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環境保全とダブルスタンダード

常任理事・札幌副支部長 川越  仁
川越製袋株式会社代表取締役社長

 日本製紙が3月22日に公式に発表した「再生紙ラインナップ再編成」の資料が手に入り一読した。まず目を引いたのが「古紙100%の再生紙は抄造しない」設備、品質、環境、諸外国の古紙需要の大幅な伸びなど多角的な見地から100%再生紙をラインから外すこととしたらしい。
 上質は70%の古紙配合、A2、A3コートは配合率が30%となる。グリーン購入法に定められた数値を当てはめると上質紙は適合、コートは適合除外となる。かたや王子製紙は100%再生紙を今後も継続して抄造するらしい。
 日本製紙はさらに地球環境への負荷を下げるべく基準斤量の軽量化も合わせて発表した。今のところ4品目だが現行の斤量から6%の軽量化となる。日本は京都議定書を批准、2005年にすでに発効し、目標は1990年比で6%のCO2削減だ。この目標を達成するためのアクションプラン「チームマイナス6%」からとったネーミングでこの軽量紙はT―6品と称する。
 100%再生紙の選択肢がなくなり、品目は少ないが需要の多いリサイクル上質とリサイクルコート、マットが軽量化される。現行64gの用紙が60gとなるわけだ。
 この2大メーカーの対応の違いに戸惑いを覚えるのは私だけではないだろう。環境保全は本来全ての製紙メーカーや需要家を統括する組合代表などでメンバー構成して、エコロジーの観点から現有の設備で何が出来るかを協議したうえでスタンダードの変更を決めるべきではないだろうか。コンセンサスを図ってこそ、その効果が相乗的に増す。
 たとえ一部銘柄とはいえどちらにしても山は動き風穴は開くわけだ。今後他の製紙メーカーの動向に注目したい。
 これで当分はダブルスタンダードとなることは否めない。
 紙は文化のバロメーターと言う。またインドや中国のGDPの伸びを見ると紙消費量は今後爆発的に伸びるだろう。たとえIT化を促進して紙需要を抑制しても8億人と13億人と言われる両国の経済発展に伴う需要増は明らかだ。
 日本の紙需要だけでも失われる森林面積は四国とほぼ同じ面積になるらしい。
軽量化を行うことは植林木とはいえ森林資源を守り環境負荷を下げる。省資源と森林による二酸化炭素の吸収も促進される。軽量化に伴うデメリットもあるが、温暖化のスピードは想像以上だ。自国経済を考え批准しなかったアメリカも今回の日米首脳会談では環境問題を取り上げると聞く、いよいよ座して模様眺めは許されない局面かもしれない。
 さて、グリーンプリンティング認証を千歳印刷様が道内第一号として取得された。今後GP認証取得を目指す会社もある。また認証を取らない会社もグリーン購入法に基づいた営業や、使用している資材の見直しを図り、組合が環境保全を明確な意思として官庁や一般ユーザーに伝える。こんなことが出来れば社会性が増すと思うがいかがだろうか。

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