第27回北海道情報・印刷文化典旭川大会―特別講演―
「業態変革推進プランの基本概念と全体像」
全日本印刷工業組合連合会会長 浅 野  健氏
 第27回北海道情報・印刷文化典旭川大会本大会が8月27日午後3時30分から旭川パレスホテルで開催され、浅野健全日本印刷工業組合連合会会長による「業態変革推進プランの基本概念と全体像」をテーマに特別講演が行われました(本紙第592号既報)
 講演要旨をご紹介します。                     (文責:編集部)

はじめに
浅野 健氏
 改めて自己紹介をさせていただきます。昨年の5月に全印工連の会長に選任をいただきました浅野です。私の前任であった中村前会長より16歳若返りました。ですから若い若いといわれるのですが、今、話をされた谷川社長さんの1年後輩です。先ほど君の出身校の1年先輩と挨拶をされました。他にも沢山先輩がいるのかもしれませんが、お許しをいただいてこれから45分間お話をさせていただきたいと思います。
 実は、今日こういうスタイルでお話をさせていただくのも初めての経験です。今までですと、大体1時間か1時間半、全印工連が各県工組に今、提案をさせていただいている業態変革推進プラン2008計画について述べよというようなご指示が多いものですから、ある意味では一方的にお話をさせてもらっています。大体何処へ行ってもこのブルーの冊子でご提案をさせていただいていますが、8割の方はお読みになっていません。ですから大変ベーシックな基本のところからお話をさせていただくのですが、今日の3人の先輩は正に何と言いましょうか、良くぞ読んでしまったなという思いです。大変ありがたいのですが、それだけに今の3人の意見を私の話の中にどのように盛り込んで、どのようにお返しすることができるか45分の中でいろいろと話をさせていただきたいと思います。

変化と変革

 先ずは、全印工連が昨年の10月香川の全国大会で提案をさせていただきました2005計画から続いている業態変革推進プラン2008計画の概念について少しお話をさせてください。業態変革とは一体何かということです。ずばり申し上げますとこんな例があります。旭川あるいは北海道ではどうでしょうか。町の酒販店、お酒屋さんの例です。私の地元東京では最近お酒屋さんが変わってきています。例えば焼酎に特化しているお酒屋さんがあるかと思えば、手頃な値段のワインの品揃えが豊富なお酒屋さんがあります。あるいは北海道をはじめ全国の地酒をよくぞこれだけ揃えているというお酒屋さんがあります。コンビニエンスストアに変わったところもあります。ディスカウントチェーンに参加されたところもあります。もう一つあります。100円パーキングになったところがあります。それぞれ業態変革です。100円パーキングに変わったところは何故変わったのでしょうか。自分のお店に来てくれるお客様のニーズ、お客様のお役に立つにはどうしたらよいかを徹底的に考えて、駐車場が少ないから駐車場にと思ったはずはないです。真剣に思わなかったからそうなっただけだと私は思っています。他のタイプは自分のお店に来てくれるお客様のよりお役に立つためにはと徹底的に考えた結果、ワインや焼酎や地酒、コニビニエンスストア、ディスカウントストアに自分の意思で変えた結果ではないでしょうか。もう一つ私が小学生の頃の昭和30年代には、日本通運さんを始め輸送業・運輸業はありましたが、引越しサービス業というものはありませんでした。勿論、引越しサービス業という業種もありませんでした。今はどうでしょう。0123からサカイさんから多くの引越しサービス業があります。ある意味では引越しサービス業界が生まれています。何故なのでしょうか。例えば、先ほど話しました酒屋さんの場合には少し国の規制が変わりました。それから引越しの方はどうかといいますと価値観が変わったのでしょうか。あるいは核家族という影響なのでしょうか。引越しといえば、時には会社を休んで知人、友人、一族郎党が集まってきて手伝ってくれました。なかには会社のトラックを引っ張り出してそれに荷物を載せて運んだものです。引越しが終れば新しいところで車座になって一杯というようなものが日本の引越しであったと思います。しかし、核家族化で一族郎党が遠隔地にいる、価値観が変わったから友人・知人ともいえどもあまり無理なことは

業態変革推進プラン

 これは私個人が言っているのでありません。全国の都道府県から集まっていただいた皆様方と、業態変革推進企画室という全印工連の組織で1ヵ月に1回、いい年齢した大人が5時間も6時間も議論をするのです。終わると皆ヘトヘトになってしまい一杯飲み行こうという元気すらないので皆さんすぐに帰ってしまいます。そんなことを毎月繰り返してこの提案を作らさせていただきました。一人一人が今日も悩んでいる印刷会社の経営者です。一部外部の先生方にもご参加いただいて意見を承っていることも事実ですが、この提案というものは我々の手作りなのです。私もその一人ですが、皆さんと同じように今日も悩んでいる印刷会社の経営者が集まってどうすればいいのだろうと議論をしました。先ほど谷川先輩が話したように理念と思いだけで食えません。しかし、理念と思いが無かったらどうにもならないのも事実です。そんな思いに駆られて一人一人が意見を交換するようになりました。それもこんなこと言ったら笑われるかなと最初はそうでしたが、段々熱くなって本音を言ってしまいます。そうするとそんなことを考えている人だとは思わなかった、あなたがそんなに苦労しているとは思わなかったというようになり、結局それが信頼関係になってきて議論がより熱く前向きに進んで業態変革推進プランのこのブルーの冊子に纏まりました。これからもこの提案は継続させていただきますので、是非、綴じ込んでくださいということから穴をあけました。これで終わりではありません。全印工連の会員は全国の都道府県の工業組合です。そしてその工業組合の会員である皆様方は全国でその数を合わせると約8千社になります。8千社の企業それぞれにぴったりと当てはまるようなご提案ができれば正に最高ですが、それは不可能です。ですから、こんなふうに申し上げています。これは提案です。ですから提案の中で皆様方の企業に活かせるものは是非使ってみてください。いらないものはすぐ忘れてください。捨ててください。足りないものは是非ご自身で寝ないで考えてください。しかし、寝ないで考えてもそうそう知恵は出てきません。寝ないで考えていても眠くなってしまいます。汗を流すことは今までも沢山やってきましたが、知恵を出すことは汗ほどに流しませんでした。だからなかなか出てこないのです。ではどうしましょうか。思いをぶつけてみようではありませんか。情報発信をしてみようではありませんか。情報発信などと難しく表

環境変化を認識

 変化がダイナミックで、変化がスピードアップしている時こそ情報は価値を高めると思います。その情報をどのように受発信するのかです。それは一人では出来ませんし、一番効果的なそして効率的な情報の交換はやはり顔と顔を合わせることです。決して電子メールではありません。だからこういう素晴らしい出会いの場を活かしていただけたらありがたいと思います。全国でそれを一番上手く使わさせていただいているのが私です。日本全国で一番賦課金の安い印刷会社の社長をやっています。先輩も仰っていましたが、流した汗を十分に上回るリターンをいただいています。ですから今日も皆様から勉強をさせていただき、またそれを全国各地でお話をさせていただき、そこにまた新たな知恵が生まれるのではないでしょうか。私の大先輩なのですが、一昨年の末に亡くなられました元全印工連の会長そして日本印刷技術協会の創設者であられた塚田さんがご遺作の前文でこんなことを記しています。もし業界団体つまり私たちの場合は印刷工業組合が無かったら、業種が存在するが業界が無いと記しています。印刷業は従業員の規模でいうと19人以下が89%というのは日本だけでなく国際的にも同じです。それは印刷業は極めて中小企業性が高いということなのです。89%が19以下です。中小企業性が極めて高いのです。行政は国から地方自治体まで中小企業政策をいろいろと考えてくれています。業界団体が無かったらそれをどうやって受け止めるのでしょうか。1社1社が行政とのパイプを持つことは不可能です。ですから業界というものを組織するためにも業界団体が必要なのではないでしょうか。私はそんなものいらないという方はどうぞお一人で仕事をされたらいかがですか。風が吹く荒野の草花のようにどうぞお一人でお仕事をされたらいかがですか。こんな内容の文章をご遺作の前書きにしたためておりました。私もこのように業界団体のお手伝いをさせていただく以前は印刷工業組合がどんな団体でどんなことをしていて果たしてどんなプラスがあるのか考えてもみませんでした。しかし、お手伝いをさせていただき多くの方とお目にかかり多くのお話を伺いますと、さあこれからどうしたらいいんだと悶々としていた私でさえどうもトンネルの出口がおぼろげながら見えてきたな、今や明確にこうすべきだなということを自分の中で確立させていただけるようになりました。ですからこうしてお話をさせていただいております。

環境変化の原因

 では、業態変革推進プラン、先ず何が変化したのかを客観的に捉えましょう。環境が変化した変化したといくらいっても何がどう変化したのか、それがその結果どうなったのか、それが続くのか続かないのか、それをはっきりさせなかったら対応のしようがありません。そこで私どもは変化の原因を先ほども岡部理事長が話をされたように、環境変化の原因は国際化、高度情報化、少子高齢化、成熟化のこの4つだということを明確に申し上げています。勿論、他にもあるでしょう。是非考えてみてください。他にこんなこともあるぞ。4つだけでないぞ。ここがいいのです。こうして4つしかないと申し上げると絶対そうでないという意見がでてくるでしょう。だからいいのです。それは我々今日も悩める印刷屋の親父が集まって議論してこういうものを出しているのだから、正しいという保証は何処にもありません。皆さんで正しくしてみてください。是非足りないものは考えてみてください。私たちはこの4つに絞ってみました。

3つの変化

 そしてその結果、変わったことが3つあります。先ず社会の主役が産業から消費者に変わりました。昭和30年代室蘭が八幡が元気であったころ鉄は国家なりといっていたのではないでしょうか。今や消費者が国家です。明治維新以降産業立国として近代化を図り先進国に追いつけ追い越せを目標に努力をしてきました。だから国の主役、社会の主役は、産業・企業でありました。しかし、今は消費者です。トヨタ自動車が一番脅威と感じるのは日産でもホンダでもGMでもない、消費者です。次に変わったものが競争相手です。北海道の印刷会社の競争相手は北海道、全国何処へ行っても地元が競争相手でした。今や私の地元東京では皆様方の中にもいらっしゃるでしょうが1,200社を超える首都圏以外の印刷会社があります。来ては駄目と言っているわけではありません。どんどん来てください。それによってもっとレベルの高い競争をしてお客様の役に立つべきです。今や東京には1,200社を越える印刷会社が営業活動をするようになりました。営業活動には営業所を出すという定番がありました。それも今は竹橋印刷センターのように全国の皆さん向けのレンタルスペースを用意して、さあ来てください。自前で営業所をつくる必要はありません。あなたの営業所のスペースの隣には他の県から来られた印刷会社さんがあますので、そこでお互いに得意技を出し合ってお客様のお役に立ちましょうという、こんな例も生まれています。あるいは営業所はホームページというところもあります。必要な時にビジネスホテル2泊3日でくればいい話です。データは送ればいいし、荷物は寝ている間に行きます。距離は全く問題なくなってきました。少し海外に目を向けてみると台北、香港、シンセン、上海、大連、ソウル、東アジア沿海部の方々まで私達の競争相手になっています。北海道の場合には樺太の印刷会社も競争相手と伺ったことがあります。ロシアも入るかもしれません。どうも私どもはそういったものを受身に捉えてしまいますが、我々が出掛けて行ってもいいわけです。少なくても競争相手は変わりました。しかし、今、申し上げたのは同質の競争です。つまり印刷会社同士です。狭い地域の競争が広くなっただけの話ではないですか。しかし、そこに異質の競争相手、つまり電子媒体が生まれたわけです。否でも応でもこれが実態です。しかも競争相手が変わったというのは何も私どもの業界だけではないのです。あらゆる業界で競争相手が変わっています。例えば登別温泉の有名な旅館があります。その旅館の競争相手は登別温泉のお隣の旅館であったかもしれません。あるいは十勝川温泉の旅館であったかもしれません。でも今は温泉旅館の競争相手がゴルフ場になってみたり、あるいはテーマパークになってみたりしています。なぜならば何も泊まらなくても日帰りもできます。競争相手はそんなふうに変わっています。最後の3つ目、これは時間の過ぎ行くスピードです。ともかく1年の進み方が早くなりました。1日24時間365日は変わらないのにどうしてでしょうか。納期が短くなっていませんか。私が昭和47年に父の創業した印刷会社に入れてもらい営業に配属されたころ、カラー(4色)の初校は、版下を製版セクションに入れて色校を出してもらうのに、何か今のプロ野球のピッチャーみたいに中4日でした。今はどうですか、今日データをお預かりして明日初校で誰も驚きません。中4日の頃、中3日で頼もうものならバブル期のゴルフ場と同じで、工務という人がいて断ることが仕事でした。何かというとできるわけがないだろう馬鹿といわれ、お客様から攻められ会社に戻ると馬鹿といわれ何だと思いました。しかし、今や明日初校、誰も驚きません。セブンイレブンはどうですか。何でセブンイレブンかというと7時から11時まであったはずが、今はセブンイレブンではないではないですかセブンtoセブンになっています。それをみて誰も不思議に思いません。だから納期は短くなるのです。夜中の2時や3時に商品が売れます。だからそれを朝の5時には補充しなければなりません。そこに持ってくる製品は誰が作るのかです。1日24時間365日は変わっていません。人は眠らなければいけません。これも変わっていません。少し前までは人が眠っている間は仕事も寝てくれていました。今は人は交代で眠るけれど仕事は寝ません。正に24時間稼動です。お休みもないのです。この明確な変化を私どもが社会の変化として認識をしないとどうしても被害者意識になって、愚痴がでてしまいます。納期が短くてさ、お客さんが悪いの、そうじゃないらしいのだけれど、これではどうにもなりません。そんなことよりもこれは社会の変化なのだから、それを前提にどうこれから私どもの仕事を組み立ててよりお客様のお役に立つかを考えるしかありません。

政策の変化

 他にも変わりました。政府の中小企業政策です。昭和38年東京オリンピックの前の年に中小企業近代化促進法が生まれました。印刷工業組合は1971年からこの法律を背景に構造改善事業を始めました。設備投資を前提に大企業と中小企業の格差是正を目的とした法律です。それが1999年、もう21世紀の始まる頃です。この法律が無くなり180度モデルチェンジをして中小企業経営革新支援法になりました。全面支援をしていた国の政策が、もう大企業と中小企業の格差是正はどうでもいいということになりました。これからの日本に必要な中小企業像というものは活力、個性、そして対応性です。やる気のある人だけ頑張ってください。やる気のある人は手を挙げてください。レポートを出してそれを審査して合格だったら補助金を出すということになりました。今年になってまた変わりました。中小企業新事業活動促進支援法になりました。国の中小企業政策もそのようにダイナミックに変わっています。それとここまでは社会の変化であり全国のあらゆる中小企業が直面している変化であります。

技術の変化

 印刷業はどうかというと技術の変化は凄いです。アナログからデジタルです。デジタルが私たちに何をプレゼントしてくれたのかですが、平準化、標準化ということもありますが、先ほどの話にありましたアマチュアでも印刷物を製作、製造することが可能になりました。小学生が偽札を作る時代です。あまり言いたくはありませんが偽札はプロの仕事でした。昔、偽札が出回ると必ず刑事は印刷会社へ行き、腕はいいが素行の悪かった印刷マンとか製版のレタッチマンいませんでしたかと聞きに来ました。私も経験があります。しかし、今や小学生がマイパソコンで作ります。厭な時代ですね。昨年の郵政公社発売の年賀はがきの何と52%がインクジェット対応になりました。インクジェットというのはアマチュアがマイパソコン、マイプリンタで年賀状を作りますよということです。その確信犯的アマチュア向けであります。年賀状は新年の挨拶をお届けする、正に手段として残っています。しかし、その半分が全国的に我々の手から逃げました。否でも応でもそういう時代です。

組合事業の変化

 そういう環境変化の下で印刷工業組合も変わってきました。構造改善事業という護送船団方式で全面底上げの事業展開から21世紀に入ると変化への対応という新たな対応を持たざるを得なくなり2005計画を実施しました。そして今はその延長と考えて貰っていいと思いますが、自らの意志というところをより強くして変化ではなくて変革です。変化は勝手に変わってしまうことです。変革は自分の意志で変えることです。お客様のお役により立つために自分の会社の仕事のあり方を自分の意志で勇気をもって変えよう、こういう提案であります。何も印刷屋さんをやめて焼き鳥屋さんになろうといっているのではありません。先ほど話したように酒販店さんだって小規模です。引越し屋さんも最初は車1台2台からのスタートであったと思います。何も最初から50台60台揃えて引越しサービスを始めたわけではないと思います。規模が大きいからできる、規模が小さいから出来ない、確かに現実的にそういったことがないとは思いません。しかし、それだけが理由でもないと思います。それだけがもし理由だとしたら世の中面白くありませんと思いませんか。日本一の利益を出しているトヨタ自動車でさえ潰れかけました。ソニーだって、ホンダだって戦後の会社でしかありません。彼らにだけ夢があって私たちにはないのですか。そんなことはありません。夢というのは正に公平に持てるものではないでしょうか。自らの手で自分の夢を捨てることはないと私は思います。

これからの変化

 今申し上げた変化はこれからも続きます。例えばe-Japan政策という国のIT武装の政策があります。これももはや第2ステージに入っていますITインフラはもう揃いましたので利活用の時代ですといっています。国はこれをもって正に24時間365日の行政サービスを行います。大晦日であろうと正月三が日であろうとお盆休みであろうとインターネットを使えばつまりパソコンを使えばメールを使えば住民票だろうと印鑑証明だろうとワンアクセスでサービスします。そのために市町村合併もやらなければいけないそんなことになっています。官公需の発注は電子発注になります。これは随分温度差があり、印刷がもうそうなっているというところもあれば、まだまだというところもありますがいずれなります。電子発注は官から民に移行してきます。いやだといってもそれは無理であります。それが流れです。

業態変革必修科目

 ですから業態変革推進プランの必修科目としてはインターネット接続のパソコンを何とか仕事に使ってください。もしそうでないのであったらもう仕事を継続する気持ちはないのですねと私は申し上げています。パソコンが無ければ印刷屋じゃないのかということです。そのとおりです。パソコンが無ければ、印刷屋さんでも、八百屋さんでも、魚屋さんでも出来ない時代になりました。少し前までなら、そう言われて先輩そういうつもりで言ったのではありませんと私も逃げましたが後で恨まれるのは厭ですから今は逃げません。お前があの時いい加減なことを言ったから、俺パソコン持たずにやってきてこんなふうになってしまったと後で恨まれても困りますから敢えて申し上げます。そして必修科目第二は、プロですから、もう一度工場、事務所を徹底的に掃除しようということです。機械が置いてある現場がパウダーで真っ白、オイルで真っ黒ということはないでしょうね。何度鳴らしても電話に出ないなんていうことはないでしょうね。そんなこともできなくて、仕事がない、利益が出ないといっても、誰もどうにもできません。確かに私たちはこれから顧客満足度の向上だとか、いろいろなことを考えなければいけませんが、その前に今からできること先ずやりましょう。難しいことにチャレンジして失敗して挫折感を味わうよりも、金がなくても執念があればできることから始めましょう。それが必修科目です。それが厭ならもうやめてよと申し上げざるを得ません。機械が新しい古いを言っているのではありません。黒光りといういい言葉があるではないですか。いぶし銀といういい技があるではないですか。もう一度、現場、事務所を徹底的に掃除しましょう。整理整頓。整理とはいらないものをすぐ捨てることです。すぐ捨てるというところが味噌です。今できることを今やらないというのは利益の損失です。いらないものはすぐ捨ててください。整頓とは必要なものがいつでも取り出せるようにしておくことです。清掃とは汚さないことです。清潔とは点検することです。点検して汚れていたら掃除をしましょう。汚さなければいいのですから鼻から掃除をするのは生産性が良くありません。そして躾はルールを守ることです。トヨタ自動車と私どもの会社をものづくりというところだけに焦点をあてて見てもどうしてこんなに違うのでしょうか。トヨタさんはみんなで決めたことをそれに改善を加えながら徹底的に定着させます。私どもの会社は3

プロとアマチュア

 プロとアマチャアはボーダレスになってきました。大体プロとアマチュアを差別化するなど考えられない話です。プロ同士が差別化するなら分かるが、プロとアマチュアはもともと違うのです。それがアマチュアがどんどん追いかけてきました。さあどうしますか。アマチュアがやらないことをやるしかないではないですか。一番わかりやすい例がスポーツです。人の見ているところでも見ていないところでもプロのスポーツ選手は徹底的に練習をします。アマチュアは疲れたらやらなくてもいいのです。私たちはどっちを選ぶかです。プロですよ。アマチュアでも凄いのが出てきます。郵政民営化です。もう今は郵政も公社化されていて、自分たちが今もっている経営資源を徹底的に利用して日本一の会社に早くなろうという先進派から、今までのままでいいじゃないというタイプからいろいろいらっしゃるようです。民営化は参議院で否決されて選挙でどうなるか分かりませんが、いずれにしても民営化の方がいい、民営化になると思っている人たちは着々と準備を重ねているそうです。それは何を考えているのかということです。手紙の量が減ってきます。今は一日7,000万通の手紙が行ったり来たりするそうです。携帯電話の数が7,000万個です。1個の携帯電話から10回メールを発信すると電子の手紙の方が10倍多いということです。この前誰かが言っていましたが、今はラヴレターまでEメールだそうです。先進的郵政マンは何を考えているかいいますと、如何に手紙を増やすかです。それがダイレクトメールです。ダイレクトメールという手紙は肉筆ではありません。印刷をするのです。そんなアマチュアがいます。ダイレクトメールをデリバリという現在の位置から虎視淡々と見ているアマチュアの方もいるということです。我々は指を銜えて見ていていいのですか。はがきを売りたい切手も売りたいということで絵葉書と切手をセットにして観光地で売るそうです。外国ではもうすでにそうなっているらしいです。ありとあらゆるところで自分たちのもっている機能を積極的にお客様に使っていただこうと夜も寝ないで考えているのでしょう。そこに印刷という手段も含まれているということです。

出荷額の低下原因

 製本、表面光沢、グラビア等も含めた私どものオール印刷産業の出荷額は1991年の8兆9千億円から2003年の7兆4千億円まで1兆5千億円下がっています。だから仕事がないとは思わないでください。何で下がったのか、私達の工業統計の単位は出荷額です。売上げなのです。全国一斉ディスカウントセールをしました。破壊的価格競争を全国でやりました。その結果、ボリュームが一緒でも売上げですから下がります。もう一つ、今までは少なくても私たち業界内の仕事であったプリプレス、例えば色分解、文字組版、こういったものがデザインプロダクションに行ったりフォトグラファーのところに行ったり、出版社に行ったりし、仕事は残っているのですが我々の手から離れていっています。年賀状のように存在しているが我々の手から逃げたというものがあります。日本印刷技術協会がそれを調べた結果、本来は8兆9千億円が4兆5千億円に下がっていても不思議ではないということです。それが何と7兆4千億円も未だにあります。どういうことかというと印刷物は減っていないということです。ただ私たちだけが印刷物を作る時代はもう終わっています。

事業領域を再定義

 しかし、元気を出しましょう。印刷物が減っていないということはどういうことでしょうか。印刷物が持っているメディアとしての機能は少しも衰えていないということです。人類が初めて手にしたメディア、情報媒体ですから一番歴史があります。工業的な印刷物のルーツは15世紀のグーテンベルグからです。一番我々が歴史を持っています。歴史があるからついつい古いと思ってしまいます。決してそうではありません。歴史があるということと古いということは次元が違います。私達自らがそれを古くしてどうしますか。そんなことをしていてはいけません。さあどうしたら古くしないでいられるのですか。正にここです。ライブドアが何故フジテレビを欲しかったのかと一緒です。今は一つの情報伝達媒体だけでは社会の中心にいる消費者は満足してくださらないのです。複数の新しいメディアがどんどん生まれてきます。そういったものとその特性を考えながら組合せをしてお客様にご提案をするということも古くしない方策の一つだと思います。そのためには新しい媒体の素晴らしさを私たちは知る必要もあるし、印刷媒体の素晴らしさも知る必要があります。再認識する必要があります。どうも自虐的になり、印刷はもうどうにもならない、古いとかそんなことを自分たちでいってしまってどうするのですか。勿論、印刷物に弱いところはあります。動画が送れないではないですか、音声を送れないではないですか、というそのような基本的なところから、電源が無くて見られるという利点もあるではないですか。その組み合わせを考えたらどうなのでしょうか。そうなると一人だけでは考えられません。お客様のよりお役に立つためには我社の機能を強化したい、広げたい、深くしたい、そんな思いが出てきます。しかし、経営資源は限られています。どうしたらいいのでしょうか。そこで共創ネットワークです。共創ネットワークの基本は先ず交流することです。懇親を深めることです。先ほど先輩が話したことです。この旭川大会を今日まで準備するために多くの皆さんが集まりました。その結果、今日あの人、顔を見せないがどうしたのかと今までそんなこと考えた事もないあの方に対してそんな思いも生まれてきました。それを次に結び付けたいと先輩がいいました。正にそうです。しかし、そうはいっても肌の合う人、そうではない人がいるから、気持ちが通じない人とはコラボレーションはできません。なぜならコラボレーションの基本は自分

プロの条件

 私たちがこれからプロであり続けるためにはアマチュアができないことをし続けるよりありません。しかし、最初から顧客満足度に行って挫折するのではなく、不満足度からいきませんか。顧客不満足度を一つ一つ減らしていきましょう。会社の中を徹底的に掃除しましょう。例えば、顧客不満足度ですが、お客様は我が社にどんな不満をもっているか皆さんはご存知ですか。多分気がついているのでしょうが直視する勇気がなかなか辛いのです。しかし、それを直視しないとお客様が我が社に何を不満足と感じているのか分かりません。顧客満足度なんてどうでもいいから電話は3回目には必ず出くれといっているのかもしれません、頼むからオーダーした部数をきちんと納めてくれといっているのかもしれません。ありとあらゆるところにお客様は私達の未熟な点を感じているのかもしれません。その方が明日からアクションがしやすいのです。私どもが誠心誠意込めて製作してお客様に納めた印刷物が全部活かされていますか。お客様は全部それを使い切っていますか。我々が載せているのはお客様の情報と思いですから必ず賞味期限があるはずです。賞味期限がそろそろ切れるという時に行ってください。先日お納めしたあのカタログ、あのパンフレット、あのチラシ、いかがでございましょうか。全部お使いいただけましたでしょうか。全部使ったと言われたら、効果はどうでしたかと聞けばいいのです。売上げはどのくらい上がりましたか。期待どおりでしたか。期待の8割だな。2割減ったのは何なのだろうか一緒に考えましょう。そこが実はお客様の本当の不満足なのです。あなた方は作るだけだものいいよね、俺は500枚でいいと言っているものを紙代だけしか変わらないといって1,000枚作らされただろう。みろよ500枚残っただろう。お客様の事務所の端っこにハトロンに包まれてビニールの紐で結束されて置いてあるのは大体印刷物です。生鮮食料品であったらもう腐っていて臭っています。そういうことを私たちはお客様にさせていませんか。我々は売上げの一部、利益の一部だからいいですが、お客様にとって無駄な買い物をさせていませんか。余計な買い物です。そんなことをさせっぱなしにしておいて顧客満足度なんて話しても駄目です。聞いてくれません。私たちがお納めする印刷物が最後の最後までどうなるのかそんなところをもう一度追いかけて行くと運送屋さんが引越しサービス業に業態変革したように我々もよりお客様のお役に立JRと同じようにこれからのプロには安全と安心が求められます。

安心と安全

 安心イコール、セキュリティです。情報の漏洩がないですか。最近では使用済の刷版を回収して情報の漏洩を防ぎましょうかという感材メーカーもいます。一緒に考えませんかとそんな提案もいただいています。もう一つあなたの会社は法律違反をしていませんか。それがあるのです。コンピュータソフトウェアの不正コピーです。最近はコンピュータソフトウェア業界が必死になってこれを撲滅しようとしています。なぜならば正当に対価を支払ってコンピュータソフトウェアを使っている人と不正にコピーをして使っている人が同じビジネスつまり同じ土俵の上で相撲を取ったらそれは不公平という思いからと聞きました。内部告発があって監査が入ります。最終的には和解ということになります。今はMAX1億5千万円まで和解金が必要です。先ず足元を見てください。一つの分類として出版・印刷業はその団体が告発の数を抱えている多さでは2番目だそうです。印刷業単体では4番目だそうです。1番はコンピュータソフト開発業界だそうです。笑っちゃいますよね。しかし、我々もそんなところに位置しています。コピーガード機能がないじゃないかという前に襟を正しましょう。鍵が掛かっていなかったから人の家に勝手に入ったということはまずいでしょう。それと同じです。襟を正した上でもう一度、それは高いので半額くらいにできないのかということは、これは業界団体の使命として私は申し上げたいと思っています。安全はVOCだけでなく環境問題があります。以前はこんなこと考えなくても印刷物は作れました。不正コピーだってそうです。2年位前まではプロであったら不正コピーで使うのは当り前、常識、それが通っていた時代です。しかし、環境の変化は続いています。

グラフィク・インダストリー

 コンプライアンス、環境問題、資源問題、あらゆるところでこれからのプロならば備えていなければいけない新たな機能が生まれています。これは厭な時代と思われるか、いや良かったアマチュアがここまで来たけれど、またしてもプロとアマチュアが十分に差をつけることができる新たな目標が生まれたと感じられるかです。それは皆様方にお任せしますが、私はうれしい良かったと思っています。しかし、もっと安く、安価にこういうマネージメントシステムを導入することは別にお墨付きをもらわなくてもいいのです。やらなければいいのです。そんなことをお互いに学びあいます。そんなことも1社だけではできません。是非、高い志、高い競争意識を持ってください。価格だけでしか競争ができないというのは知恵のない証拠です。やるなら勝手にやって早く倒産してくれと思います。しかし、その原価もそれぞれ違います。単に安売りをしているかどうかは十分に検証する必要があるでしょう。今は市場価格ですから売価を私たちが決定することができないでしょう。印刷物だけでなく何でもそうです。後はどうするかというとコストダウンです。事務所の中、工場の中は宝の山だらけです。もう一度徹底的に整理整頓をしましょう。ついでに頭の中も一緒にやりましょう。そして最も確実な未来予測はその未来を自分たちで作ることだという言葉があるということを最近聞かせてもらいました。そうしましょう。私達の未来は私達の手で作って行きましょう。そのための努力は皆でやりましょう。是非、全印工連からの提案をもう一度お目通しをいただいて参考になるところは使ってください。参考にならないところは捨ててください。足りないところは是非お考えください。そして後でそっと教えてください。ありがとうございました。


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