国に発信しているダイレクトメールを、各地に分散発注をする事でどれだけの印刷需要が生まれるかは予測ができないが、民営化により地域内発信料金が郵政の割引制度以下の料金になれば実現可能な話だ。もちろん新たに発生するビジネスではないので首都圏には痛手であろうし、大量生産することで低コスト化している現状をどうするかを考えなければいけないが、ヤマトなどの企業努力で低料金化が可能になれば、多少のコスト高は充分に吸収できると思う。何しろ先進国の中では一番高い郵便料金なのだから。顧客情報の管理など簡単に行かない部分もあるがメーリングを含むビジネスチャンスは大きい。時代の流れにそぐわないこの法案が通れば地方活性化の芽の一つを削ぐことになるのではないであろうか。結末を見るにつけ既得権を守るための論理で構造改革を阻害する勢力に憤りを覚える。
 ところで狭い世界の話で恐縮だが、時代の変遷とともに私ども製袋の仕事も変化をしている。
・長3封筒(定形郵便物)からパソコン、携帯へ
・現金からカードへの移行による金融機関の現金封筒の減少
・テレカから携帯(テレカ封筒の消滅)
・封入封緘の自動化により角2封筒からOP袋への移行
・計画生産できる祝儀、不祝儀用封筒やコスト優先のサービス袋は中国での生産
 環境保全は世界的なうねりで、情報伝達のシステムそのものが、ペーパーレス社会へ収束していくことも考えなければならないが、マイナス要素ばかりでは衰退の一途となる。封筒メーカー各社がしのぎを削る厳しい環境下ではあるが、商品を包み送り出す担い手としての社会性を失わぬよう、努力をしていきたい。