日 印 産 連
オフセット印刷にグリーン基準を制定
  日印産連環境委員会・グリーン購入検討会は、環境問題に対する社会的認識の高まりを受けて、印刷産業界に対しても環境に配慮した製品作りが求められることに対応して、印刷産業の自主基準としての「オフセット印刷サービス」のグリーン基準を制定した。
 グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)は、国会、省庁、裁判所、独立行政法人など国の機関に環境配慮型の商品を優先的に購入することを義務づける法律で、2000年5月の通常国会で循環型社会形成推進基本法のひとつとして成立し、今年4月に施行された。
 同法は、国が率先して、環境負荷の少ない原材料・部品を利用した環境配慮型製品を購入することにより、再利用(リユース:Reuse)、再利用(リサイクル:Recycle)がしやすく、ゴミの発生抑制(リデュース:Reduce)になるものの購入を促進する「3R」の拡大を図ることを目的とし、環境配慮型製品の市場の育成も狙いとしている。
 今年2月に政府がまとめた環境配慮型の商品には、国等が重点的に達成すべき特定調達品目として、紙、文具、機器、自動車、家電製品など14分野101品目が挙げられ、それぞれにグリーン購入判断基準が示された。今後、国は毎年、調達する物品に関する基本方針をまとめる。
 今年4月のグリーン購入法施行を受け、5月には衆・参両院、中央省庁の2001年度の調達方針として、国の基本方針で定めた14分野101品目について環境配慮型の調達品目を示しただけでなく、企業に対する調達方針に準じたグリーン購入の実施や低公害車利用の働きかけ、業者選定の際にISO導入企業を優先して考慮することなどが明らかにされた。
 一方、エコマークの認定機関、(財)日本環境協会は、「印刷用紙」「情報用紙」に関するエコマーク認定基準を、グリーン購入の判断基準に合わせて改定した。
 また、グリーン購入の普及啓発、購入ガイドラインの策定、環境に配慮した商品情報データベースの構築などに取り組んでいる行政・企業・消費者の任意団体、グリーン購入ネットワークは、2月から「印刷サービスガイドライン(オフセット印刷)」の策定に着手している。
 こうした動きに対し、日印産連は、印刷業界の自主基準として「オフセット印刷サービス」のグリーン基準を先行して制定した。
 グリーン基準を制定した背景には、環境問題に対する社会的認識の高まりとともに印刷産業界を取り巻く社会環境が大きく変化し、印刷産業界に対しても環境に配慮した製品作りが求められていることがある。
 日印産連が制定したグリーン基準は、オフセット印刷サービスを行うための「購入資材」「工程」「印刷および印刷関連事業者の取り組み」に関するグリーン原則と、グリーン原則の具体的基準としてのグリーン基準で構成される。グリーン基準は、業界が広く目指すべき方向として「水準−2」と、さらに、より高度な基準である「水準−1」で構成される。

日印産連「オフセット印刷サービス」グリーン基準
平成13年8月8日制定 社団法人日本印刷産業連合会
項  目
グリーン原則
グリーン基準
備  考
水準−1
水準−2
購   入   資   材


用 紙 1再生紙を使用している ・古紙配合率100% ・古紙配合率70%以上 古紙配合率には非木材紙も含む
2白色度を考慮している ・白色度70%(±4%) ・白色度80%程度(±4%)
3塗工量を考慮している ・塗工量12g/平方メートル以下
(片面では最大8g以下)
・塗工量30g/平方メートル以下
(片面では最大17g/平方メートル以下)
4長期使用及び保存を目的とする製品(3年以上)は中性紙の使用を考慮する。 ・中性紙の使用率100% 該当する製品には書籍、辞書などが考えられる
5再生紙の製造に積極的に取組んでいる企業から調達する ・油性・UVインキ、HM、PP貼り、針金等を効率的に排除できるシステムを有し、再生紙原料として受け入れる企業から調達すること
インキ 1人体に危害を及ぼす物質を使用していない ・印刷インキ工業連合会のNL規制に適合すること
2塩素系樹脂を使用していない ・塩素系樹脂を使用していないこと
3PRTR指定化学物質を考慮している ・PRTP指定物質を使用していないこと ・PRTR指定物質を特定していること(MSDSを備えている)
4VOC発生を抑制している ・石油系溶剤の比率が15%以下。但し輪転インキは除く ・アロマフリーインキ、大豆油インキを使用していること
5古紙再生阻害要因の改善に配慮している ・金、銀、パールインキ等を使用しないこと
表面加工材料 1有害物質発生の原因となる物質を使用していない ・ポリ塩化ビニール樹脂を使用していないこと
2VOCの発生を抑制している ・エマルジョンタイプ、無溶剤タイプの塗料を使用していること
製本のり 1古紙再生阻害要因の改善に配慮している ・難細裂化HM(EVA)、ポリウレタンHM(PU)を使用していること
その他資材 1VOC発生を抑制している ・IPAの含有率が5%以下
2有害物質発生の原因となる物質を使用していない ・オゾン層破壊物質やポリ塩化ビニール樹脂を使用していないこと ポリオレフィン等協議会の自主基準による
資材メーカー の取組み 1環境ラベルの認定に取組んでいる ・エコマーク等環境ラベルの認定/表記製品を有していること
2環境保全の仕組みを有し環境法規制を遵守している ・環境マネジメントシステム(ISO14001等)を有してること ・環境法規制に違反していないこと
工       程


製 版 原 版 1デジタル原稿の入稿を推奨している ・入稿原稿のデジタル化率100% ・入稿原稿のデジタル化率50%以上
2工程のデジタル化を推進している ・デジタル化率80%以上 ・デジタル化率30%以上 デジタル化にはDTP等がある
3省エネ・省資源に取組んでいる ・節水型フイルム現像機を100%使用していること
・銀の回収を100%行っていること
・フイルムのマテリアルサイクルまたはサーマルリサイクルを100%行っていること
刷 版 1工程のデジタル化を推進している ・デジタル化を推進していること(CTP等)
2省エネ・省資源に取組んでいる ・節水型現像機を100%使用していること
・PS版のリサイクルを100%行っていること
印 刷 枚葉印刷 1VOC発生を抑制している ・湿し水のIPAを5%以下に削減
2省エネに取組んでいる ・省エネ型機械・器具を導入していること
3リサイクルを推進している ・損紙等の古紙へのリサイクル率が80%以上
・インキ容器、ウエスのリサイクル率が80%程度
4省力化及び検査の自動化に取組んでいる ・省力設備や自動検査装置を導入していること
輪転印刷 1VOC発生を抑制している ・ドライヤー脱臭処理装置を設置していること
・湿し水のIPAを5%以下に削減
2省エネに取組んでいる ・省エネ型機械・器具を導入していること
3リサイクルを推進している ・損紙等の古紙へのリサイクル率が80%以上
・インキ容器、ウエスのリサイクル率が80%程度
4騒音・振動などの抑制に取組んでいる ・防音躯対などの騒音抑制に取組んでいること
5省力化及び検査の自動化に取組んでいる ・省力設備や自動検査装置を導入していること
加 工 表面加工 1ダイオキシンなどの有害物質の発生要因となる物質の使用を抑制している ・ポリ塩化ビニール樹脂を使用しないこと
2VOC発生を抑制している ・溶剤のエマルジョン化、無溶剤化及びIPAを5%以下で使用していること
3省エネに取り組んでいる ・省エネ型機械・器具を導入していること
製本加工 1リサイクルを推進している

・損紙等の古紙へのリサイクル率が90%以上

2省エネに取組んでいる ・省エネ型機械・器具を導入していること
デリバリ 1運搬車両の環境負荷低減に配慮している ・アイドリングストップを実施していること
・低公害車の導入に取組んでいること
・最大積載量に見合った輸送単位の設定を行っていること
2包装・梱包材の削減・再利用に取組んでいる ・通り箱、製本組合共通パレット等の利用を促進していること
・PRバンド等の包装資材のリサイクルに取り組んでいること
印刷及び印刷関連事業者の取組み 環境関連法規の遵守 1公害防止、省エネ・省資源、化学物質の管理・削減、廃棄物の発生抑制・削減、グリーン購入などの環境法規制を遵守している ・環境関連の自主基準を設け維持していること ・環境法規制に違反していないこと
環境負荷低減の取組み 1環境負荷低減のための目標をもち、改善活動を維持している ・エネルギーを管理し、削減する目標を設定していること ・廃棄物の分別を徹底し再資源化に取組んでいること
・空調機の温度管理や区域、時間管理などを実施していること
環境マネジメントシステムの構築 1環境保全の改善に取組む仕組みを有している ・環境マネジメントシステム(ISO14001等)を有していること ・会社として環境方針や組織を設け、緩急保全活動を維持していること
グリーン製品の提供 1グリーン製品の開発、製造やサービスに取組んでいる ・グリーン製品の評価基準を有していること 評価基準として本グリーン基準がある
環境情報の公開 1環境に関わる情報を公開している ・環境方針、環境報告書、インターネット、カタログや会社案内等で環境理念や環境情報を外部利害関係者に公開していること

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