「業態変革推進プラン-全印工連2008計画」第3ステージ『新創業』
北海道印刷工業組合副理事長 花 井 秀 勝氏
 昨年10月に発表になった「業態変革推進プラン-全印工連2008計画」第3ステージ『新創業』についての説明会が、全印工連業態変革推進企画室副委員長であり北海道印刷工業組合副理事長の花井秀勝氏を講師に、3月2日午後1時から札幌パークホテルにおいて90余人が出席して開催された。
 以下、講演の内容の抜粋を紹介する。   (文責:編集部)

大きな環境変化-4つの潮流-

 昨年10月に業態変革・第3ステージ「新創業」を発表した。新創業という言葉は、国では第2創業という言葉で中小企業庁、国民生活金融公庫、中小公庫などが使っている。従来やってきた業態の仕事を21世紀になって大きく変えていこうという国の施策の一つである。そういったことで施策や法律上の面の変革も大きくなってきている。
 特に大きな環境の変化に4つの潮流がある。国際化、高度情報化、少子高齢化、成熟化と言われている。国際化ということではこの10数年外資が物凄い勢いで入ってきている。保険での印刷の市場の変革は物凄く大きくなってきている。従来の営業を使って1件1件歩くところからネット、テレビ、新聞一面広告でコールセンターを使うという大きな変わり方をしている。観光ということでは日本に観光を誘致しようということで観光のいろいろな印刷物がどんどん出来ている。多言語の印刷物が非常に多くなってきている。こういった面でも非常に大きく印刷が変貌している。北海道も観光都市であるのでロシア語、韓国語、中国語、英語、そういった言語で対応する仕事が非常に重要になってくる。高度情報化でe-Japan戦略がある。この中にはモノクロの印刷物は官公庁からはもう出さないとはっきり書かれている。少ロット多品種からもう少し進んだ必要な時に必要な部数のオンデマンド印刷でいいと書かれている。モノクロからカラー化に移行していくことが2001年の方針の中で明確に出てきている。そういったようなことをきちんとわきまえて行動していかなければならない。高度情報化ということで、いろいろな印刷会社の新しい動きが出てきている。京都にある印刷会社はネットだけで受注が既に30億円ある。札幌からも発注がある。札幌の幾つかの会社は印刷物を京都に発注して京都から納品を受けている。このような形でe-Japan構想の中には大きな仕組みが隠されている。2011年に地上デジタル放送に変わると従来のメディアの使い方が大きく変貌すると思われる。今年から始まる実験的なところではシャープのデジタル放送ではチラシがそのままテレビで見ることが可能になる。数年後にはそこで受発注が出来、各店からデリバリが行われる。成熟化、少子化という中でマーケットがどんどん縮小して行く。国でも今の人口規模では情報化投資が出来ないので市町村合併を推し進める。市町村合併が増えれば増えるほど1市町村から出る印刷物は確実に減る。秋田県のように市町村合併で自治体が半分になる県もある。印刷業界ばかりでなくどの業界でも合併等いろいろなことが起きている。喫茶店では、従来型の純喫茶という店を今は街の中では殆ど見かけない。昭和55年には全国に喫茶店が15万店舗あったそうである。平成16年の統計では8万3千店で約半分に減っている。生き残りの中での業態変革が進んでいる。ドトールコーヒー、スターバックスがある。ここは席数も多い、煙草は吸えない。本来、喫茶店はサラリーマンがコーヒーを飲みながら週刊誌・スポーツ紙を読み煙草を吸い一服をするところであった。ここも印刷業界と同じく料金に格差がある。180円のコーヒーもあればホテルで飲む800円〜1,000円のコーヒーもある。中には1,500円のコーヒーもある。業態が半減するところに異業種が必ず参入する。ネット喫茶はコンピュータ関係の方々が喫茶店をやっている。マンガ喫茶もある。コーヒーだけでは駄目なので、専門的に日本茶だけのカフェや中国茶だけのカフェが出来ている。

大きな環境変化-3つの変化-
 主役、競争相手、速度も非常に大きく変革をしてきている。主役は企業から顧客、要するに市民に変わってきた。企業のコンプライアンスもある。競争相手はどんどん変わってきている。地域の同業者だけではない。東京には中国の印刷会社の営業所が30数社ある。従来の競争相手に加えネットが使われている。プリントショップというコピーで印刷をするところがある。4つの潮流と3つの変化がある。
業態変革第1ステージ
-印刷会社が持つべき最低条件-
 全印工連ではどのようにプランを出してきたかというと、第1ステージは業態変革ミニマムで最小限機能の実践。第2ステージは原点回帰。第3ステージは新創業、ワンストップサービスである。
 第1ステージの業態変革ミニマムでは、印刷会社が持つべき最低条件である。規模や業態に関係なく、個々の企業が最小限実践しておかなければならない機能がある。先ずIT基盤整備、この中ではe-mailが出来なければもう退場してくださいと国は言っている。今、7,600万人の国民がe-mailを使っている。皆さんもしくは皆さんの経営者、経営幹部の方はこういったものを使ってビジネスをやっているかということが一番重要なポイントとなる。IT基盤はメールをきちんとやっていかなければならない。2001〜2002年に国は膨大な予算をかけて国民にIT教育を行った。コンピュータをどうやって上手く使いビジネスをするのかということが一番大事なところである。JDFをどうのこうのということではなく先ず身の回りの出来るところからやるということである。
 経営戦略、経営計画とマーケティングである。1年後、3年後、5年後くらいまでの経営計画書をきちんと書いているか。何故、経営計画書は必要なのか。国や銀行からお金を借り入れる時に経営計画書が無ければ貸してもらえない。それは銀行の合併でもっと厳しくなる。経営戦略や経営計画がきちんと作れる会社と作れない会社を差別するのではなく区別をするのが国の方針である。マーケティングというと難しいと思われるが、企画提案をきちんとやるということである。お客さんのところに行ってただ原稿をもらってくるのではなく、ちょっとした企画を持って行くことが必要である。機械設備は高価過ぎて8時間や10時間回していたのでは償却はできない。24時間回さなければならない。有効に機械の共有化をして行こうということである。1つは名古屋を中心にしたメディアフロンティアのグループがある。ここでは160台のオフ輪をネットワークで持っている。通信で仕事を送り、空き状況も分かるようになっている。都市部に集団化していく方向が片方にはある。拠点都市法が作られ30万人以上の都市に拠点が作られてくる。印刷の出荷額も東京圏、近畿圏、東海圏の3地区に65%以上が集中している。共創ネットワークもこれからますます必要になってくる。
業態変革第2ステージ
-原点回帰と7keys-
 第2ステージは原点回帰と7keysである。原点回帰の意味が分からないという人が随分いたと聞いている。次のステップに向かうための投資原資の確保である。原点は本業と現在の2つの意味がある。本業は本来の印刷業として、生産性と収益性の上がる本業に立脚する。現在ある業態を再度見つめ直す必要がある。今のままの印刷業態で本当にいいのか再度見つめ直してほしい。機械も含めて全部である。このことから第2ステージが始まっている。原点を把握するための経営ツールに7keysがある。2つは経営戦略で20項目、2つは営業戦略で10項目、3つは生産戦略で15項目、4つはIT基盤整備で5項目、5つは環境対応・安全安心で5項目、6つはソフト化・サービス化で5項目、7つはコラボレーションで5項目ある。こういったようなことを項目ごとにやってほしいということである。先ず経営者がやり、次に経営幹部がやり、全社員がやる。本来は一緒であれば一番いいが、経営者と社員の意識の違いが明確になる。違うところのブレをどうやって直していくのかが重要なポイントになってくる。経営者と社員の意識が同じになることによってワンレベルアップになる。それは顧客満足の最大化を図る必要があるからである。
 次にオフェンスとディフェンスである。7keysの中では経営者自身のこう成りたいということを書き込んでくださいという提案をした。経営者がこういう方向になってみたい、こんなことをやってみたい。5年後売上げを10億円にしたい、社員を40人にしたいなどいろいろな目的がある。そのためにはどんなことをしていくのか。まず経営者のあるべき姿、最終目標を立てる。50歳で引退する、60歳で引退する、70歳で引退する。そこまで何年あり、どのような形でやっていくのかを明確にする必要がある。それが社員全員にはっきりと伝わっているかどうかである。山口の全国大会の時にモデレーターという形で若い経営者の方と話をした。その時に私は今年の8月末で社長を引退することを言った。会社では数年前から言っている。そのためには何と何をしなければならないのか。次に自分は何をするのか。経営者自身の思いが明確に社員に伝わるということが必要である。
 変化とは変わることである。これは自分自身ではなく対外的なことに対応していくことである。変革は自分自らが変わっていかなければならない。7keysでは経営者のやる気が如何に必要かということを明確に打ち出している。経営者のやる気があるかないかによってその企業の進み具合がかなり違ってくる。
業態変革第3ステージ
-新創業と5Doors-
 第3ステージは新創業である。起業家精神を取り戻す。皆さんは当然起業家精神を持って事業を興した。2代目、3代目と後を継いだ人も同じである。新創業は国でも言っている。同じ事業をずうっと続けていても成功しない。少しずつ業態を変えないといけない。そこからもう一度起業家精神を持って新創業という第2創業を興してみてはどうかということである。ここには国の支援メニューが数多くある。新連携という法律も出来た。いろいろな企業同志が新しい事業をするための資金融資もある。今国会では企業同志のM&Aの法律もできる。買収に対しても国の資金が使える。今までは企業買収やM&Aは大企業のことであったが、最近は中小企業でも数多く出てきている。
 事業領域を再定義しさらに顧客の役に立つ。事業領域を再定義するポイントはただ一つ、お客様側に立つことである。顧客中心主義。これまでの印刷経営者、営業マンはお客様のところに行って何かありませんかしか言ってこなかった。情報を聞き出せないという反省点がある。後、数年でレンタルビデオのビジネスは無くなる。2011年には今のビデオは見ることが出来ない。ゲオという日本で2番目に大きいレンタルビデオ会社は、まだインターネットにも新聞にも発表していないが、今持っている東海地区の5店舗を食品スーパーに変えて実験を行っている。上手く行くと札幌にも進出してくる予定と聞いている。従来持っている店舗を全く違う業態へ変革していく。事業の再定義は非常に重要なポイントになってきている。
新創業に取り組む
 新創業に取り組むということの新たな印刷産業の姿は、製造加工業にサービス業を加えた情報価値創造産業である。既に我々の業種は国では製造業からメディアコンテンツ課に移行している。テレビコマーシャル、CD、DVD、テレビゲーム等と一緒になっている。なぜ一緒かというと、テレビゲームを作るコンピュータの90%はアップル社のMacである。印刷会社にある組版、製版のコンピュータは90%がアップル社のMacである。持っているハード環境は全く一緒である。何処が違うかというと使うソフトが違う。従って、もう少し情報産業にシフトして行きませんかということである。それには何処の人員をどうするのかということである。フイルム製版がCTPに変わった。フイルムのレタッチマンは要らなくなった。機械化が進み省力化になると余剰人員が出てくる。片方では人員の少ないところがある。人材教育を行って配置転換をどうするのかである。これは我々の業界だけのことではない。建設会社、土木会社、皆同じである。
 サービス業の必要性である。顧客に求められているものに顧客のウォンツ(潜在的ニーズ)を的確に捉え、利便性を提供するがある。難しいと考えるが、お客さんに求められているものを情報として持っているかということである。国は日本郵政公社を民営化する。日本郵便事業会社が10月2日から出来る。その会社は印刷物を運ぶ会社である。当然、印刷物が増えなければその会社はやって行けない。社員10万人の会社である。そこと何故コラボレーションをしないのか。そこと組んでいろいろなことをできる仕組みを自分達から求めないのか。誰かが作ってくれる仕組みに乗ろうという姿勢が非常に強い。的確に利便性を提供しいろいろなことをやっていく必要がある。
新創業のかたち「ワンストップサービス」
 新創業のかたちはワンストップサービスである。ワンストップサービスとはもともとは行政改革から出てきた国の言葉である。1箇所で全てのものを全部行う。24時間対応の電子申請や電子入札である。ワンストップサービスは昔はデパートがそうであった。地下の食品売り場から化粧品、装飾、婦人服、紳士服、家具等何でもあり、上に食堂があり、屋上に遊園地があった。これがワンストップサービスである。デパートに行くと全ての物が揃った。これが社会ニーズと消費者のニーズにより変わってきて、今はデパートはワンストップサービスの領域から離脱してきている。今現在の新しいワンストップサービスというとモールである。札幌でもイオンモールが幾つか出ている。上に行くのか横に行くのかで、水平展開に移行してきている。買物とか遊びとかいろいろなものが出てきている。ワンストップサービスというものの考え方が浸透してきている。印刷のワンストップサービスはどのようなものか。デザイン、広告、プリプレス、印刷発注等いろいろある。今、顧客はデザインをデザイン会社に発注し、印刷は印刷会社に発注し、梱包は梱包で発注して、広告宣伝はまた別に発注している形である。これを印刷会社が全部受けて入口から出口まで全部やってはどうかということである。一番重要なポイントはデザインになる。デザインに関してはデザイン部門を持とうということである。小規模と小都市はこれが大事なポイントになる。こういったことをすることによって利益の最大化が図られる。
自社に最適なナンバーワンを目指す
 自社に最適なナンバーワンを目指す。ワンストップサービスの前提条件として、独自性を持つ、入口からで出口までお世話をする、アマチュアには不可能な専門家の底力をつけることが必要である。独自性を持つということはランチェスター戦略の弱者の戦略と全く同じである。上に対しては独自性、下に対しては同一化である。上と下の一番近いところには差別化である。いろいろな戦略論がある。その中での独自性を如何に持つのか。当然ながら仕事は入口からで出口までである。
 印刷の領域がどんどんアマチュア化してきている。反対に顧客が専門化してくる。入口から出口までを商業印刷物を想定すると、当然、販売促進、広告宣伝、DM発送まで一手に引き受けなければならない。DMの場合は名簿の入力から発送代行までワンストップで全部出来なければならない。もしくは名簿があったらデータベースで名刺も印刷できる。アマチュアには出来ない領域を行う必要がある。
 ナンバーワンを目指すというところでは幾つかの印刷会社の事例を紹介する。平林印刷は社員6人で売上げが3億円である。印刷機械の設備は一切持っていない。元々は印刷機を持っていたが数年前に全部出した。会社は今、福井県の吉田郡という郡部にある。名刺に全ての印刷ができますとある。昔でいうブローカーである。営業だけに特化している。ただし、デザインと仕組みが凄い。1つの印刷物からマルチユースで、ありとあらゆるものをやっている。社員6人の内、デザイナーが2人、営業が2人、梱包が1人、経理が1人である。お客さんの販促に必要なものは全部この印刷会社で揃う。自社で設備を一切持っていないので全て同業者とのコラボレーションである。京都にある片岡印刷は、1,600坪の土地と建物と機械を全部売却した。企画とデザインに特化して、後は全て地元の印刷会社にお願いしている。最近、自社に合わせたこういったような形が出てきている。名刺からカラー印刷まで何でもやらなければならないということで機械をフルに揃えて、機械が古くなるとリプレースしていると非常に苦しくなるというのが現状である。それは成熟化した社会でマーケットが減少しているからである。5年、10年するともっと明確なところが出てくると思う。
新創業へのチェックポイント
 新創業へのチェックポイントは、顧客が基準、コラボレーション、創業者精神に加え情報公開もある。情報公開はその企業がどのような形に変わっていくのか、どういう方向に進んでいくのか、そこの競争相手はどういう形をしているのか、どういうようなところなのかということである。得意先に対して明確なものを持っているか。売上げ主義になっていないか。どういうお客さんと付き合っているか。経営者、経営幹部の人、一般社員の人はどのような形でコラボレーションをしているか。得意先では3年後こんなことを考えているとかいろいろなことが分かる。それが分かってこないとワンストップサービスは出来ない。従って、今以上に顧客との関係をきちんとしていこうということである。コラボレーションは今さら言うまでもなく、今までだと仕事は仲間内で回していた。このレベルをもう少し上げていこうということである。緩やかな業務提携をする。同じ設備を持たないようにする。東京では既に、何社かの工場長が集まって会議を開き、設備の共有化についての話し合いを行っている。最近は営業マンを協働化し共同していろいろな攻め方をする。こういったことが我々印刷業界の中でも出て来ている。200数十社の印刷関連業の方々がコラボレーションで素晴らしい営業活動を行っている。そういうところを見ていると北海道ももっとコラボレーションが必要だと思う。
 同時に、新たにするには創業者精神である。時期的には昨年が一番いいと言われていたが、印刷会社の体質改善のアクセルを踏むなら今だと言われている。アクセルは何故必要かというと日本のいろいろなメディアは2011年という後が決まっているからである。創業者の精神にもう一度立ち返って、今こそワンストップサービスを目指して新創業へ移行してほしいということである。
アクションプラン『5Doors』
 新創業の中のアクションプランが5Doorsである。
 1つは顧客のことを真剣に考える企業体質で、顧客の商品や販売方法、ビジネスを研究しているか。最終目標は顧客満足であるという共通認識があるか。顧客満足もあるが顧客のことをもっと真剣に考える。お客さんにいろいろな提案をするとき、コンピュータというものを如何に上手く使うか。検索機能がどんどん良くなってきているし、グーグルも新しいサービスが始まっているので、いろいろな形で顧客のことを考える。最終的にはフェイス対フェイス、トップ同士、先方の経営幹部とのフェイス対フェイスが重要である。
 2つは社会の大変化の認識と対応である。大変化に対して自社がどう対応して行くか検討しているか。例えば、自治体が合併する時にどのように対応していくのか。得意先が合併したときどのように対応するのか。市の広報紙が大きな動きになってきている。A4中綴じからフリーペーパーに移行してきている。制作・印刷費を広告で賄い、配付もする。自社の設備とネットワークを使い自社のビジネスにどう結びつけるかである。7keysを実施し、自社の弱み、社内のギャップを埋める。会社の中に忙しい人と暇な人がはっきりしていないか。社内のギャップを埋める議論をして行かなければならない。経営者として新しく創業するような覚悟を社内に浸透させているか。時代は変わってきているので社内にどうやって浸透させるかである。私は出張先からでもメールでやり取りをしている。社員60人の日常の行動はグループウェアに載って何処にいても全て分かる。同時に自分の30分ごとの行動を社員に情報公開をしている。この使っているソフトは無料のソフトである。
 3つはより競争力を高める発想である。ライバルを研究している。ビジネスの好循環、おいしい仕事に経営資源を投資している。
 4つは独自性を発揮できる武器である。自信をもって顧客に提案できる強い品目があるか。そういうものを持っているか。各社特長をもって仕事をしているが、独自性の持てるものを必ず持ってほしい。強みのある社外パートナー、共創ネットワークが存在する。強いのは前と後とよく言われている。前の前と後の後が印刷会社は弱い。この部分は社外パートナーとして存在させる。
 5つは新創業への戦略である。ワンストップサービスの出発点は印刷付帯サービスからである。印刷付帯サービスは全印工連の中でも数値的には出てこない。何故出て来ないかというと印刷付帯サービスの部分は、約80%のところが子会社化している。印刷という文字を外し企画提案し、仕事を自社の印刷工場に入れている。ワンストップサービスの到達点は顧客が望む商品やサービスの総合受注である。
戦略を確実にする基礎知識
 戦略を確実にする基礎知識があるか。経営の危機意識は現状の経営に対する危機意識と舵取りの決断である。本気で人づくりをするには、社員教育、人材育成に力を注ぐ必要がある。東京では人は採用できなくなってきている。東海地区だと求人倍率1.63である。東京で1.3である。北海道の場合は低いが、これから少しずつ人が採用しにくくなってくると思う。人は来るが優秀な人は来ない。殆どの企業でほしい人材が来ない。従って、社員教育や人材育成にどれだけお金を掛けるかである。1千万円単位のお金を掛けて育てた人間が2年後に辞めたりする。それに挫けて怠っていたら社員は育たない。10人の内1人が残るくらいである。先行投資としての金の掛け方が必要である。これからは人材の育成に力を入れて行く必要がある。社会の大変化への意識である。世の中はどんどん変わる。一番大きく変わるのは電子マネーである。今はスイカとエディであるが、携帯のクレジット機能付が始まった。そうすると請求書が必要になってくる。それを送る封筒も必要である。クレジット決済は日本では11%、アメリカでは24%である。日本はまだ倍伸びると言われている。中国はクレジット決済ができる人が約6,000万人、もう直ぐ1億人になる。そうすると膨大な請求書業務になる。高度情報化社会の入口から少し入ったところというのが一般的であり、成熟には後50年から100年掛かると言われている。電子ペーパー、ICタグといったものもこの中に入り、社会が大きく変貌していくと思われる。顧客志向の企業力、競合を避ける営業戦術も必要になってくる。北海道でも最近東京に営業所を作った会社が増えてきた。地元で競合するよりも東京のマーケットはどんどん広がっているし、東海地区のマーケットもどんどん広がっている。仕事はある。北海道も札幌市も何故もっと取りに行かないのかと言っている。北海道は丸の内の東商ビルの5階に安価で使える部屋を持っている。ここで商談をすることも出来るし、パソコンの環境も揃っていて、実費でコピーも撮れる。印刷発注の担当者が東京に転勤したら、先ず行ってコミュニケージョンをとり、足がかりを築いて行く。マーケットは海の向こうにある。宝の山のような感じである。北海道はオフ輪は1万枚から刷るが、東京では最低30〜40万枚である。従って枚葉で刷る部分は弱い。入口から出口まで出来るところも少ない。今はそれほどロットも大きくないので、航空便を使ってもそれほど運賃は高くない。違うのは東京と札幌で紙の料金に格差があるということである。強い品目づくりが必要である。
ワンストップサービスの実行
 ワンストップサービスの実行では、得意先を調査する必要があるのではないか。ビジネスモデルの検討も必要である。競合の少ない分野へどっやって攻めるのか。ここを攻めるのは営業だけではない。現場の機械、製本、製版、組版等全部の人が集まって自社でどういった製品にすると粗利が一番高いのかを検討する必要がある。ロットの問題、オンデマンド印刷の問題がある。オンデマンド機はメーカーに言われるように機械を入れて回るものではない。自分のところで商品を作っていかないとオンデンド機は回らない。
強みを発揮するビジネス戦略
 強みを発揮するビジネス戦略は、マーケティング支援業、広告代理業、イベントプロデューサー等々いろいろあるが、中でもプリントマネージャーは最近ヨーロッパで使われている言葉である。プリントマネージャー、プロダクトマネジャーということである。従来の印刷の営業マンを2つに分ける。仕事を取る専門のマネージャーと見積り・工程管理を専門に行うマネージャーの2つに分けるという考え方である。営業の仕方が大きく変貌してきている。ITを詳しく勉強しないと仕事は取れない。ITの勉強もしなければならない、見積りもしなければならない、工程の管理もしなければならない、納品の事も考えなければならない。今の印刷の営業マンはスーパーマンではないかとある業界の人は言っていた。設計の部分を切り離していかないと営業効率は上がらない。
メディアの総合受注
 メディアの総合受注では、従来型、ニーズ対応型、ウォンツ対応型がある。従来型の印刷の前工程、後工程だけで行こうとすると部品の生産化になり最新の設備、24時間体制が必要である。コラボレーション、共創ネットワークでの印刷の受注も含めてである。ニーズ対応型はワンストッップサービスで出発点は印刷物の一貫受注である。付帯サービスであるから印刷の前とか後、企画、制作、クロスメディア、フルフィルメントとして封入封緘まで行う。ウォンツ対応型はこれから印刷会社で必要になってくるワンストップサービスの到着点、メディアの総合受注である。メディアプロデュースは、印刷物にQRコードをつけて、従来だとホームページや携帯に行くだけであったが、動画配信が始まってきている。数年後にはQRコードを使って動画を見せていく手法が印刷の主流になってくる。紙メディアを使いながら他の媒体に移行していく。ここには設備投資が殆どない。ソフトを買い人材教育のみである。こういった形の企業が全国でぼちぼち現れてきた。将来的に印刷業としてメディアの総合受注をするのであれば従来型、ニーズ対応型、ウォンツ対応型の幾つかの戦略がある。こういったようなことを全印工連2008計画の中の業態変革推進の第3ステージということで説明した。全員が同じことをするとまた価格競争に巻き込まれるので、設備等を変えて行きながら皆さんのビジネスに役立てていってほしい。

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