印刷燦燦
ブランド
副理事長、教育・労務・環境委員長 飯村 俊幸
飯村印刷株式会社代表取締役
 先日、得意先のホテルに伺った折、バックサイドの廊下に貼ってある上半期のスローガンが目にとまった。大書して曰く『磨こう○○○○ブランド』。ホテル業界にとって札幌は全国有数の激戦地である。各ホテルともライバルに対してアドバンテージを保ち、ハード・ソフト両面でより顧客満足度を上げるために日々腐心している。だからブランドを確立するのは勿論、時代のニーズに合わせて常にそれに磨きをかけなければならないのである。
 印刷会社にもブランドは必要である。何の特長もない印刷会社というのも少ないかもしれないが、何かに秀でて際だった定評を得ないと価格でしか勝負が出来ない。定評すなわちブランドである。
 京都府印刷工業組合では、“京都”をブランドにし、組合員が知恵を絞って京都らしい色、京都らしいデザインをユーザーにアピールしているそうだ。成果の程は聞いていないが京都そのものが既に世界に冠たるブランドであり、うまく便乗活用したものだと感心させられた。京都の印刷会社にしか出来ない歴史に培われたノウハウがそこにぎっしり詰まっているという強い印象をユーザーに与える。
 では、一般の印刷会社がブランドを作る普遍的な要素は何だろう。いろいろご意見もあろうが、私は、(1)企画・デザイン力(2)超高品質(3)短納期(4)特殊技術の4つではないかと思う。単独でも、いくつか複数の組み合わせでも良い。などと思いを巡らせている内に、おっと待てよもう一つ加える必要があるなと気がついた。それは(5)ワンストップサービス力である。これから、官公庁では民間への業務委託がますます増加するし、民間企業でも効率的なアウトソーシング化の潮流は早まりそうだ。だとするならこれははずせない。その辺を鑑みて全印工連でもこの理念を時代を拓くキーワードにし、これから力を入れて広く周知啓蒙しようとしているのはご存知のとおりである。
 先日、某得意先のホテルから祝賀会の印刷物の注文を頂いた折、「御社で芳名帳とサインペンも用意して頂けますか?」と問われた。いくら何でもこれは文房具屋さんの領域でしょうと丁重にお断りさせて頂いたが、後でこれも小さなワンストップサービスかも知れないと苦笑した。印刷会社に対して何の疑問も持たずそのような要求をするお客様がいるという現実にも驚くが、普段気づかないささいな業務が案外立派なワンストップサービスになり得ると思う。常識をかなぐり捨て顧客の喜ぶ顔見たさに知恵を働かせたいものだ。
 さて諸賢は何を以ってブランドを確立されているのであろうか。
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