ソリューション・プロバイダーへの進化
産業成長戦略提言2010説明会
 産業成長戦略提言2010説明会が、1月7日午後2時から札幌市中央区の札幌グランドホテルで全日本印刷工業組合連合会産業戦略デザイン室副委員長の岸昌洋氏(正文舎印刷株式会社代表取締役社長・札幌)を講師に迎え、「2020年をデザインする〜ソリューション・プロバイダーを目指して〜」テーマに60余人が出席して開催された。
 以下、講演の内容の抜粋を紹介する。 (文責:編集部)

岸 昌洋氏
産業戦略デザイン室
 全印工連産業戦略デザイン室は、三役直轄の諮問委員会の1つである。産業戦略デザイン室はどういうことをやっているかというと、昨年岐阜で全国大会があったが、それに向けて提言書を作った。これが今までの産業戦略デザイン室の役割であった。次はM&A事業、業界CSR認定事業、海外展開事業、ビジネスタイアップを含むアライアンス事業を進めていく。
 今日の話は5つある。@印刷産業の過去と現在、これは現状認識の話になる。A未来、これは未来予測になる。10年後の2020年の予測をする。Bソリューション・プロバイダーへの挑戦、C企業の継続性、競争力強化の推進、D組合に関する戦略。この5つの項目で話をする。

 
印刷産業の過去と現在
 印刷産業の過去と現在では、@印刷産業の成長とピーク、A印刷ビジネスの採算性、B印刷需要の回復可能性、Cパラダイムシフトという内容で話をする。産業戦略デザイン室の将来予測は言葉だけで漠然とした表現では全く役に立たないという前提がある。過去にもいろいろな団体から将来予測が発表されてきたが、大体が何々を取り入れたらこうなるという、たらればの表現が多かったと思う。産業戦略デザイン室は全印工連の諮問委員会であるがJaGraや全国印刷緑友会やJAGATなど組合員以外のいろいろな団体から集まっている。

 
印刷産業の成長とピーク
 印刷産業の過去50年は1997年までの成長期と2007年までの成熟期の2つに分けられると推測した。印刷産業は経済成長と人口増加に伴って情報流通量の爆発的な増加を印刷によって支えてきた。その後2007年に掛けての数年は人口増加による自立的な経済成長を期待することができなくなった。中国などの新興国の台頭によって日本経済の存在感は相対的に弱まった。同時にデフレ、生産拠点の海外移転なども進み国内経済は自立的な成長を取り戻すには至らなかった。1990年には8.9兆円の市場規模があった。事業所数は4万3千社あった。従業者数は48万人を超えていた。バブル経済が崩壊してその影響で一旦落ち込んだが1997年には8.8兆円台まで回復した。2008年の市場規模は出荷額が6.98兆円、事業所数は3万社、従業者数は35万人にまでに落ち込んでいる。これは少子高齢化、経済成長の成熟、メディアの多様化の3つの理由に加え、1998年頃からインターネットや携帯電話の普及によって出版市場が縮小するなど印刷の市場規模が長期に亘り落ち込み傾向になったからと予測が立てられる。その反面フリーペーパーの需要が拡大するようなかたちで印刷市場はかろうじてバランスを保ちつつ、出荷額は年率2%という僅かのペースで緩やかに縮小してきた。

 
印刷ビジネスの採算性が過去最低
 印刷ビジネスの採算性は過去最低になった。売上高の減少、収益性の低下、倒産の増加である。紙とインキの出荷量の伸び率はあまり高くはないが2008年まで増え続けている。ところが印刷出荷量は1997年以降下がり続けている。理由は簡単である。印刷単価の値下げ、減少以外の何物でもない。多くの印刷会社は印刷需要の伸び悩みを前提にして外注品の内製化などによる合理化努力で収益を確保してきた。しかし、リーマンショック以降の印刷需要の減少は社内的な合理化努力で吸収可能なレベルを超えてしまっている。印刷会社の業績が今でも急速に悪化し続けているという予測が立つ。
 中小・中堅印刷会社の売上げは2008年、2009年と2年連続で減少している。特に2009年は過去最大級の落ち込み幅を記録している。全印工連の2009年経営動向実態調査によると印刷会社の経常利益は2.1%と過去最低を更新した。調査未回答の印刷会社および非組合員の赤字印刷会社の業績を勘案すると2009年は過半数の印刷会社が赤字に転落したとデザイン室では捉えている。印刷会社の倒産件数は帝国データバンクの印刷業の倒産動向調査からであるが2009年の印刷会社の倒産は174件で、過去5年間の推移としては最高を記録した。

 
印刷需要の回復の可能性は低い
 今求められているのは有事に適応できる経営者ということになる。大事なことは不況だから紙の需要は減っているということではないということをきちんと認識をすることである。今は非常に有事である。では印刷需要の回復はあるのかということをデザイン室では研究をした。可能性は非常に低い。その原因として出版市場は減少し続けている。ピークの1996年に2兆6千5百億円あったが2009年は20年振りに2兆円を割ってしまった。その後も下落の一途を辿っている。特に雑誌は12年連続減少で持ち直しはおろか下げ止まりの気配が見られない。官公需がウエイトを占めている要因があるが、全国の自治体数は1999年には3,229あったが2010年までの11年間で1,727まで減りほぼ半分になった。自治体の財政難により予算の削減もあり官公需の受注競争は激化を増し受注価格も一向に下げ止まらない。
 今まではこういう状況下においても印刷市場は商業印刷が底支えをしてきたが、リーマンショック以降、企業各社は商業印刷物の発注原資である広告宣伝費を引き締めた。わが国の広告市場は僅か2年間で約16%縮小した。今後、景気が回復しても一時的の限定的な印刷需要に留まると見られる。印刷発注者の多くは不況による広告宣伝費の予算の削減に悩み、費用対効果がより高いメディアを探し続けている。

 
パラダイムシフト
 景気後退の長期化というのは、メディアスイッチを促すという側面を持っていると位置付けた。既にiPad、iPhone、Kindleなど革新的な電子デバイスが登場している。印刷メディアからインターネットなどへの他のメディアへスイッチした印刷需要が簡単に戻ることはないと予測している。リーマンショックを機に印刷市場は深刻な実需の減少に直面している。景気後退が本格化し企業が一斉に広告宣伝費を引き締めた。近年の印刷市場を引っ張ってきた商業印刷への資金の流れが激減してしまった。2009年9月にCO2を25%削減するという鳩山イニシアティブの発表があった。各産業は前例のない高い環境目標を掲げる必要が生じてしまい、これも大いに企業の支出を抑える原因となった。2009年10月にアマゾンのKindleが発表され、2010年5月にはアップルのiPad、今後もどんどん出続ける。優れた電子デバイスが発売されると電子書籍時代が急速に現実味を帯びてくるというか、もう来ている。印刷産業は2008年からの3年間のうちに@経済環境の悪化、A環境制約の増加、B電子書籍の実用化といった3つのマクロ環境の変化への対応を立て続けに迫られることになった。時代は変わってしまった。

 
2020年までの印刷産業を取り巻く環境
 印刷産業の未来、ここからが産業戦略デザイン室が研究した2020年までのことになる。2020年までの印刷産業を取り巻く環境、印刷産業のかたち、印刷市場のかたち、印刷会社のかたちということである。
 環境の変化は、最大の要因はユビキタス時代の到来ということになる。電子書籍や電子教科書、電子看板(サイネージ)等である。電子教科書は事業仕分けに合っているが、確実になると思う。電子教科書になるということは黒板も電子化される。
 慢性的な供給過剰による過当競争、人口減少、経済成長の停滞である。2020年までの10年に亘り、日本経済に占める印刷産業のシェア、メディア全般に占める印刷メディアのシェアは低下が続くということが基本的シナリオになっている。
 人口の推移は、日本の人口のピークは2005年の1億2,777万人であった。減少段階に入って予測の数字になるが2020年までの10年間で3.5%、440万人の減少が予測されている。日本のGDPの成長率予測は、三菱総研とみずほ総研の数字から、GDPの成長は2020年まで高くても2%台の低成長とみられている。大幅な内需拡大は期待できない。間もなく中国に抜かれ世界第3位に落ちることが確実視されている。2009年比で米ドルの金額になるが日本と中国の差は8,416億ドルである。日本経済の世界経済に占める存在感はますます低下することが予測されている。供給過剰である。オフ輪の台数、売上げ伸び率はクロスしていて供給過剰になっている。現時点では従来型の印刷需要が増加したり、下げ止まりを見込んだりできる具体的な検討材料を挙げることが殆どできない。オフセットも同じである。

 
2020年印刷産業のかたち
 10年後の印刷産業のかたちは、ここから先は予測の数字なので皆さんそれぞれ意見、反論も多々あると思う。市場規模は24%減、従業者数は27%減、事業所数は32%減というのが予測した数字である。上位、中位、下位と予測した。上位はかなり楽観的な数字を予測している。下位は反対にかなり悲観的に物事を見た数字になっている。中位の予測ではこのまま従来型の印刷の減少が続いた場合、市場規模は2020年までに24%減少し4.6兆円になる。それを上位予測で楽観的にみると市場規模は8%減で5.5兆円に留まる。悲観的に見た場合は37%減で3.8兆円規模になる。産業戦略デザイン室では中位の予測で話を進めていく。そうすると2020年までの10年間で事業所数は8千社減少、従業者数は10万人減少するという予測を立てた。中位シナリオの場合は従来型の印刷市場の全体は24%減少すると予測をした。しかし、すべて製品が平均的に減少するとは見ていない。製品分野によっては減少しないものもあるし、逆に増加するものもあると見ている。メディアの多様化の影響を受け易いもの、受け難いもの。商業印刷や出版印刷は電子化や人口変動の影響を受け易いので受け易いものに分類している。

 
2020年印刷会社のかたち
 印刷会社のかたちは、中位予測で1社当たりの売上高は12%増になる。1社あたりの従業者数は8%増になる。1人当たりの売上高は4%増となる。生き抜いているのは現在の70%であると予測をしている。どういう会社が生き残っているかというとメディア環境の激変に対応している。従来型の印刷ビジネスの過当競争を回避している。ソフトサービス分野に取り組んでいる。生産性を向上させた印刷会社が生き抜いた70%の中に入っていると予測している。
 グーテンベルグによる印刷機の発明以来のメディア変革期を我々は迎えていると捉えている。長い過渡期の中で過当競争もしているが、物凄いグランドシフトを迫られている。既にメディア環境、コンテンツ流通、人口変動すべて大きく変わりつつあるし、変わってしまったものもある。これは良い悪いではない。構造の変化がされている。構造変化に対し構造変革ができるかどうかが生き残れるかどうかである。印刷ビジネスで培ったノウハウと地域との繋がりがあれば生き残れると考えている。変化を的確に捉えてお客様に必要とされ続ける。そういう会社の将来像を描いていただければと思っている。

 
ソリューション・プロバイダーへの進化
 ここまでは厳しい数字の暗い予測の話をしてきたが、ここからが産業戦略デザイン室として考えた本題になる。今までの話はなぜこんなことを考えているかの根拠になる。そこの要因があるからこういうことを考えたということを説明した。ここには9つのソリューショがある。経営、販売、感性価値、クロスメディア、クリエィティブ、プリント、フルフィルメント、海外ビジネス、地域活性の9のソリューション分野を9人の委員一人一人が原稿を書いた。今まで暗い話をして来たが、どうすれば良いのかがこれからの話になる。

   
近代の終焉
 今まで話をした分析結果に見られる変化は、私達の中では近代が終ると捉えている。合理化されて来たことが終りに近づいているか、もしかしたら終っているかもしれない。所謂、早い・安い・上手いの部分である。そこがだんだん求められなくなってきたのか、時代にマッチしなくなったのかということである。そこの理由は、なぜ先ほどGDPの話をしたかというとその中の要素の6割を占めているのが第3次産業である。第3次産業が日本のGDPの6割以上を占めている状況の中では、機械化をして今までのように合理化をして、早い・安い・上手いでどんどん過当競争をして、デフレ、過渡期の状況の中では生き抜いていけるわけがない。低成長期にも拘らず、我々は第2次産業であるのでさらなる合理化を今後も続けていき、飛躍的な生産の合理化をすれば、単価の下落、事業所数や従業者数の減少を齎すのは当然である。ここまで分析して予測される変化は印刷産業自体が、近代の枠から脱しないと駄目である。もう一度デザインをし直す。

   
7つの成長戦略
 そこでここに掲げている@グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略、Aライフ・イノベーションによる健康大国戦略、Bアジア経済戦略、C観光立国・地域活性化戦略、D科学・技術・情報通信立国戦略、E雇用・人材戦略、F金融戦略の7つの成長分野は、経済産業省が新成長戦略の中で掲げているものである。現在の経済の低迷を打破するために、経済産業省は国民が必要性を強く感じているにも拘らず実現されていない需要を顕在化させるとともに雇用を創出し日本が本来持つ成長力を実現する。それが最重要である。この重要となり得る成長戦略が7つの分野である。これを印刷産業にどうマッチングすれば良いのか。結論から言うと、この7つの分野を印刷産業で何かをするというのはあまり需要がないと産業戦略デザイン室ではみた。しかし私達が培ってきた印刷全体のノウハウが活用できる余地は必ずこの中にあると思っている。組織のコミュニケーションを円滑にする技術、販売促進の技術、感性価値の創造、メディア・ユニバーサルデザイン、個人情報の管理技術、封入発送等のフルフィルメントなど印刷を中心に発生する様々な関連事業において課題を解決するためのノウハウが印刷業界には既に蓄積されている。その資源を活用すべき時が来ている。

   
ソリューション・プロバイダー
 ソリューション・プロバイダーとは造語であるが、クライアント、社会が抱える諸問題を蓄積した技術やノウハウを持って解決する存在であると位置付けている。簡単にいうとお役立ちである。ソリューションは物事の問題を解決する方法のことである。プロバイダーは接続するという意味もあるが提供者ということである。物事の問題を解決する方法を提供する人、者、会社という意味になる。印刷ビジョンにおける関係性で、今訪れている転換期は技術の革新という生易しいものではない。社会のあり方が根本的に変っている。私達の生活様式もしくは私達より下の世代の生活様式が根本から変っている。それぐらいのインパクトがある変革と捉えている。こうような大転換期に際し、各社が生き残りを掛けて業態変革を成し遂げるために来るべき時代を察知し、業態変革のさらなる先行く姿、ビジョンを描き出していく必要がある。印刷会社の集まりが印刷業界であるように、私達が提唱したソリューション・プロバイダーがたくさん集まるのはソリューション・プロバイダー業界となる。これから話す9つの分野のどこかに特化しても良いし、複数それを取り入れて扱ってもソリューション・プロバイダーである。

 
経営ソリューション分野
 経営ソリューション分野は、主にCSRのことを言っている。CSRは自分の会社だけが利益を追及して自分の会社だけが一人勝をする時代ではない。そこをどのように捉えて逆にどのようにビジネスチャンスに繋げていくかが経営ソリューションという分野になる。

   
販売ソリューション分野
 販売ソリューション分野は、販売については業態変革の中でも多く取り上げられている。私たちが研究をしてきて特に言いたいのは、お客様本位の営業をすべきということである。それは今でもやっているという方も多いと思うが、自社の設備に合ったものをお客様に売るのではなく、真にお客様から望まれているかたちを提供できるかどうかということである。装置産業であるので自社の設備にあったかたちをお客様に提供していく、自社に設備が無いのでそこを避けて通ることがありがちであるが、それでは当然生き残っていけない。

 
感性価値ソリューション分野
 感性価値ソリューション分野は、誰もが見ただけで興味をそそる製品づくりと取られがちであるが、そうではなく心に訴える製品作りができるかどうかである。私達は受注請負産業であるので、お客様から同じものを1,000部作ってほしい、100部でいい、100部ならオンデマンドにする、1,000部ならオフセットにする。1,000部も必要ですか1年経っても在庫で残るので都度提供しますかというものもすべて受注請負であったと思う。ここで言っている感性価値は自分たちで何かを完成させ、自分達で値段を付け、市場に出すことである。

 
クロスメディアソリューション分野
 クロスメディアソリューション分野は、私が執筆した分野である。私が原稿を書いた基になっているものは、総務省が平成20年3月に発表した平成18年度版の情報流通センサスである。平成18年の時点でこの10年で消費可能情報量は33倍になったのに対し、社会に流れる選択可能情報量は530倍になったと書いてある。平成18年の統計でこうであれば平成21年の統計ではどうなっているのだろう。情報が溢れかえっている。情報が溢れかえっている時代、お客さんは企業の発信する情報を簡単に信じなくなっていることが根底にある。我々でいうとお客様のお客様である。そういった顧客に確実に情報を届けるためには何をしたらいいのかを提言書に書いてある。AISCEASの法則がある。A=Attention(注意)I=Interest(興味)、S=Search(検索)、C=Comparison(比較)、E=Examination(検討)、A=Action(購買)、S=Share(情報共有)である。注意を引いて感心をもってもらい、そして検索をして、比較して、検討してもらって、行動を起こしてもらい、共有をする。そういう消費行動に今はなっている。それを我々印刷業界としてどのように捉えていくか。そしてクロスメディア化していくかである。
 印刷物を作る。テキストがあり、Illustratorで作った図があり、Photoshopで取り込んだ綺麗な写真もある。それをワンソースマルチユースでタグを付けてホームページにする。それを印刷物と一緒に納めた。それを言っているのではない。それは単なるソースの使い回しである。果たしてお客様のお客様が欲しているもの、お客様のお客様に買ってもらわなければお客様は儲からないので、その人達はどういう情報を見ているのか。例えば、ネールアートの店が私のお客様だとする。そこから販売促進をしてほしいと依頼があった。その広告を日経新聞に載せて集客できるかである。ネールアートをする人達は、ほぼ女性であるがどの位の年代か。そういう人達はどういうメディアを見ているかを私達がきちんと提案するということである。10代20代の殆どが見ているメディアは携帯電話である。統計を見ても新聞は見ていない。携帯電話に広告を出して、携帯電話のホームページを作らなければとお客様が思ったら、こちらが提案しなければ仕事が印刷会社に来るかどうかである。クロスメディアはこういうことを言っている。決して印刷物だけを取りに行かない。印刷物が来ることを口を開けて待っていない。

 
クリエイティブソリューション分野
 クリエイティブソリューション分野は、ここの部分はやられている会社は多いと思う。感性価値と被っているので、より広くクリエイティブを考えて、そこをきちんとデザインをして、お客様のディレクションをしてあげる。ディレクションは集客なのか販売促進なのか、そこをこちらから提案をする。お客様が考えてお客様が何かアクションをするということは印刷会社に来るかどうか、そこは疑問である。そこでこちらからどんどん提案をしていく。

 
プリントソリューション分野
 プリントソリューション分野は、ここは是非、提言書を読んでほしい。今まではどちらかというとオフセットでもオフ論でもオンデマンドでも何でもいいが、紙に何かの要素を打ち出してお客様に提供する以外のことを話してきた。そうでない方も絶対いる。そういう方達はどうやっていけば良いのかがプリントソリューションである。

 
フルフィルメントソリーション分野
 フルフィルメントソリューション分野は、ここもやられている会社は多いと思う。ダイレクトメール等を封入封緘して、一手に引き受けて全部やる。ロジスティックの部分である。お客様の倉庫代わりに使ってもらう。やっているところは多いと思う。

 
海外ビジネスソリューション分野
 海外ビジネスソリューション分野は、全印工連が経済産業省からの働きかけで3ヵ月間、印刷産業の海外展開の需要促進の事業を受諾した。昨年1月までにアメリカ、ブラジル、中国、インドの市場調査をした。全印工連ですべてはできないので日本総研に委託をした。その報告書をデザイン室で繙きながら見た。ここで特筆すべきことは新興国、BRICsにおける日本の印刷技術の将来性について書いてある。調査をする前はかなり高い確率で進出の可能性があると捉えていた。印刷物を海外から受注して海外に納めることは殆どしていなかったので、そういった可能性があるかを調査した。かなり高いと踏んでいたが、逆であった。一昨年の段階では新興国は品質があまり良くないと思っていたので確率は高いと捉えていた。それが昨年調査をしてみたら品質についてはかなり高いレベルにあり、殆ど可能性がないという調査結果が出た。そこに対してどのような働きかけをするかは、今までの受注請負を日本でなく海外に求めるだけでは、日本と同じようにチャンスはない。自分たちで商品を作って海外に輸出するような手立てがなければ、日本と同じ状況下になる。

 
地域活性ソリューション分野
 地域活性ソリューション分野は、多くの地域で少子高齢化、核家族化の進展、公共投資の削減で、住んでいる地域に元気がない現状がある。そういうなかで地域のニーズに対応したメニューを国はかなり用意している。今までは行政は何かの求めに対して受けてくれる立場であったが、ともに共生していかなければ、何か作り出していかなければ何も生まれない。税収が上がらなければ何もすることができないので、それを官民一体となって行う。

 
企業の継続性・競争力強化
 ここから先はソリューション・プロバイダーの位置付けでなく、将来に向けて生き残ることができる企業の継続性と競争力強化の推進について提言している。@業態変革を推進するときの到来、A経営理念の共有、B戦略的経営、C経営資源の最大活用である。

 
組合に関する戦略
 組合員数が減っていっている。組合員が組合をどう変えていくのか。よくメリットがないからやめるという人がいるが、自分からメリットを作らなければメリットは何も生まれないと思っている。どうやって業界を活性化していくかは各社それぞれの考えがあると思うが、中小零細企業であるので皆で一緒に手を取り合って業界を良くしていかなければと、私もデザイン室でも思っているのでこういう提言を書いた。
 シンクタンク機能として、M&Aは産業戦略デザイン室が立ち上がって直ぐ、全印工連すべての組合員にM&Aに関するアンケートを送った。約6,000社に送り589社から回答があった。約10%の回答であった。回答を得た平均値は売上額が9億8千万円、社員数が44.3人、社長の年齢が56歳であった。質問内容は@後継者は決定しているか、A現在事業継承対策として行っていることはあるか、BM&Aに対してどのようなイメージを持っているか、CM&Aに興味があるか、D実際にM&Aや業務提携をしているかである。特筆すべき結果は、売り手として興味があると回答した会社が61社あった。平均売上げが9億8千万円なので約600億円あることになる。回答率が10%であったので乱暴な計算であるが10倍すると6,000億円になる。売り手、買い手に興味があると回答した会社が143社あった。先ほどと同じロジックで計算すると1,400億円になるので10倍すると1兆4,000億円になる。売上げの平均が9億8千万円なので現実味のない数字になる。これを9億8千万円でなく5億円、4億円、3億円であったとしても相当な金額になる。M&Aというのは印刷会社と印刷会社が結び付くとは限らないので、これだけの取引額が他の業界に流れてしまうことも考えられる。後継者が決まっているかの質問があったが、殆ど決まっていない。廃業を考えているという会社がかなり多かった。ということは、その数字がすべて抜けてしまうことになる。乱暴な計算をしているが危機感を煽っているのではなく、そこを流出させないように私達で何かをしようということを言っている。M&Aは自分達には関係ないということではなく真剣に取り組むべきであると提言している。M&Aに関しても組合がやるべきだと提言している。
 プランニグ機能では、例えばJAGAT等と事業の提携をする、教育の機会を均等にする、委員会の恒久的にやってきたことの改善などを全印工連、各県工組に提言している。
 リード機能では、DTPや業務管理ソフトウェアの販売、Webサイトを使った仕事交流、各県工組の事務局機能の請負、東印工組との事務局機能の連携、都道府県印刷工業組合のM&A、印刷産業他団体との合併、信用情報集積と提供、事務局員の少数精鋭などを提言している。

 
結び
 概略だけを説明したので詳しくは提言書を購入して読んでほしい。また岐阜大会の報告書にも提言の説明やパネルディスカッションの内容が載っているので併せて読んでもらえればより理解が深まると思う。

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