平成15年度第1回全道委員長会議
平成15年度上期全印工連北海道地区印刷協議会
官公需取引の研究に着手
 平成15年度第1回全道委員長会議、平成15年度上期北海道地区印刷協議会が、6月27日午後1時から札幌市中央区の札幌パークホテルで、全印工連から中村会長、武石専務理事、浅野常務理事と全道から60余人の支部長・委員が出席して開催され、全体会議、委員会、総括会議の中で、官公需取引の研究、破壊的価格の問題や当面する問題、課題について討議が行われた。

〔全体会議・全印工連北海道地区協議会〕
 最初に岸理事長から北海道の印刷業界を取り巻く状況と今年の北印工組の事業についての紹介を兼ねたあいさつが述べられた。
 次に中村全印工連会長からあいさつを兼ね全国の印刷業界の状況について講演が行われた。
 つづいて、浅野全印工連常務理事から「全印工連2005計画案について」の講演が行われた。
 最後に、武石全印工連専務理事から全印工連が本年度実施する事業について委員会別に詳細な説明が行われた。

北印工組理事長あいさつ

北海道印刷工業組合  
理事長 岸     洋
岸理事長

 北海道だけではないが、3月決算の大手企業の株主総会が昨日、今日がピークで行われている。新聞紙面で見る限り、何処の会社もお詫びで終始しているようである。株主の皆さんもあきらめているのか20分位で終った短い株主総会があったかと思うと、雪印食品では食品会社そのものが無いわけで再雇用の問題で延々と議論をしていた。これらも北海道全体としては厳しい状況となっている。
 我々の業界の問題としては、先の常任理事会で旭川支部長から印刷用紙の北海道価格解消に向けて組合として取り組んでほしいという意見があり、早速、道に対して全印工連の用紙価格動向調査と経済調査会の積算資料の2つの資料を集計し、同じ種類の紙が全国でこんなに価格差があるのでこれを何とか解消してほしいと申し入れをしてきた。
 現時点での道の見解は、北海道価格は条例では著しく他地域と価格差があるものは是正を図るのが知事の役目となっているが、過去にセメント、自動車、ガソリン等で北海道価格が存在したが、現在はあらゆるものについて北海道価格は存在しないということである。用紙についても道独自に調査をしているが特に価格差があると認識していない。資料を持って行って初めてこんなに価格差があるのかということであったが、現実的には行政としては用紙の北海道価格認定はしづらいということである。これから、まだまだ末永く運動を続けていなかければならない問題である。
 それともう一つの印刷の契約形態が製造の請負かいなかという問題であるが、道では既に製造の請負の契約になっている。製造の請負ということで1社完工かというと、今までどおり一部外注をしてもやぶさかではないということになっている。
 最低制限価格については、道だけでなく札幌市でも大変興味をもっているようである。現在、北印工組として、札幌市に対して統一フォーマットを提案するため札幌支部を中心にプロジェクトチームを発足している。全印工連でも全国の自治体に対して統一フォーマットを提案する動きになっている。
 北海道庁は、全国に先駆けて電子入札を行ったが、予定価格の積算が手仕事である。積算資料を基にして積み上げていったものが予定価格となっている。道としてもミツモザウルスのような見積りソフトの導入を検討している。まだ導入されてはいないが、それをいち早く実行されると我々としては困ることになる。例えばミツモザウルスは1本248,000円であるがクライアントサーバー扱いになっており、パソコン1台に1本のソフトが必要になるので営業が10人いるとそれだけでとんでもない金額になる。
 また、道の方でも最低制限価格を導入するにしても、最近急速に進展しつつあるCTPなのかアナログフイルム製版なのか、成果品が全く変わらないのに製作工程が変わってくる。どちらでやるのか、普及率を見極めながらやっていかなければ、いきなりCTPと言われても困るという問題が出て来る。我々としても常に行政とコンタクトを取りながら、業界の技術力、装備率がどうであるかを逐一詰めていかなければ簡単には行かない。
 先般、道の主催で製紙メーカー、代理店、卸商と我々に道と経産局が加わり懇談会という形で、我々の業界の窮状について訴えてきた。その中でも北海道価格の問題を提起したが中々認識がされない。東京、大阪の首都圏では、輸入紙のことが簡単に出て来るが、ローカルになればなるほど輸入紙は馴染みにくい。主要紙は地元の問屋から取り上げておき、周辺紙を地元の問屋から買えと言っても、それで問屋が無くなったら大変なことになるのでそういうことには中々行かない。
 道も経産局も北海道に製紙メーカーがたくさん立地しているので北海道の紙の価格が一番安いと思っていたというような認識しかないので、我々工業組合役員としてあらゆる行政の場で情報発信をしていかなければならないと思っている。
 今すぐ統一フォーマットを作り最低制限価格ということとなると装備の問題も含めていろいろな問題もでてくるので、最初に手を着けるのは、一番札落札ではなく二番札落札にしてはどうかという意見を出したところ、道も興味を示してはいたが、これは条例から逸脱しているということであった。二番札落札にすると今の価格破壊は多少防げると思うが難しい。
 ただ、今、途に着いたばかりで毒薬ではないので飲んで直ぐ効くということにはならないが、できるだけ漢方薬よりは少し効き目があるというような速度で取り組んで行きたいと思っている。
 道の方では、100万円以下の印刷物件は、予定価格の70%を下回るものは契約の相手方としないような決め事はある。それ以上のものは予定価格の内の最低落札価格となっている。これからいろいろと詰めて行き、担当窓口との技術的な詰めもしていかなければならないので、今日言ったから明日から、今年言ったから来年からというな短兵急なことにはならないが、一つ一つ積み上げて行き、息の長い動きをしていかなければならないと思っている。

全印工連会長あいさつ

全日本印刷工業組合連合会
会長 中 村 守 利 氏
中村会長

 全国の地区協を回っていて一番の関心事は価格の問題である。破壊的な価格をどうしたら良いかということである。これから電子入札が盛んになってくるが、この問題を処理しておかなければ今後経営に大きな影響を及ぼして来ると思い全印工連では真剣に取り組んでいる。この破壊的価格問題については2005計画特別委員会で取り上げることになっている。
 価格破壊と同時にもう一つ需要なことは不況業種の申請をして昨日付けで認可された。皆さんのご支援ご協力のお蔭で成功した。経産省にいろいろな書類を出してお願いをしたが、経産省だけが決定権をもっているわけでなく、中小企業庁、財務省と回って認可になる。そうこう回っている間に大問題が起きた。データが不足であるので3年間に遡ってデータを出せとか2月までのデータを出したが4月末をもって最終月とし2ヵ月分のデータを追加しなさいということをしかも1週間でということになったがとてもできる芸当ではないので、経産省と相当押し問答をやり、経産省が動いてくれてやっと認可になったという経緯がある。不況業種の認定はかつても受けたことはあるが、日印産連を挙げてということになると時間がかかるので今回は印刷という括りで全印工連とジャグラの2団体で申請をした。これにより借入限度額が2倍になるという大きなメリットがある。
 日本経済は、皆さんもご承知のとおりである。デフレ不況からの脱却が中々容易ではない。日本経済のみならず欧米もデフレ傾向にあると報じられており、これが複合的になると日本経済のデフレ経済からの立ち直りがかなり遅れることになるのではないかと思う。
 日銀の6月期短観が正式には7月1日発表されるが、今朝の新聞に民間調査機関14社のDI予測が載っていた。DIとはこれから良くなるという見解とこれから悪くなるという見解を合算したものである。良くなるは50%以上、悪くなるは50%以下である。それを引き算すると大手製造業が−10%、中小製造業が−30%、大手非製造業が−15%、中小非製造業が−38%と大体2.5倍から3倍、中小の方が悪いあるいは悪くなると感じているようである。
 今年度の経済成長率を見ると、政府は0.6%を超すと言っているが、民間は0.4%止りと言っている。それでもプラスになるわけだから少しは良いが、一番問題になるのは名目成長率である。政府は−0.2%と言っているのに対して民間は−1.3%と言っている。実質成長率と名目成長率をここ5年間で比べたところ実質成長率より名目成長率がダウンしている。これは何を意味するかというと物価が下落しているということである。名目成長率が上がって行かないと物価は上がって行かないということであり、デフレ経済は今期も続くということが政府の数値からも証明されている。
 昨年の実質成長率は1.7%ということであったが、今年は政府、民間ともに0.6%、0.4%と昨年よりは少し悪くなるという数値が出ている。名目成長率も政府は−0.2%と言っているが民間は−1.3%と言っているので、かなりデフレが進行するという見方をした方が良いと思っている。中身を検証すると個人消費がいつも問題になる。GDPの60%を占めている個人消費が上がって行かなければ経済は良くならない。実質成長率が0.6%、名目成長率が−0.4%と殆ど横ばいである。設備投資をみるとやや設備投資が良くなるということで実質成長率が1.8%、名目成長率が0.2%となって、ともにプラスで、随分続いたデフレ経済が今期から夜明けをするのではないかという見方があって少しづつ上がってくると予測されるが、これはそれほど大きな力ではない。後、公共投資があるが、今、構造改革を行っている最中で、実質成長率が−4.4%、名目成長率が−5.2%ということで、これは全く成長の力にならない。最後に4つのエンジンの一つとして期待をしている輸出であるが、イラク戦争の影響で米国経済は停滞し、アジアを頼りにしているということになるがアジアもSARSの問題で停滞しているので、これも殆ど牽引力にならない。しかし、実質成長率1.8%、名目成長率1.3%となっているので、せめてこの輸出に頼ると言うことに今年度もなっていくということである。アジア全体の成長率を見るとSARSの問題があっても平均5%台と高い。それが日本の場合は1%に行かないということである。世界経済をみるとIMFが出しているのが3.2%とプラスになっている。世界経済も3%台なのに日本経済はまだまだ立ち遅れている。そういう中で1年間まだまだ厳しい年が続くと覚悟しなければならない。
 一面、明るい展望は、日本はブロードバンドが急速に伸びていることである。現在1,000万世帯を超えたということであり韓国を追撃している。米国では既に2,000万世帯に行っているし、韓国が1,200〜1,300万世帯となっているが、今年中には韓国を抜くと言われている。
 日本でプロードバンドが普及している基本は、早く、安くにある。そういったことから、我々印刷業界でもビジネスプランとしてプロードバンドを含めていろいろな形態でこれから出て来るであろうと思っている。そういった研究も含めて進めていかなければならない。サーバーもかなりコストダウンが図られ、データベース化するにしても印刷業界としてプラスの面がブロードバンド系統に出てくると思っている。我々も一企業を超えて共創ネットワークということを備えているが、もし地域を越えて共創ネットワークをしていかなければならないそういう時のツールとしてのブロードバンドということと新しいビジネスチャンスということのブロードバンドという両面を考えてブロードバンド対応を研究していかなければならないと思っている。
 景気のことばかり言っていると暗くなってくるので、少し考え方を転換して、今後印刷業界はどうしたら伸びるのか、その参考モデル事業はないかと思っていたところ一つだけ参考になるものがあった。それは東京ディズニーランドである。
 東京ディズニーランドは、今年で開園20周年を迎える。1年半程前から東京ディズニーシーも開園している。この2つを合わせた動員客数が延べ3億人を超えた。日本にディズニーランドを持ち込む時、果たして日本にこんなテーマパークが合うのだろうか、大失敗するのではという懸念もあった。それが大成功し一人勝ちである。今、テーマパークとしてあるのは大阪のユニバーサルスタジオジャパンと倒産したが長崎ハウステンボスくらいであるが、東京ディズニーランドの一人勝ちである。中身を見てみると我々印刷業と心理的に共通項がある。一人勝ちしている理由があり、これを見ると非常に参考になることが2〜3ある。
 1つは、東京ディズニーランドの一番大きいところは安全性を訴えているところである。いろいろなショーやイベントを行っているので危険度は高いが安全性を訴え、東京ディズニーランドは危ないところでないと意識させている。
その次はエンターティメント性を訴えている。これは娯楽性である。夢と魔法の国をキャッチフレーズにして娯楽性をしっかり訴えている。ここに来ると夢の世界、面白く楽しい別世界へ皆さんを誘致する。そして来られた方全員をVIP扱いにする。お客さんはゲストであり、自分達はキャストである。自分達は皆、俳優になろうとしていることである。ここが面白いところである。掃除をする人は掃除をするという舞台で役者を演じている。キップを売る人はキップを売るという役柄を演じてキップを売っている。食堂や案内等いろいろな係の人がいるが、皆ここではキャストで俳優である。決してシステムのマニュアルで動かされているわけではない。経営者から指示されているのではなく、自らが楽しく演じているというのが東京ディズニーランドの大きな特徴である。エンターティメントショー、エンターティナーということで皆さんを心底楽しませて行こうということである。
 これに対してホスピタリティーを徹底して行こうということである。一度来たお客さんはもう一度来たいというように、ここまでVIP扱いしてくれるのかという居心地の良いホスピタリティーを徹底していることである。これは何を意味するかと言うと顧客満足度である。我々が良くCIで出すところの顧客満足度である。これを徹底しているのが東京ディズニーランドである。
 安全性という顧客満足度を徹底している。これを印刷業界に置き換えるとこの満足度をしっかり出して行かなければならない。安心と満足を印刷業界のビジネスとして行くならお客さんは増えるし、決して離れない。安全ということを印刷業界に置き換えたら何かというとQCDである。早く、安く、良くという基本的ニーズである。これをしっかり実行するとお客さんに安心感を与える。あそこに頼めば間違いない。納期をきちんと間に合わせてくれる。価格もリーズナブルに提供してくれるという安心感を基本的なシーズとしてしっかり構築することである。
 もう一つの満足はそれを超えたものである。これは造注営業という提案営業である。ソリューションビジネスと言われるお客さんの問題を解決して行くことが満足度である。これをしっかり行うとお客さんから良くここまでやってくれたと感謝される。そういう安心感と満足をお客さんに与える以上お客さん離れないしお客さんは増えていくと思う。これを如実に実行し一人勝ちしているのが東京ディズニーランドである。大阪のユニバーサルスタジオジャパンはいろいろな危険度が発見されお客さんが激減した。長崎のハウステンボスは倒産した。
 もう一つ共通項があるのがリピートである。東京ディズニ−ランドが一番大事にしているのはリピーターである。一度来たお客さんは絶対に二度来らせる。毎年来ている人もおり、リピート率は90%である。リピートを取ることが3億人の顧客を動員したということに繋がって行く。昨年だけを見てみ2,500万人の人が1年間に来ている。
 我々印刷業でも、同じ頼むのならあの企業に頼むというリピートを出してくれる。これがリピートを取るということである。リピートをしっかり果たしていくということになると印刷業の非常に良い点である。同じ受注業でも建設業は大型注文をいただくが、1回限りである。一つビルを建てるとそこには何十年も受注がこない。ところが印刷業は一人のお客さんの金額が小さくても何度もリピートがある。そのリピートが続くか、途絶えるかが大きな信用度であり、安心と満足を与えているかということに繋がって行くと思う。こういうことを東京ディズニーランド、東京ディズニーシーで感じ、その戦略が一番話題になっていることである。
 また、2005計画もいよいよ4年目に入ってきた。これから新しい展開を合わせて行きつつあるが、この4年目に2005計画を完結させ、成功例を集めて皆さんに公表したいと思っている。5年目になるとポスト2005計画とのオーバーラップが始まる。今年からポスト2005計画作りに入っている。4年目の2005計画を中心とした全印工連の事業運営は非常に大事な年であるのでご支援をお願いしたい。

全印工連2005計画について

全日本印刷工業組合連合会  
常務理事 浅 野   健 氏

浅野常務理事

 私は、東京地区印刷協議会の会長も務めさせてもらっている。全国では東京地区協と北海道地区協が全く同じパターンである。東京は東京工組のみ、北海道は北海道工組のみで地区協を運営している。東京と北海道の違いはいろいろあるが、先ず面積が違う。私は今日、羽田から1時間20分飛んで札幌に来たが、皆さんの中には私以上に時間がかかって来られた人がいると思う。東京では一番遠い所で八王子あたりなのでせいぜい1時間30分もあれば来られる。また、いつも理事会や支部長会で顔を会わせているメンバーだから地区協そのものに緊張感がない。ここが東京の一番弱いところである。
 この中でも東京に出稼ぎに来ている人がいると思う。地元では仕事がないからとか、仕事の発注が東京に集中しているとかで来ているようだが、その仕事だけで帰れば良いが、ついでにあちらこちら美味しそうに見えるものがあるわけだから、北海道の方が人件費が安いとか何とか言って仕事を持って行かれる。しかし、紙は高い。近いところでたくさん紙を作っているのにこれはおかしい。青森でも三菱製紙の八戸工場で作っているものは安いかといったら高い。これは日本の流通がおかしいと思う。
 2005計画と聞いただけで虫唾が走るという人がよくいる。決して少人数ではない。考えてみたら、あれだけのものを最初から最後まで読んでくれる人がいるわけはないと思うが、虫唾を走らせずに聞いてほしい。
 先ほど、中村会長の話の中にも厳しい時代がまだ続くとういうことがあった。我々は顔を会わせると聞きたくない「バブル崩壊後」と「厳しい」ということが直ぐに出てくる。厳しいという大変抽象的な言葉のままにしておくと対応策は何もない。何時どういう時に比べて、今、何がどのように変化したから厳しいということを客観的に分析していかなければ対応策は出て来ない。もう一つは自社のピーク時と現在とを比較して今は厳しいと言う人がいるが、貴方の会社のピーク時に本当に自社の努力をしたのかと聞いてみたい。殆どはお客さんの業績が良かっただけである。その時はお客さんの業績が良かったからあの時は良かっただけである。今はお客さんの業績が悪いから会社が厳しいわけである。自社の努力は何もない。
 こういうことでは今後の変化を乗り切れないのではということが2005計画の骨子である。大きな環境変化を分析から予測をして、その環境変化が自社のトップ3くらいのお客さんの売上げにどういう影響を与えるのか。それは皆さんに考えてもらうより方法がない。そして、それを前提にして今は5年というと長すぎるので3年くらいの中期経営計画を作ってみませんか。中期経営計画と聞いただけでまた虫唾が走る人がいるがそんなに難しく考えることはない。経営者ならいつも考えていることである。それを絵にしてみませんか、グラフにしてみませんか、イラストにしてみませんかということである。何故なら経営計画というものは会社の人達と共有して初めて計画を作る意味がある。社長さんの頭にだけ入れておいたら共有は進まない。共有が進まないということは対策が実行されないということであるので意味がない。したがって、それをちょっとした文章や絵にすることが経営計画だと私は認識している。経営計画を作っていくと、これからは自社の経営資源だけではこれからの環境変化に対処出来ないと多分多くの人が気付くと思う。これからの環境変化に自社の経営資源だけで十分に対応できるという人は、今日のこの時間はもったいないので早く帰って仕事をした方が良いと思う。多くの人は自社の経営資源だけでは環境変化への対応が難しい。そこで生まれて来たのが「共創ネットワーク」である。中村会長語録ではコラボレーションである。コラボレーションというものは自分の足りないものを誰かに補完してもらうというコラボレーションもあるだろうし、あるいは自社の強いところをもっと強くするために強い者同志が情報開示をしてより強くしていくというコラボレーションもあると思う。コラボレーションの相手は印刷業だけではない。異業種もあると思う。経営資源をより広範囲に厚くしてこれからの大きな環境変化に対応していこうということが2005計画の骨子である。
 どうしてこういう考えが出て来たかというと国が変わったからである。国の中小企業に対する施策が変わった。中小企業近代化促進法という法律で通産省が業界ぐるみで中小企業の近代化をバックアップしてきた時代が大変長くあった。その法律はもうない。今あるのはやる気のある人は手を挙げてレポートを書いて、そのレポートの内容、結果によってはバックアップしようというのが通産省ではなく経産省の政策になった。
 それからもう一つは、印刷産業に対する国の期待が変わった。通産省の時は現課行政といい印刷産業をウォッチしている課が製紙メーカーと同じ紙業印刷業課であった。今は映像産業と同じで、長いのでメディアコンテンツ課と呼んでいるが文化情報関連産業課である。映像をビデオ化している業界と同じ課になった。国はもはや印刷業を製造業として見てはいないのではないかと思う。それに対して我々自身は変わったのだろうか。そういう目で見てみると我々自身の変わり方が遅いように思う。これでは折角、長年かけて成熟した我々が担当している印刷というメディアが古いものになってしまう。私は成熟したメディアがイコール古いものだとは思わない。しかし、これから成熟したメディアである紙媒体を古いものにするかどうかは我々の努力次第だと思う。ここら辺が変化への対応だろうと思っている。
 そこで、今年度2005計画特別委員会では、いろいろなことを皆さんに提供していく。「日本の印刷」を読んでいるでしょうか。私もこういう立場になる前は表紙しか見たことがなかった。字が小さい、誌面がいつも同じで意欲がない。この辺も環境変化に対応していないところで、足元から考えていかなければならないと思っている。ただ、今回だけは中国の話が載っているので見てほしい。2005計画特別委員会から無料で東京工組に発注し、中国の上海を中心とした沿海部の中国の印刷業の実態を調査してもらった。なんと驚くことなかれオフ輪の印刷料金は日本より高いとか、印刷料金そのものが高いとか幾つかの事例が載っている。3回に分けて掲載をする予定である。中国恐れるに足らずと簡単にいうつもりはないが、冷静に相手を知ることによってその対応は可能だと思っている。ただムード、イメージだけが先行してしまうと何か間違ってしまうので、注目してほしい。
 また、凄いことが始まりそうである。自治体の印刷物の発注が電子化される電子発注の時代を迎えるようである。北海道は随分進んでいるようであるが東京は遅れている。そんな話聞いたことがないとか、耳にしたことはあるが何時から実行するのか決めていないという答えが自治体から返ってきた。電子発注にも幾つかの問題がある。電子発注だから当然仕様書が出てくる。先ほど岸理事長の話にもあったが、見積りの積算の仕方もあやしいところがあるし、統一のフォーマットもまだ出来ていない。まだ出来ていないということがそもそもおかしい。我々がいつも受身だという証拠である。我々の仕事なのだから、このようにしてくださいと誰が言うべきですか。我々自身ではないでしょうか。相変わらずお上意識が強く何とかしてくれると思っていたら大間違いである。なぜ大間違いかというと日本で一番企業数の多い産業というのは建築・土建・土木である。これと同じ仕様書になったらどうします。どうにもならない。だから我々が、国、自治体に電子発注をするならそれはそれでいいが、こういう仕様書にしてください、あるいはこういう見積ソフトを使ってくださいということを我々が能動的に言う必要があると考えている。
 そこで、現在2005計画特別委員会で統一フォーマットを作成している。これを9月の東京での全国大会で全国の皆さんのお持ち帰りいただき、全国一斉に各自治体に電子発注をするならこの仕様書を使ってください。これは私が言っているのではなく、日本の印刷業界全体が言っているという運動をして行きたいと考えている。
 2005計画特別委員会の今年の目玉の第一弾は今年リニュアルしたセミナーや新しく策定したセミナーである。第二弾は中国情勢、第三弾は統一した電子フォーマット、第四段が2005計画は虫唾が走るという人が結構いるが、そうでもなく黙ってちゃっかり内容を良くみて実行している人もかなりいる。昨年の調査で3割くらいのアンケート回収率なので実態を掴むのは中々難しいが、アンケートどおりで行くと6割の人が経営計画に着手されているということである。全国で幾つものコラボレーションの事例がり、「日本の印刷」にも幾つかの成功例は発表しているが、改めて2005計画というアドバルーンのもとで全国でこんなことが始まったという成功事例を皆さんにお届けしたいと思っている。全国のニュースをお届けするのも全印工連の役目の一つである。今年はそのようなことを提供しようと考えているが、そうこうしている間にも環境変化はますます進化をしているし、スピードを上げている。その事例は随分ある。
 先ず、e‐japanという電子政府構想は、民間は景気が悪いから予算を使えないが、税金を使える国、自治体は着々とそのペースを守っている。したがってe‐japan構想はかなり具現化してきた。これが一つである。その関連で電子市役所が出来ている。横須賀市とか札幌市も非常に進んでいる。そういところから電子発注という考えになる。電子発注になると全てオープン化される。どういう会社が、どういう物件に対して、いくらで入札し、どこの会社がいくらで落札したということが全部ホームページで公開される時代になる。
 2005計画は、2000年に策定されているがその時からみると、印刷物の内製化がかなり本格化している。5年位前の内製化は、名刺・葉書・会議の資料くらいであったが、今は自治体が印刷機を買う時代になってきた。これも我々にとって環境の変化になる。
 日本で使われる印刷物を発注先がダイレクトに海外に発注するケースがある。至近な例では製品と一緒に海外で調達することが多くなってきた。マニュアル、パッケージはそうである。月刊誌の別冊のように少し時間のあるものは中国のシンセンで印刷するとか、最近耳にしたことではスーパーのチラシも海外で印刷する実証実験を始めた大手スーパーもあるようである。海外で日本で使う印刷物を作り始めたということは正に大きな変化の一つである。
 先ほども話をしたが、発注が東京に集約化している。東京にいる我々はそれによって大変潤っていない。本来なら潤っている筈だが、日頃恵まれているからそういう実態さえ東京にいると分からない。恵まれていない皆さんが東京に来て、恵まれているマーケットから仕事をどんどん津軽海峡を越えて持っていくということになる。ですから東京もいずれ恵まれなくなる。これも大きな変化である。
 品質保証という点で、お客さんから求められる印刷物の品質の要求が高くなっていないか。例えば、金属、プラスチックの成形品と同じスペックで印刷物の品質保証が求められるまでレベルが上がってきた。
 環境対応という点では、今まで考えなくても良かったことも考えなければならなくなってきた。最近、聞いたことでは教科書アレルギーの人がいる。私は学生時代、教科書を見ると卒倒しそうになったが、今のアレルギーは違う。インキから出る有害物質等である。私はそんなことで学校に行けないというのは嘘八百だと思うが、実際そういうこともあるらしい。こういうことにも我々は対応して行かなければならない時代に少しづつなっている。今まで考えなくても良かったことが必要になってきた。今までの常識が常識ではなくなってきた。しかしながら新しい時代の常識はまだ確立されていない。これがあの有名は塚田さんがよく言うカオスということである。そのカオスから我々は脱出できているかというとまだまだである。しかし、一つだけ新しい時代の常識が生まれ定着化し始めていると思う。それは自分のことは自分でやるという当り前のことである。経営者が一番経営者としての努力・能力・才能を求められる時代である。嘆いてばかりいたのでは何も生まれてこない。具体的に我々の変化を分析し、具体的にどうアクションを起こすか。行動あるのみである。出来る人、出来ない人で結果が大いに変わってくる時代である。どのようにしたら良いかということのヒントを全印工連として役に立たなければならない。
 環境の変化とともに、ポスト2005の次に何があるかというと2006に決まっているが、毎年行うのであれば大変なので、特別委員会でのターゲットは2008年において、2008年の印刷産業のビジネスモデル、ビジョンはどうあるべきかを模索する。
 今年から特別委員会の議事録を各県工組理事長にプリントアウトしたものを送付するともに全印工連のホームページでもアップしている。個人攻撃をされるときついので誰の意見かは敢えて伏せているが議事録の開示をしているので注目してほしい。相当過激な議論を行っている。過激に議論をするのは過激な表現をしたり過激なレポートを書くことを目的しているのではなく、健全性と先見性を維持しながら、情報コミュニケーションをサポートしていく責任の重い産業をどうすれば次の世代へ渡して行けるのか。どうすれば社会から必要とされて行けるのか。どうしたら社会の中で我々自身が責任をとれるのか。それを皆さん方一社一社で対応してもらう目的から、その手段として過激に議論を行った方が、今は注目してもらえると考えている。本当のところを言って過激にならざるを得ない。例えば自分は製造だけをやるから貴方の会社は営業だけをやってよというように製造と販売を分離させて行くとか、あるいは持ち株会社を作って一緒になるとかである。喫茶店を利用する人のニーズは今も昔も変わらないが、喫茶店のあり方は随分変わってきている。スターバックスとか新しい形態のものに変わり業態変化をしている。最近見た資料では、先ほど印刷業の不況業種の話があったが、印刷会社で利益を出しているところはなんと50%あるそうである。お寿司屋さんの業界は8割が赤字だそうである。しかし回転寿司はどうですか。最初はあんなもの寿司ではないと言っていた人でも今では利用する。最近では回転寿司の高級化もあるようだ。これも業態変化である。我々も業態変化をすべきである。なぜなら環境が変化しているからである。世の中の中心に我々がいるのであれば世の中を変えればよいがそうではない。世の中の中心にいるのはコンシュマーである。そのコンシュマーの価値観が変わったり、コンシュマーに対するサービス、製品が変わって行く以上、私達のお客さんとコンシュマーの間のコミュニケーションのサポートのあり方も変わる筈である。指示どおり物を作り、指示どおり物を納めることによって信頼を増やし、売上げを上げ、利益を上げてきた時代はもう終わりを告げていると思う。
 今日の資料の中に、福島県工組がリサーチしたクライアントから見た印刷会社のイメージの資料が入っているが、大変ありがたいイメージをお客さんに持ってもらっている。印刷会社が一番誇れるものは東京ディズニーランドと一緒で信頼である。印刷会社は嘘をつない。そこを私たちは維持し、どのような業態変化をしていくかである。
 2005計画の中でいろいろな意見をもらうが、よくあるのは小規模ではこのような対応が出来ないということである。これはまだ私見であるが、2008年をターゲットにしたポスト2005計画のビジョンでは規模の問題というトラウマから脱却したいと思っている。規模の問題をいくら話しても解決策はない。小規模の会社に共通している問題があるのであれば教えてほしい。大も中も一緒である。今、中小印刷業の大クラスだけが利益を出しているわけではない。利益を出しているところ出していないところは規模には関係がない。ただ、現実の悩ましさを何か一つ共通点を見つけ出し、それに対する対応策を何か考えるべきである。例えば後継者問題は共通点になるかもしれない。全国に多くの商店街があるが、何処の商店街に行っても元気がないが、商店街をマーケットにしている印刷会社もたくさんあると思う。我々はどうすればよいかというと、商店街を元気づければ良い。その方策を考える。そんなこともあってもよいのではないか。
 愛知県にメディアフロンティアというグループがあり、共創ネットワークを前提として得意技を持っていない人には声を掛けないということであるが、そうは言っても得意技が無いという人がいる。私は、得意技が無くて今日まで経営が維持出来るかというと出来ないと思うので、貴方が気付いていないだけで絶対あるから何か見つけてよと言っている。そうしたら愛知県ではもっとドラスチックに得意技の無い人おいでと言っている。どうしたら得意技を見つけ出し作れるかをグループで研究を始めている。
 辛い、厳しいと嘆いていることからは何も生まれない。少しエネルギーが掛かるが、そのエネルギーを掛ける勇気がある人にしかこれからはリターンがない。そういう誠に当り前の時代に我々が直面しているということである。
 したがって、ポスト2005計画は基本的に変化大歓迎のスタンスで行きたい。若干の負け惜しみもあるが、変化があることを嘆いていてもそこからは何も生まれないのだから、大きな波が来たらその波にどうやって上手く乗るのかを考える。2005計画よりは少し過激な表現を使わさせてもらわなければ皆さんのお役に立てないのではと考えている。
 多くの情報を皆さんに提供しているが、多くの人がその情報に一瞥もくれないことも事実である。私もその一人であったが、こういう立場になって始めて分かった。どうい情報の提供の仕方であれば皆さんに見ていただけるのか、関心を持っていただけるのかが重要なことであると考えている。
 繰り返しになるが、2005計画特別委員会の議事録を全印工連のホームページに掲載している。議論を始めたばかりであるので、今のところ全く反応がないが、お前ら何を考えているのか、もっと現実を見ろとか、そんな綺麗事ばかり言っていていいのかなど様々の意見をいただきたい。そして全印工連全員で我々の生き方であるポスト2005計画を作って行きたいと考えている。勿論、全ての皆さんの意見、主張のようになるということではないが、多くの方々の現状、悩みを少なくても認知した上で、中小印刷産業のあり方を提言させていただきたいと考えている。
 大きな環境の変化を今までの変化の分析と同時に予測をして行く。このことは特別委員会でいろいろな外部機関を使いながら変化予測を行っていく。ただここから先は皆さんの仕事である。この変化から皆さんのお客さんがどのような影響を受けるのか。これに対して自社の経営資源でどう対応できるのか。できなかったらどうするか。どうするかはワンパターンではない。いろいろな方法がある。事業を止めるのも一つの選択肢かもしれない。過激な表現というのは、こういうことも表現の中に入れさせていただくということである。私は事業を精算する人の人格を否定する何者でもない。大変勇気ある選択をされたと敬意を払うそういうことだと思う。そのような表現を使わさせていただく時期ではないのか。しかし、まだ結論は出していない。皆さんの絶大なるご意見をお待ちしております。

〔委員会〕
 組織・情報、マーケティング、経営革新、教育・技術、労務・環境、共済事業、青年部の7つの委員会に分かれ、(1)平成15年度事業推進について、(2)意見交換、(3)委員会意見某約、(4)全印工連要望事項集約について1時間20分にわたって討議が行われた。

※総括会議の内容は次号に掲載します。