CSRは生き残り戦略
第16回北海道青年印刷人フォーラム
 第16回北海道青年印刷人フォーラムが、9月4日午後1時から札幌市白石区のアクセスサッポロで60余人が参加して開催された。
 今回のフォーラムは、印刷業のCSRをテーマに、江森克治全国青年印刷人協議会議長、影山摩子弥横浜市立大学CSRセンター長、大和繁樹北海道印刷工業組合青年部事業委員長の3人から講演が行われた。

 第1部は、江森克治全青協議長が、「永続可能な経営へ」をテーマに講演を行った。
 江森議長は、古代、中世、近代という時代の大きな括りが変わるくらいの大きな変化がやってきている。人々の考え方、生活スタイル、情報発信の仕方などすべてが変わる中でゲームのルールが変わっている。1つ前の時代のルールでは中国が圧倒的に強く、日本は勝てない。日本の印刷業は次の時代のルールを作り、次の時代のゲームを始めなければならない。業界が1つになって取り組むことで印刷業の永続を図ることができるキーワードとしてCSRを挙げた。印刷需要は残念ながら確実に減る。コミュニケーションの仕方が変わるのだから当然だが、印刷業の基本的なビジネスモデルは明治期以来変わっていないので、皆どうして良いのか分からない。我々は次の印刷業のルールを作るうえでCSRを通して時代や社会の要求を知り、答えを見つけることができる。また、我々がやりたいことを行政にもぶつけて行くことで時代を動かして行くことができる。全青協では今年度の活動でCSRの基礎的な理解を促したうえで、印刷業界版「CSR認定制度」の構築などにも繋げて行きたいなどと説明した。
 第2部は、影山摩子弥横浜市立大学CSRセンター長が、「印刷業の明日のために〜感性の時代の経営戦略〜」をテーマに講演を行った。
 影山教授は、[1] 印刷業を圧迫する時代の変化として、新興国の追い上げ、先進国内ニーズの多様化、情報化により物理的印刷需要の低下、構造改革による地方の疲弊をあげ、第3次産業が肥大化し、工業化社会が終焉した。印刷業は産業構造の大きな転換期に立たされている。時代の変化に対応し、新しい発想を生むのにはCSR(Corporate Social Responsibility =企業の社会的責任)が有効である。[2] 生き残り戦略=CSRして、CSRは社会を見ようというメッセージである。社会のニーズを機敏に捉えて印刷業は発展してきた。CSRを通して社会の声に耳を傾けることで対応策が明らかになる。全ての企業は社会の中で活動し収益をあげている以上、社会のニーズや期待に応えなければ生き残れない。CSRは経営指南の格言であり、生き残りの戦略である。企業の不祥事は社会の不利益であり、社会の糾弾を受ければ経営危機に陥る。不祥事は意図的なものだけとは限らない。コスト削減、品質アップを要求する市場圧力、生産者や取引相手からの圧力、競合相手のと激しい競争などの企業環境の中でリスクマネジメントを欠くと意図せざるミスによって経営危機や倒産に追い込まれる危険がある。CSRに込められたメッセージは、情けは人のためにならずと三方良し(売り手良し、買い手良し、世間良し)の2つがある。CSR経営のための要点として、経営状況から業種業態を決定、ステークホルダー(利害関係者)のニーズ(顕在・潜在・未形成)や期待を把握、経営資源や理念に照らして取組みを決定、ステークホルダーに効果的にアピールする。CSRの種類はコンプライアンス(倫理法令順守)、品質、雇用・安全衛生、情報セキュリティ、環境・社会貢献がある。今は同業他社を真似ても上手く行く時代ではない。[3] 時代を捉えるとして、時代が求めるものとして、今までは「早い」「安い」「きれい」への対応で伸びてきた。これからもこれで伸びるところはあるが、時代は感性価値への対応が迫られている。これにはコンサルティング業務への取組みや地域志向が必要であり、自社のドラスティックな改革が必要な場合もある。[4] 地域志向の意義として、地域には、顧客、取引先、従業員、地域住民、地方自治体など多くの関係者がいる。地域に根付いた事業活動を行う中小企業にとってCSRの取組みでは「地域志向CSR」が要となる。地域に貢献する企業は地域に支えられる。地域志向CSR企業の存続は、地域社会の存続発展に繋がり、企業と地域がともに支え合う構図が成り立つ。地域を支える企業を目指すことは共同体戦略である。地域活性化は生き残りのための経営戦略の1つである。地域に根付いた中小企業が多い印刷業は地域活性化の鍵になり、印刷業の経営戦略における「地域志向CSR」の可能性は高いと説明した。
 第3部は、大和繁樹北海道印刷工業組合青年部事業委員長が、「印刷業におけるコンプライアンス」について講演した。
 大和委員長は、コンプライアンスの定義、企業におけるコンプライアンスについて説明し、コンプライアンス違反の事例を紹介した。その後で、北海道公害防止条例、札幌市環境基本条例について説明し、印刷業の公害対策として汚水、振動、騒音、悪臭の規制と対応について説明した。

BACK