印刷燦燦
自社の伝票を再検証


副理事長・マーケティング委員長花井 秀勝
(札幌凸版印刷株式会社代表取締役社長)


 あなたの会社でも多くの伝票が利用されているであろう。しかし、その中で「おや? なぜ?」といった疑問を持たれたことはないだろうか。
 たとえば、「ある5枚複写の伝票について、業務の中で1枚不要になっているものがある。でも、何でいまだに残っているのだろう」「出荷伝票の中で備考の欄への書き込みが多いが、その内容を分析すると、1つ記入項目を増やすだけで解決するのだが」などであろう。
 伝票は業務の流れを明確に表す指標となるのだが、多くの企業において業務改善を進めても伝票を改良しているところは少ない。そのため、機械化、自動化が進んだ生産工程の中で、記入が不要になった伝票項目が残っていたり、業務の流れと伝票を無理に合わせて運用したりという非合理的な部門が残っている企業もあることだろう。
 コンピュータ機器を導入し、ネットワーク上で業務管理を行おうとしても、業務の流れの鏡となる「伝票」がうまく利用されていなければ、移行することは難しい。また、ネットワークで管理する部分と紙伝票によって管理する部分が共存している業務現場では、二度手間作業が必要となり、作業量が増加してしまったという企業もある。
 つまり、伝票とは生き物であり、定期的にその種類や項目内容を検証する必要があるものなのである。
 業務改善の提案が社内でなされる。それを実現するために最初に着手すべき事が伝票の改良である。業務フローを明確に描き、あやふやな決まりを明文化し、誰であっても同じようにその伝票を扱うことができる。業務改善の究極とは、伝票利用の標準化であり、これが業務の標準化にもつながるのである。
 また、請求書、領収証といった社外に対する伝票についても、大きな可能性を秘めている。それは販促ツールとしての機能である。貴社の領収証の裏面は白紙ではないだろうか。また、請求書はそれのみをお送りしていないだろうか。
 請求書、領収証は、毎月1回必ず顧客に届く有効なツールである。これらの伝票の裏面に広告宣伝を入れることや、請求書を送付する際、販促用チラシや情報紙などを同封するなど、伝票をその機能のみならず、販促PRにまで役立てることができるのである。
 領収証の裏面の広告は、自社広告でなくても良い。幅広い企業に関わる業種(事務機・コンピュータなど)企業と提携し、広告を掲載いただくことも可能である。このようにすれば極端な話、領収証が広告収入で作製でき、しかも利益を生むことも考えられる。
 ペーパーレス化が叫ばれても、領収証などは今後も商取引上、決して無くなることのない伝票である。それならば、企業のイメージアップの一要素としてデザインを見直すべきではないだろうか。CI(コーポレートアイデンティティ)を実施した企業においてよくあるケースとして、会社案内は予算をかけて新たに作ったが、伝票はそのままということがある。伝票とは会社案内以上に得意先との接点を生む。しかし、その領収証が他社と同じような既製品のままでは、いつまでたっても自社のCIを伝えることができない。
 意外と思われるであろうが、CIの入り口は伝票デザイン刷新からというのが私の主張である。毎月得意先に手渡される領収証などの伝票こそ企業の顔となるものである。そこで明確な企業イメージをそこに盛り込んではいかがであろうか。

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