座談会
なぜ上がる印刷用紙「洋紙値上げの背景を聞く」
 今年に入り、印刷の主材料である用紙が二度にわたり価格改訂が行われようとしていることから、印刷業界の現況を理解いただき、価格改訂に至る背景と理由を聞き、エンドユーザーに対する説明ができるように、北海道印刷工業組合、製紙メーカー、紙流通の方々で座談会を開催した。

出席者 岡 部 康 彦 北海道印刷工業組合理事長
西 山 恒 夫 北海道印刷工業組合副理事長・札幌支部長
角   鎮 夫 北海道印刷工業組合副理事長・十勝支部長
川 越   仁 北海道印刷工業組合常任理事・札幌副支部長
市 川 州 一 北海道洋紙代理店会会長
高 橋 清 剛 北海道洋紙同業会会長
鶴 見   敏 王子製紙株式会社北海道営業支社長
建 石 樹 夫 日本製紙株式会社北海道営業支社長
司 会 伊 藤 克 義 北海道印刷工業組合専務理事
道内印刷業界の現況
洋紙流通業界の現況
2度にわたる洋紙価格改訂の背景と理由
価格転嫁できない印刷業
紙流通からみた印刷業界
組合員のモラルと結束
印刷会社と紙メーカー・紙商は一心同体
なぜ高い北海道の紙
価格改訂は行われているのか
北海道価格は解消できるか
道内印刷業界の現況
司会  最近の道内印刷業界の景況や需要動向は、どのようになっていますか。
岡部  少しでも業界が良くなるようにこのような座談会を開かせてもらった。
 北海道の工業統計で、平成10年と平成16年を比較すると出荷額は平成10年が1,973億円、平成16年が1,568億円と約400億円減少している。
 印刷工業組合員の数値では、平成10年と今年平成18年の調査で、平成10年に組合員数は400社、従業員数は9,138人、出荷額は1,375億円、平成18年は組合員数が322社で78社減、従業員数が7,053人で2,085人減、出荷額は965億円で410億円減となった。
 最近の資料をみると、企業間格差はかなりでている。平成17年度の資料では、組合員322社の中で、売上げ増が58社(18%)、減が188社(58%)、残り76社(24%)が変わらないとなっている。2極化が現れている。伸びた企業は道外、特に東京方面にマーケットを求めて行き、東京の仕事を北海道へ持ってきているのが、一番の理由だと感じている。何故こんなに売上げが落ちているのかというと、需要の減退、価格競争の激化が一番の原因ではないか。
洋紙流通業界の現況
司会  洋紙の流通業界も企業統合等再編が相当なスピードで進んでいるようですが、洋紙流通業界の現況をお聞かせ願えますか。
市川  このような座談会を開いていただきありがたい。私どもも、こういった率直に意見交換が出来る場が今後も必要ではないかと思っている。
 印刷業界の数字を聞いても、紙の関係の統計数値を見ても、お互い厳しい状況にある。今の置かれている状況を少しでも改善していく上で、双方が協調関係を築いていく必要があると思う。
 紙の流通業界の現況については、北海道洋紙代理店会には8社加盟しているが、この1年半の間に合併により2社が減った。流通の再編は70年代前半を境にあまり目立った動きは見られなかったが、近年は規模の大きな合併がいくつも誕生するなど流通の再編成は急速に進展している。
 その背景には、製紙メーカーの大型合併の流れの中で、系列代理店の集約化が進んだことや伸び率の鈍化した市場でのシェア争いによる市況悪化、ニーズの多様化に伴う物流コストの肥大化、さらには経営体質改善の遅れなどで、代理店自体が疲弊してしまっていることがあげられる。代理店の再編に関して言えば、競争力強化というより、厳しい業界環境の中での生き残りと言った方が現実味を帯びている。
 洋紙市場の動向については、国内需要の構造的変化と市場のグローバル化の視点で触れてみると、国内の洋紙需要は、電子メディアの台頭で出版分野が低迷を続けており、雑誌などでは前年割れが恒常化している。
 一方、商業印刷分野は、チラシ類などが堅調に推移し、全体としては前年を上回る伸びが続いている。しかしながら、平成18年上期の代理店紙販売数量の前年対比では、全国101.5%に対し北海道は97.5%で、全国では北海道だけが前年割れの状態で、地域格差がみられる。
 輸入紙は、今や国内市場で塗工紙の10%を占めるまでになっており、為替や市況変動での一時的減少はみるものの、今後さらに増加傾向を辿っていくと思われる。こうした背景と同時に、印刷用紙市況は、東南アジア圏内で同一化に向かうことが予測され、紙流通も今まで以上に、厳しい価格対応を迫れられることになりそうである。
 市場のグローバルがもたらすであろう影響の大きさを考えたとき、紙流通の淘汰・再編のシナリオは、まだまだ先があると思っている。
2度にわたる洋紙価格改訂の背景と理由
司会  印刷用紙が今年二度にわたり価格改訂が行われようとしていますが、その背景や理由をお聞かせ願えればと思います。
鶴見  二回上げたいということではなく、春に一度価格改訂のお願いをしたが不十分であったので、残りについては秋にという、当初の予定どおりという形での展開である。
 その背景となっているのは、コストアップである。メインの原因は原燃料のアップということである。原燃料のアップが大変急激で大幅である。今まで当社が取り組んでいた、毎年100億円近くコストダウンをしていた「草の根コストダウン」でも追い着かないレベルになってきている。
 なかでも、エネルギー源で使っているC重油は、04年で25,000円/klであったものが、06年では50,000円/klと倍になっている。王子グループ全体では、年間100万kl位使っているので、25,000円上がるということは、250億円のコストアップになる。2年で250億円、1年では120億円のコストアップになっている。油関係が上がれば薬品関係も上がり、2年間で5割位上がっている。
 また、原料になるチップ関係は、同様に15%位上がっている。パルプは、04年は450ドルが、現在は600ドルで3割位上がっている。
 さらに、再生紙関係が主流ということもあり、新聞古紙は、04年は10円/kgが、現在は12円/kgと2割上がっている。新聞古紙は、当グループは年間で500万トン使うので、1円上がると50億円のコストが上がる。新聞古紙については、さらに厳しい状況があり、国内では12円/kgであるが、輸出価格は15円/kgと2割以上輸出価格の方が高い。輸出については、メインは中国であるが、04年が280万トンであったものが、05年が370万トンとなっていて、06年はもっと増えると予想をしている。
 このように、コストアップについては、重油をはじめ各原料ともに大幅になっている。工場・品種によって違うが、この2年間で15〜20%のコストアップになっている。これほど急激なコストアップに対して、草の根コウトダウンとエネルギー源のバラエティ化を図っている。重油だけでなく石炭、紙とプラスチックを混ぜて燃やすRPFボイラーを各工場に作っているが、1プラント作るのに70〜100億円かかる。工場によっては、重油をゼロにしようと取り組んでいるところもある。
 エネルギーが非常に高くなり、原材料であるチップ、パルプ、古紙が中国の旺盛な伸びで大変厳しくなっている。中国の紙・板紙の年間使用量は、04年が5,400万トン、05年は5,900万トンで世界第2位である。日本は、04年が3,140万トン、05年も3,140万トン強で横這い。それに対して中国は、大幅に伸びている。中国を主体とする東南アジア市場の台頭によって、重油だけでなく原材料関係も大幅に上がっていて、社内の通常のコストダウンだけでは賄いきれないのが実情である。
 そして、人についても、総額人件費の抑制を行っている。当グループの従業員数は、04年は17,000人であったが、06年は16,000人で、2年間で1,000人減っている。自然減もあるが、早期退職等で調整をしている面もある。1年にすると1人500万円としても、年間25億円のコストダウンになっている。
 このように、企業努力はしているが、現在はそれを上回る大幅なコストアップがある。その一部について価格転嫁をさせていただきたいということで、春に話をさせてもらった。春に話をさせてもらったのが、不十分であったので、残りは秋にという当初の予定どおり、今回お願いするということである。装置産業であるので、ある程度の利益を確保したうえで、設備更新をしていかなければ生き残れないという状況がある。
建石  日本製紙も全く同様であり、原燃料のアップが一番大きい。一昨年の急激な原油高に加え、チップ・古紙の価格も上昇するなど、今年の春に価格修正をお願いしたが、想定した以上に原燃料、特に原油価格が高騰している。原燃料の高騰によるコストアップは、06年は04年対比で約600億円に達する見込みである。
 日本製紙としても、重油から石炭への移行や人件費の削減を行い、コスト削減に努めているが、当社だけでは、これだけのコストアップは吸収しきれない。こういう事情から、再度、製品価格に転嫁せざるを得なく、秋にもお願いした次第である。
 日本製紙独自で、何故上げなければならないか補足説明資料を作って、代理店、卸商、印刷会社に配布したが、まだまだ理解されるには時間を要するので、今後も継続して説明をしていきたい。
 06年の原油価格は、1バーレル60ドルを前提条件にしているが、今は若干下がったが70ドル近辺である。当社は、1ドル上がると約7億円のコストアップになり、予測より既に70億円コストアップとなっている。このような資料を出しながら皆様のご理解をお願したい。
価格転嫁できない印刷業
司会  以上のような価格改訂の説明が、製紙メーカー2社よりありましたが、先ほど岡部理事長から印刷業界の状況は芳しくないという話がありました。印刷業としてはコストアップにつながりますが、吸収は可能でしょうか。
西山  札幌支部長も兼任しているので、各印刷会社の意見も聞いた。紙の値上げ分を、印刷価格にもっていける状況にはない。
 札幌支部では、11月13〜17日にかけて緊急アンケートを実施した。組合員108社のうち、37社(34%)の回答があった。3年前と比較した経営の内容では、売上げ状況は、増加したが5社、不変が6社、減少が26社。収益の状況は、好転が3社、不変が9社、悪化が25社。製品価格は、上昇はゼロ、不変が6社、低下が31社。資金繰りは、好転が1社、不変が16社、悪化が20社となっている。
 紙の値上げ分を、価格転嫁できないのが印刷業の弱さである。実例では、お客さんに対して紙の価格が上がったので、製品価格に転嫁を認めていただきたいとお願いしたら、代わりの印刷会社はたくさんある、と言われたというのが現状である。したがって、なかなかそこまで踏み込んでいけないのが、札幌の印刷業の現状であると思う。
岡部  北見支部、室蘭支部、稚内支部のアンケートの集計もあるが、札幌と全く同じ状況である。
司会  今、西山副理事長から札幌を中心とした状況をお話しいただきましたが、地方の状況は市町村合併や官公需の減少でより厳しいものがあるようですが、その辺の状況はいかがでしょうか。
 十勝支部では、18社からアンケートの回答があった。売上げについて、不変が1社あるが後は全部減少である。減少は20〜30%の落ち込みが多い。問題は賞与である。夏の賞与は、8社が支給している。中身は0.1ヶ月〜1ヶ月である。半分以上の会社は賞与の支給がなかった。人員の削減を行っているところもあるが、初めから社員が2〜3人では、減らしようがないのが実情である。
 町村合併は、十勝では幕別町と忠類村の合併があった。印刷の関係でいうと、今年はそれぞれが予算を持っているので影響はないが、来年から一つの町の予算になってしまう。
西山  札幌支部でも、昇給等についてアンケートを行った。昇給は、実施したが15社、見送ったが22社。夏の賞与は、支給したが20社、支給しなかったが16社。燃料手当は、支給したが23社、支給していないが14社。年末の賞与は、回答37社中7社が1ヶ月分位の支給を考えている。
司会  それほど厳しいということですね。
鶴見  1企業としての対応は、もう限界に来ているのではないか。印刷業界として、どうリストラに取り組むかという姿勢がないと、好転しないのではないか。
紙流通からみた印刷業界
司会  今、印刷業界ではコスト吸収は限界という話ですが、実際に印刷会社との取引の窓口になっている卸商の方はどのようにお考えでしょうか。
高橋  特に、私どもがお世話になっている中小の印刷会社では、今、西山副理事長が話した全くそのとおりである。賞与の話があったが、5人以下の会社では賞与どころではなく、経営者が自分の給料を取らずに、従業員に払っているような状況である。これは言われるようにパソコンの普及だとか、役所の仕事が減ったということの他に、大手の印刷会社に仕事が流れている。したがって、私ども地方の卸商の紙の出荷もどんどん減っているというのが現実である。
 中規模の印刷会社でも、最近CTPの導入が増えているという話であるが、これも前向きな話ではなく、設備をしなければお客さんの要求に着いていけないので、お金がないのにしかたなく設備をしているということを聞いている。
 印刷業界の力が弱まっているということは、同じく、私どもも非常に危機感をもっている。春の値上げも十分に転嫁しきれていない中で、倒産・廃業が出てくると、カバーする力はもうない。
 メーカーの事情ものっぴきならない状況になっている。紙だけでなく資材の値上げについては、一般の方々にも宣伝が行き届いているので、印刷業界も頭から転嫁できないというのではなく、これをチャンスと見て、業界全体で収益回復をしようという動きをされることを願っている。
組合員のモラルと結束
司会  価格改訂を容認するということではありませんが、印刷業も紙流通業もコスト吸収ができなければ、エンドユーザーにコストアップ分を転嫁しなければ生き残りの方法はないように思えますが、どんな方法でエンドユーザーに理解を得たらよいと考えますか。
岡部  西山副理事長の話ではないが、うちが値上げするといったら、他の印刷会社が行ってうちは値上げしませんという会社があるということ自体を、先ず我々組合員の中で、これを是正しなければならない。組合員320社が先ず団結することが大事である。
 印刷価格に転嫁の運動を行うのに、メーカーから先ほど説明を聞いたし、補足説明資料をもらったが、まだ何かあるのであればいただきたい。我々はそれを材料として、訴えたいと思う。印刷工業組合として、新聞広告でエンドユーザーに訴えることも考えていきたい。
印刷会社と紙メーカー・紙商は一心同体
司会  先ほど日本製紙から補足説明資料が提供されましたが、製紙メーカーは、エンドユーザーに理解が得られるような資料を、何かお持ちですか。
鶴見  製紙メーカーなので、紙流通に対していろいろ資料を出すのが本筋だと思う。エンドユーザーに我々は紙を売っているわけでないので、売っている先に理解の資料を出す。それを紙流通が、印刷会社に話をするのが筋だと思う。と言いながらも、いろいろ状況があり、当社も日経新聞に広告を出した。
 紙は、パレードの紙吹雪やメモ帳ならそのまま切って出せばいいが、インキを載せて情報として生きるのが基本的な形であるので、印刷会社と紙メーカー、紙屋は一心同体である。
 印刷物のうち紙代のコストは、数10%と思うが、我々が上げた分がそのまま印刷代の値上げとはならないと思うが、紙も上がった、印刷業も非常に厳しいので、転嫁をさせてほしいということを、エンドユーザーに印刷会社の方から説明していただくのが筋だと思う。一心同体の関係であるので、そのための紙関係の資料を出すのはやぶさかではない。
建石  日本製紙もエンドユーザーに少しでも理解をしていただけるように、紙の大切さについての意見広告を日経新聞に掲載した。また、エンドユーザー向けというわけではないが、今回、価格修正を皆様にお願いした際に、来年になったら各社の増産で、紙が余ってくるのではとの不安感もあり、日本製紙独自に「世界の塗工紙の需給バランス」について資料を作成した。
 アジアでは生産量が増えるが、アメリカ、ヨーロッパでは減産傾向にあり、今後GNPの伸びから判断しても、08年には不足となる方向である。今後も、少しでもお役に立つ資料を提供していきたい。
鶴見  世界第2位の紙・板紙消費国である中国は、96年が3,000万トン、01年が3,800万トン、05年が6,000万トンである。01年から05年の4年間で紙の消費量が55%伸びている。年平均だと13〜14%である。非常に高い伸び率である。これが7〜10%に多少治まったとしても、オリンピックや万博などがあり、暫くは、かなり大幅に伸びる。この数年、東南アジア市場でみると、かなり高い需要の伸びがある。
 簡単に言えば、高いところから売るということになるので、東南アジア市場レベルのある程度の価格帯でなければ、厳しい状況は今後続くと思われる。暫くは、増設して生産量が増えるが、高い伸び率が何処まで続くかという中で、大変な状況が5年、10年先に起きるかも知れない。
 印刷会社自体も、単に紙にインキを載せるということでなく、プリプレスの分野でソフト関係を随分やっているし、情報処理関係で収益を上げられるのではないか。
岡部  そういう方向に行けるところはいい。結局、賞与が払えないというような5人以下で体質改善のできない企業がある。そこでコラボレーションを図るということになる。
なぜ高い北海道の紙
司会  テーマは変わりますが、製紙メーカー、紙流通の方がお揃いの、折角の機会ですので、「北海道に製紙工場があるのに」という、紙の北海道価格について、話題を移したいと思います。何故、東京と北海道では価格が違うのでしょうか。取引量、決済条件ということは分かりますが、一般条件として、こういうかたちで価格が違ってきているということが分からなければ、北海道価格といっても問題が解決しないと思います。
市川 いろいろな見方はあると思うが、流通として相違点について言えることがあると思う。
 洋紙の価格は、オフ輪用巻取紙など一部を除いて、全国各地で多小なりとも開きがあるのは事実である。例えば、首都圏と北関東という隣接した地域を比較しても、その差を認めることができる。
 実は、価格差を付けているのは数量であり、それが地域差となって現れている。ここでいう数量とは、取引単位のことであり、国内2%需要の北海道と首都圏では、取引単位に大きな差が出るのは仕方ないことである。
 また、洋紙価格には、一般的に物流費が含まれているが、量的条件は距離以上に必要視されている。道内には、いくつかの製紙工場があるが、いずれも大口直送・直納を除いて、製品は基本的に需要量の多い札幌に集荷されている。そのため、工場に近くても距離的メリットが生じているケースは、殆ど無いかもしれない。
 さらに付け加えるならば、大都市周辺はメーカー、紙商の進出も多く、競合が激しいことから、洋紙市況も軟化しやすいことがあげられる。広範なエリアへのきめ細かな対応が必要とされる北海道においては、本州格差縮小をしていくうえでは、取引単位・物流面でのスケールメリットを出せる仕組み作りが、印刷・紙流通の双方に必要ではないかと思っている。
司会  西山副理事長は、北海道価格についてどうお考えでしょうか。
西山  製紙メーカーが北海道にあって、何故高いのかという、単純な疑問である。道内需要は全国の2%ですか。道内の製紙メーカーで作ったものは、東京に行ってしまうのか。
市川  大半は、工場から首都圏に出荷されるが、道内の場合は札幌に持ってきて、デリバリをする。
 工場に2トン車のような小さい車があれば、近隣のところへはデリバリが可能かもしれないし、工場に小口デリバリ業務を担当するような部署が設置されていれば可能かもしれないが、基本的に工場は作ることに特化した設備しか持っていない。効率的な物流を考えるうえで、物量の多いところに集約的に集めてきて、そこから細かい物流の組み立てをするのが一般的だ。
西山  全印工連の6月の用紙価格集計結果がでた。上質紙平判1〜5連で北海道が164円、東京が119円となっている。30連を超える場合は北海道が136円、東京が113円となっている。巻取り30連以上で北海道が133円、東京が104円となっている。
 大手印刷会社は、東京の仕事を受注しても地元の紙商から買わないで、東京仕切りと聞いている。大手印刷会社の仕入れ価格と北海道の紙商の仕入れ価格に、相当の差があるようにも聞いている。理屈は印刷も1万枚刷るのと10万枚刷るのでは単価が違うのと同じだとは思うが、北海道に製紙工場があるのにということなる。
 札幌と帯広でも違っている。
西山  積算資料では2月の統計で133円である。調査の仕方だと思うが若干の差がある。
市川  大手印刷会社のウエイトは、北海道より東京の方が高く、年間で数万トンもの紙を使っているような大手印刷会社は、元々のベースが違うので、そうしたところを除いて比較するのがいいのかもしれない。
価格改訂は行われているのか
司会  先ほど市川会長さんから、価格は数量だという話であったが、北海道価格の解消に向けての取り組みとすると、共同購入も方法の一つと思うが、全印工連2008計画の中にでてくるのでしょうか。
岡部  我々も悪いところがある、朝電話して昼に持って来いとか、昼に電話して夕方持って来いという発注がある。そうしたら2トントラックに自社の物だけを積んで来てもガラガラである。なるべくグループのようにして、2日前に発注するなどして、トラックが満載になるような計画発注を我々も考えなければならない。
高橋  言い難いことであるが、私どもも同感である。
鶴見  宅急便でも翌日配達が一般的であるのに、宅急便よりサービスがいい。紙流通は、印刷会社に随分尽くしてきている。
高橋  全国の卸商の組合があり、毎月マージン率の統計を取っているが、北海道は決して、中以上ではない。
西山  頭では分かっているが、なかなか実行できない。仕事も即納入が多い。
川越  全印工連の用紙価格調査で、昨年の11月と今年の6月調査で、東京地区、中部地区あたりは、春に値上げをしたにもかかわらず、昨年より今年の価格が下がっている。
市川  その調査結果にクレームをつけるつもりはないし、調査の取り方もあると思うが、私たちは、印刷会社に価格修正をお願いしている間の価格が、下がっているという認識はない。昨年1年間の市況を振り返えると、軟化懸念材料はあったものの、実質的には巻取紙も含めそれほどの変動はなかったと思っている。北海道と首都圏で、この半年あまりに、価格差がさらに開いたという調査結果は信じ難いし、驚きである。
高橋  ただ、我々流通で飲み込まされた現状はある。それが値下げというイメージになっているかもしれない。
鶴見  我々も、日経市況等で価格は下がっているとは思っていない。春に改訂をしたが、まだまだ不十分である。
市川  東京の卸商組合の印刷会社に対する販売価格の統計でも、直近で下がったという状況はない。首都圏でそれだけ下がっていれば、市況はもっと変動している。全体が下がるときには北海道も下がる。
北海道価格は解消できるか
司会  北海道価格は、どのようにしたら解消できると思いますか。
高橋  私ども流通としては、物流経費に手をつけるよりない。東京の方で、共同物流ということが出てきている。紙商が何社か集まり1つの物流会社を使っている。札幌でも出来ないか研究をしている。これはメーカー、代理店の協力も仰がなければならない。
岡部  印刷会社の計画発注と紙商の共同物流で、相乗効果が得られれば良い。
司会  製紙メーカーからは、北海道価格の解消に向けて、何かアドバイスはありますか。
鶴見  先ほども言ったように、紙はインキを載せないことには始まらないので、印刷会社と紙屋とは一体なので、どうやったら安くできるかをともに考えていくべきでないか。
建石  日本製紙の中での共同配送も視野に入れている。既に工場はコストダウン施策に努力しているが、限界が生じており、物流経費の削減が急務である。印刷会社からの計画発注で、計画輸送が実現できれば、卸商の方でも、あれもこれもと在庫を持たなくて良いので、経費負担の解消となるとは思う。
司会  最後にまとめとして、岡部理事長から今日の座談会を締めていただきたいと思います。
岡部  お忙しい中、貴重な意見をいいただきありがとうございました。初めて理解できたことも多々あり、大変有意義だったと思う。印刷と紙は一心同体という言葉を信じて、今後も定期的にこのような会を開催していきたいと思う。
司会  本日はどうもありがとうございました。

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