印刷燦燦
ファインダーから
常任理事・苫小牧支部長 青木  毅(清文堂印刷株式会社代表取締役社長)

 私の住まいは胆振の東の外れ鵡川という町。郵便番号がなかったその頃は武鳥川町と誤記されていても無事に郵便物が配達された不思議な所。
 だが晩秋の風物詩シシャモの町としてマスメデアで報道されるせいか、次第に知名度が高くなり最近ではあまり間違われる事もなく、漁獲量 では釧路に及ぶべくもないがシシャモの遡上する所と結構ご存知の方もいる昨今である。
 10月末遡上するシシャモを追いカモメの群れが河原を覆う。このカモメが獲物をダイビングキャッチする瞬間を撮影しようと出掛けたのだが、河原に近づくだけで群れは遥か彼方へ飛び去り人気のない遠くでダイビングを始め、望遠レンズも届かぬ 有様で、遠くの群れの狩の情景を小さく捉えた程度。望遠付のカメラを銃と勘違いしたのか随分と人間に慣れている筈のカモメなのに、これでは隠れ小屋でも建てなければと考えている内に天候に恵まれずその年は終わってしまった。
 翌年はカメラはいきなり構えず、岸辺のテトラーブロックに腰をおろし先ず煙草を一服。やはり昨年と同じく群れは遠くへ、だがじっと数時間眺めていると次第に彼らも気を許したのか、或いは去年の顔見知りの鳥も居たのか、シシャモを追うのに次第に夢中になり間近で捕獲のダイビングをし始めるではないか。
 更によく観察すると、その群れの中で役割分担がそれぞれ決まっているらしく、群れの全員が何時も川面 を睨み飛んでいる訳ではなく、群れの中の若者とおぼしき数羽が飛び回り川面を監視、長老(?)らしきボスカモメ数羽が群れを従え悠然と中州で待機、監視の若者のシシャモ発見の知らせで一斉に乱舞、狩りが始まる。
 ここでカモメは偉いと誉めるつもりもないが、これまで漁船の魚を横取りするだけのイメージより持っていなかったが、どこでそんな事を学習し、どんな方法で役を割り振っているのかと驚嘆させられた。そして今度はシャッターチャンスにも充分恵まれた。だが開発による環境の変化や地球温暖化の影響か、シシャモの遡上も次第に減り、昨秋はついにカモメの群れを河原で見かける事ができず、淋しいファインダー風景であった。