印刷燦燦
室蘭の三つの味

理事・総代・室蘭支部副支部長 寄木 清二
株式会社不二プリント印刷所代表取締役社長

 室蘭はいま、二つの味とユーモラスな鉄に熱くなっている。いずれも「全国区」を目指してブランド化しようという試みで、成果も着々といったところ。室蘭に来たなら、いや、“この味な三つ”に会いに、ぜひ室蘭を訪れてほしい。
 一つ目の味は「室蘭やきとり」。豚の精肉と玉ねぎを交互に串に刺して炭火焼きし、洋がらしをつけて食べる。各店は秘伝のタレを競い合っている。豚が何で焼き鳥に化けたのか。正直なところ、確かなルーツを知っている人はいない。それほど、室蘭における焼き鳥の歴史は古い。戦後、食料事情が悪かったころ、鶏肉よりも豚肉のほうが手に入りやすかったから、と説明する地方史研究家もいる。鉄のマチ室蘭は、昔から労働者のマチだった。仕事帰りにのれんをくぐり、塩分を少し濃いめにした焼き鳥でコップ酒をあおる。庶民のマチの風情だった。
 その“うまさ”に気付かせてくれたのは、室蘭に来た転勤者たち。「こんなにうまくて安いものがあるのに、どうして室蘭の人はもっと宣伝しないの」。ブームの火付け役のマスコミがこぞって取り上げ、あれよあれよという間に全国に広まった。2001年の事業化から今年5月までに通算6万個を販売。最近は10カ月に1万個のペースで売れ続けている。
 二つ目の味は「室蘭カレーラーメン」。室蘭やきとりの人気を目の当たりに「負けてられん」と発奮したのがラーメン屋さん。「カレーラーメン」は現在、室蘭市内にあるラーメン店約50店の6割がメニューに載せている。道内でこれほど「カレーラーメン」がポピュラーなのは室蘭が一番なのだそうだ。今、なぜ「カレーラーメン」なのか。記憶にあるのは8、9年前、室蘭出身の「モーニング娘。」の元メンバー、安倍なつみさんが、なじみの店のカレーラーメンのことをラジオか何かで話し、ファンがその店にやって来ることを、室蘭民報が記事にしていた。以来、新聞や雑誌などで室蘭カレーラーメンがちょこちょこ取り上げられるようになった。そうした“胎動”を経て昨年4月、約20店が大同団結する「室蘭カレーラーメンの会」が発足。中小企業庁の06年度のブランド化支援事業にも採択され、約900万円の補助金で「食べ歩きMAP」やのぼりを作製するなど、宣伝に努めている。
 個人的には、室蘭カレーラーメンの魅力は、あまり辛すぎないコクのあるとろみのスープが少し太めの麺と絶妙に絡み合い、口中で融合するところにある。辛すぎると、途中から口の中が火事になり、味わうどころでなくなる。最初の味わいが最後の一口までバランス良く続くのが、正しいカレーラーメンの選び方だと思っている。
 三つ目の「ユーモラスな鉄」とは、ボルトの人形、名付けて「ボルタ」のこと。ネジのボルトとナット、ワッシャーが材料。ボルトを手足として曲げ、顔はナットにボルトのプラス・マイナス部分を目としてハンダで付け、高さを5cmほどのさまざまなポーズの人形に仕上げる。この、ポーズが何ともユーモラスなのだ。足を折り曲げて平身低頭している「ざんげ」や「鉄ちゃん走り」「逆立ち」、さまざまな楽器の演奏やサッカー、スノーボードなど、ポーズは実に多様。その数は100種に近い。1個500円で販売されており、昨年11月には「ふるさと小包」にもなった。
 室蘭のマチづくり市民団体「てつのまちプロジェクト」が、鉄をテーマにしたイベントで、体験溶接として市民に作ってもらったのがきっかけ。昨年春から製造販売を始めた。すべて手作りとあって量産できず、月初めに100個程度を売り出すとその日のうちに完売する人気ぶり。そこで今年6月、新たな工房を立ち上げ、量産体制に入った。同時に工房見学や製作体験もできる。
 鉄のマチ室蘭にはぴったりの、新しい鉄の文化が育ちはじめている。室蘭へ一度どうぞ。

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